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第四章
255話 決別
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「全ての弾薬、爆薬を艦首に集めろ。甲板の消火活動は中止。総員退艦せよ」
「レオ!」
「エル、お前も降りるんだ」
「嫌よそんなのッ!」
エルシャは私の腰に抱きつき、決して離れようとしなかった。
「サツキ」
「はいでござる」
「ちょっと! 離しなさ……」
サツキは催眠魔法と思わしき術を使いエルシャを眠らせて抱き抱えた。
「今までありがとう。君がいたから、私はここまで強くなれた」
私は涙を流しながら眠るエルシャの額に、そっと口付けを残した。
「さあ、早く逃げろ!」
「サツキはレオ様に死なないで欲しいでござるよ。じゃないとエルシャ様は──」
私は左手でサツキの口を塞いだ。
「それ以上喋るな。どうか私の決意が揺らがぬうちに、エルシャを連れて脱出してくれ。……ハオラン!」
『既に竜人部隊が艦後部に着艦し救出作業を行っている。……お前も逃げるなら今のうちだぞ、我が盟友よ』
「……ハオラン。『暴食龍の邪眼』は私が責任をもってこの世から消し去る。それでいいな」
『……構わない。お前は鋼鉄の龍を駆り、人類を救った英雄だと我ら竜人が語り継ごう』
「はは! 艦首には帝国の紋章を刻んだが、龍にした方が良かったな! ……私が築いた平和を、どうか見届けてくれ」
私は艦のスロットルに手をかける。
「さあ! 早く行け!」
「レオ様! 私たちも残ります!」
「は? 何を言っているんだ!」
「おひとりでは艦を動かせませんよ!」
『そうだぜレオ様!』
『俺たちが最後まで艦を届けます!』
「レオ様と、この艦と共に!」
艦橋や艦内通信中からそのような声が届いた。
「──レオ様! 魔王が次の攻撃を準備しています!」
「魔力が集まったか……。ハオラン! もう退艦する人間は運び終えたな!?」
『ああ!』
「よろしい! ……諸君! 私と運命を共にすることを選んでくれたこと、感謝する! 行くぞ魔王! 人類の希望と叡智を乗せたこの船が、その身をもって平和への礎とする!」
「「「おう!」」」
私はスロットルを最大に、そして最大を超えた緊急出力まで引き絞った。
「行けェェェェェェェェ!!!」
「来い! 人間の王、レオ!!!」
メインエンジンと予備の補助動力エンジンがグゴゴゴゴと低い唸り声をあげながら艦を魔王の元へ一直線に導いた。
「おらァァァ!!!」
「フンッッッ!!!」
魔王は余程の自信があったのか艦を避けることなく、新たに捻り出した刀で艦のラムアタックを正面から受け止めた。
ガギャンッ! という音と共に刀と艦がぶつかり、激しい火花と衝撃が私たちを襲った。
「押し込めェェェェェェ!!!」
「クハハハハハハ! 良いぞッ! これが人間の力か!」
戦艦は徐々に魔王を魔王城の方まで押し込んでいく。
「レオ様! エンジンが限界です! このままでは──!」
「今だ! 主砲、撃てェェェェ」
前方の主砲塔は全て破壊されている。唯一生き残っているのはそう、後部砲塔である。
私の命令と共に後部の主砲が一斉射撃を行い、その反動で艦はまた一気に前進し始めた。
私が最後にレオナルドに頼んだもの、それは射撃の反動だけを得られる空砲であった。後ろに実弾を撃てば味方が巻き込まれてしまう。
私は最後まで、人類を救う選択をしなければならないのだ。例えこの命に替えたとしても。
「ウォォォォォォ!!!」
「魔王城に衝突します!」
「今だ! 爆破しろ!」
「フッ! 見事だ──」
織田信長を挟んで艦と魔王城がぶつかるその瞬間、艦首に満載された弾薬、爆薬、残った燃料となる高純度の魔石が大爆発を起こし、全てを消し飛ばす。
まるで『英雄召喚』を使った時のような眩い真っ白い光の中、私はゆっくりと瞼を降ろした。
「レオ!」
「エル、お前も降りるんだ」
「嫌よそんなのッ!」
エルシャは私の腰に抱きつき、決して離れようとしなかった。
「サツキ」
「はいでござる」
「ちょっと! 離しなさ……」
サツキは催眠魔法と思わしき術を使いエルシャを眠らせて抱き抱えた。
「今までありがとう。君がいたから、私はここまで強くなれた」
私は涙を流しながら眠るエルシャの額に、そっと口付けを残した。
「さあ、早く逃げろ!」
「サツキはレオ様に死なないで欲しいでござるよ。じゃないとエルシャ様は──」
私は左手でサツキの口を塞いだ。
「それ以上喋るな。どうか私の決意が揺らがぬうちに、エルシャを連れて脱出してくれ。……ハオラン!」
『既に竜人部隊が艦後部に着艦し救出作業を行っている。……お前も逃げるなら今のうちだぞ、我が盟友よ』
「……ハオラン。『暴食龍の邪眼』は私が責任をもってこの世から消し去る。それでいいな」
『……構わない。お前は鋼鉄の龍を駆り、人類を救った英雄だと我ら竜人が語り継ごう』
「はは! 艦首には帝国の紋章を刻んだが、龍にした方が良かったな! ……私が築いた平和を、どうか見届けてくれ」
私は艦のスロットルに手をかける。
「さあ! 早く行け!」
「レオ様! 私たちも残ります!」
「は? 何を言っているんだ!」
「おひとりでは艦を動かせませんよ!」
『そうだぜレオ様!』
『俺たちが最後まで艦を届けます!』
「レオ様と、この艦と共に!」
艦橋や艦内通信中からそのような声が届いた。
「──レオ様! 魔王が次の攻撃を準備しています!」
「魔力が集まったか……。ハオラン! もう退艦する人間は運び終えたな!?」
『ああ!』
「よろしい! ……諸君! 私と運命を共にすることを選んでくれたこと、感謝する! 行くぞ魔王! 人類の希望と叡智を乗せたこの船が、その身をもって平和への礎とする!」
「「「おう!」」」
私はスロットルを最大に、そして最大を超えた緊急出力まで引き絞った。
「行けェェェェェェェェ!!!」
「来い! 人間の王、レオ!!!」
メインエンジンと予備の補助動力エンジンがグゴゴゴゴと低い唸り声をあげながら艦を魔王の元へ一直線に導いた。
「おらァァァ!!!」
「フンッッッ!!!」
魔王は余程の自信があったのか艦を避けることなく、新たに捻り出した刀で艦のラムアタックを正面から受け止めた。
ガギャンッ! という音と共に刀と艦がぶつかり、激しい火花と衝撃が私たちを襲った。
「押し込めェェェェェェ!!!」
「クハハハハハハ! 良いぞッ! これが人間の力か!」
戦艦は徐々に魔王を魔王城の方まで押し込んでいく。
「レオ様! エンジンが限界です! このままでは──!」
「今だ! 主砲、撃てェェェェ」
前方の主砲塔は全て破壊されている。唯一生き残っているのはそう、後部砲塔である。
私の命令と共に後部の主砲が一斉射撃を行い、その反動で艦はまた一気に前進し始めた。
私が最後にレオナルドに頼んだもの、それは射撃の反動だけを得られる空砲であった。後ろに実弾を撃てば味方が巻き込まれてしまう。
私は最後まで、人類を救う選択をしなければならないのだ。例えこの命に替えたとしても。
「ウォォォォォォ!!!」
「魔王城に衝突します!」
「今だ! 爆破しろ!」
「フッ! 見事だ──」
織田信長を挟んで艦と魔王城がぶつかるその瞬間、艦首に満載された弾薬、爆薬、残った燃料となる高純度の魔石が大爆発を起こし、全てを消し飛ばす。
まるで『英雄召喚』を使った時のような眩い真っ白い光の中、私はゆっくりと瞼を降ろした。
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