251 / 262
第四章
249話 両雄並び立たず
しおりを挟む
「中戦車の攻撃で装甲化オークを撃破しました! 75mm砲は有効です!」
「トロールに比べればオークはそれほど強くない。せいぜい50mmがいいとこだ」
「しかし投石が直撃した軽戦車が複数撃破及び戦闘不能に追い込まれています」
「……鎧を着込んでもより強力な攻撃にはやられる。それは同じことだ」
敵が死に、味方も死ぬ。敵がモンスターだろうが、ひとつの命ということには変わりない。
『──レオ、こちらも準備完了しました。後の指揮は引き継ぎます』
「了解だ孔明。では予定通り私はこちらの指示のみ出す」
『はい。それでは……』
遅延や電波の関係上、ギリギリまで前線に近付いて司令所を設置することが望まれる。無線と合わせて有線の通信手段も確保済みではある。
「歩兵師団も展開し、安定した戦線の確保と中戦車部隊による敵陣深くへの攻撃が行われています」
「こちらは計画通り。……次はあちらのターンだ」
「──敵に航空戦力! 魔人率いるワイバーン部隊が出現しました!」
しばらく地上部隊の戦闘が拮抗していると、航空隊からの映像を見ると、暗い霧に混じって空を埋め尽くす黒い敵影が蠢いていた。
『上空で待機していた戦闘機隊は制空戦闘へ移行してください。地上特火大隊、対空部隊は地対空戦闘用意』
魔人に対して戦闘機がどれほど有効か分からない。だから少しでも戦いを優位に進めるため高度優位を先に稼いでおいたのだ。
『こちら第一航空戦隊了解。制空戦闘に入る』
『自走対空砲部隊前線に到着。攻撃を開始する』
「牽引式大口径対空砲は現在前進中」
リーダー機からの映像がモニターに映される。
ワイバーンが察知できない遥か上空から降り注ぐ戦闘機と弾丸の雨に、次々と空が晴れていく。地上からの対空砲火との挟み撃ちにワイバーンは為す術なく撃ち落とされていくのだった。
「うわっ……」
ワイバーンの死体が次々に降り注ぐ地上部隊の映像に切り替わる。
「気持ち悪いでござるな……」
「これでも砲弾よりはだいぶマシだ。死にはしないからな」
これでワイバーンから攻撃されることもない。強いとは言わないが対抗手段が少なく厄介な敵を排除できた意義は大きい。
『被撃破無し! 制空権確保しました』
『では対地攻撃に移行。攻撃機隊は近接航空支援を開始してください。後方で待機していた爆撃機隊は魔王領領空に侵入し爆撃を』
『こちら爆撃機隊了解。爆撃を行う』
『地上対空砲部隊も対地攻撃に切り替えます』
ここまで順調だと逆に心配になるほどの出来だった。大体事前のシュミレーション通り進行しており、全て先手で対処できている。
だがそう全てが上手くいくはずもなかった。
『──高度2000、方位30に敵影あり! 爆撃中止! 爆撃機が襲撃されています!』
『直掩戦闘機隊は爆撃機の防衛を!』
しかし孔明の指揮も虚しく巨大な爆撃機は火を噴きながら墜落していく。
『駄目だ! 防護機銃が当たらない!』
『戦闘機の機動力を上回っている! ワイバーンとは比べ物にならない! なんなんだあれは!』
「……魔人、か」
竜人も恐れる魔人の空中戦闘能力。前回の戦いでは確かめきれなかった部分で遂に敵が上回ってきた。
「地上にも魔人です! あれはマタサでしょうか……!」
「来たな、前田利家!」
マタサの槍の一突きで中戦車は次々に一撃爆散していく。戦車の装甲の最も薄い天板を、魔力の込めた槍でいとも容易く貫いているのだ。
「──! レオ様あれは!?」
「は……? あれは……龍か……?」
戦闘機隊からの映像には、淡緑色に輝く、信長の髑髏武者のように凝縮した魔力で型どっていると思われる龍の姿が映し出されていた。
龍は鈍重な爆撃機を呑み込み、赤子の手をひねるかのように爆撃機を叩き落していった。
「地上部隊からの映像にも新たな魔人です!」
「こっちは……虎か……?」
体高が五メートルはあるだろう真っ赤な虎は騎兵隊を薙ぎ払い、戦車隊を踏み潰していく。
「──! ……そうか、そういう事か織田信長!」
「何か分かったのですか!?」
「空にいるのは越後の龍、上杉謙信! 地上が甲斐の虎、武田信玄だ!」
「申し訳ございません! そのような名前の魔人らは存じ上げません!」
「ああ、知らないだろうさ……。私も知らなかった! 魔王が織田家臣団に限らず全ての武将を呼び出せるとはな!」
冷静に考えれば気付けたはずだ。私だって時代も国も違う英雄たちを召喚しているのだ。
織田信長にとってしてみれば、彼が思いつく強力な人物といえば群雄割拠の戦国時代を共に生き抜いた諸将である。
「任せたぞ! 歳三! ハオラン!」
『対魔人特殊作戦部隊を投入します! 速やかに脅威の排除を!』
『了解だぜ』
『了解』
特殊作戦部隊を刷新した対魔人特殊作戦部隊、通称対魔。
土方歳三を隊長に特殊作戦部隊をそのまま。そこに航空機の登場により立場を失った竜人たちを加えた魔人専門の特殊部隊である。
『行くぞお前ら! 戦闘開始だ!』
「トロールに比べればオークはそれほど強くない。せいぜい50mmがいいとこだ」
「しかし投石が直撃した軽戦車が複数撃破及び戦闘不能に追い込まれています」
「……鎧を着込んでもより強力な攻撃にはやられる。それは同じことだ」
敵が死に、味方も死ぬ。敵がモンスターだろうが、ひとつの命ということには変わりない。
『──レオ、こちらも準備完了しました。後の指揮は引き継ぎます』
「了解だ孔明。では予定通り私はこちらの指示のみ出す」
『はい。それでは……』
遅延や電波の関係上、ギリギリまで前線に近付いて司令所を設置することが望まれる。無線と合わせて有線の通信手段も確保済みではある。
「歩兵師団も展開し、安定した戦線の確保と中戦車部隊による敵陣深くへの攻撃が行われています」
「こちらは計画通り。……次はあちらのターンだ」
「──敵に航空戦力! 魔人率いるワイバーン部隊が出現しました!」
しばらく地上部隊の戦闘が拮抗していると、航空隊からの映像を見ると、暗い霧に混じって空を埋め尽くす黒い敵影が蠢いていた。
『上空で待機していた戦闘機隊は制空戦闘へ移行してください。地上特火大隊、対空部隊は地対空戦闘用意』
魔人に対して戦闘機がどれほど有効か分からない。だから少しでも戦いを優位に進めるため高度優位を先に稼いでおいたのだ。
『こちら第一航空戦隊了解。制空戦闘に入る』
『自走対空砲部隊前線に到着。攻撃を開始する』
「牽引式大口径対空砲は現在前進中」
リーダー機からの映像がモニターに映される。
ワイバーンが察知できない遥か上空から降り注ぐ戦闘機と弾丸の雨に、次々と空が晴れていく。地上からの対空砲火との挟み撃ちにワイバーンは為す術なく撃ち落とされていくのだった。
「うわっ……」
ワイバーンの死体が次々に降り注ぐ地上部隊の映像に切り替わる。
「気持ち悪いでござるな……」
「これでも砲弾よりはだいぶマシだ。死にはしないからな」
これでワイバーンから攻撃されることもない。強いとは言わないが対抗手段が少なく厄介な敵を排除できた意義は大きい。
『被撃破無し! 制空権確保しました』
『では対地攻撃に移行。攻撃機隊は近接航空支援を開始してください。後方で待機していた爆撃機隊は魔王領領空に侵入し爆撃を』
『こちら爆撃機隊了解。爆撃を行う』
『地上対空砲部隊も対地攻撃に切り替えます』
ここまで順調だと逆に心配になるほどの出来だった。大体事前のシュミレーション通り進行しており、全て先手で対処できている。
だがそう全てが上手くいくはずもなかった。
『──高度2000、方位30に敵影あり! 爆撃中止! 爆撃機が襲撃されています!』
『直掩戦闘機隊は爆撃機の防衛を!』
しかし孔明の指揮も虚しく巨大な爆撃機は火を噴きながら墜落していく。
『駄目だ! 防護機銃が当たらない!』
『戦闘機の機動力を上回っている! ワイバーンとは比べ物にならない! なんなんだあれは!』
「……魔人、か」
竜人も恐れる魔人の空中戦闘能力。前回の戦いでは確かめきれなかった部分で遂に敵が上回ってきた。
「地上にも魔人です! あれはマタサでしょうか……!」
「来たな、前田利家!」
マタサの槍の一突きで中戦車は次々に一撃爆散していく。戦車の装甲の最も薄い天板を、魔力の込めた槍でいとも容易く貫いているのだ。
「──! レオ様あれは!?」
「は……? あれは……龍か……?」
戦闘機隊からの映像には、淡緑色に輝く、信長の髑髏武者のように凝縮した魔力で型どっていると思われる龍の姿が映し出されていた。
龍は鈍重な爆撃機を呑み込み、赤子の手をひねるかのように爆撃機を叩き落していった。
「地上部隊からの映像にも新たな魔人です!」
「こっちは……虎か……?」
体高が五メートルはあるだろう真っ赤な虎は騎兵隊を薙ぎ払い、戦車隊を踏み潰していく。
「──! ……そうか、そういう事か織田信長!」
「何か分かったのですか!?」
「空にいるのは越後の龍、上杉謙信! 地上が甲斐の虎、武田信玄だ!」
「申し訳ございません! そのような名前の魔人らは存じ上げません!」
「ああ、知らないだろうさ……。私も知らなかった! 魔王が織田家臣団に限らず全ての武将を呼び出せるとはな!」
冷静に考えれば気付けたはずだ。私だって時代も国も違う英雄たちを召喚しているのだ。
織田信長にとってしてみれば、彼が思いつく強力な人物といえば群雄割拠の戦国時代を共に生き抜いた諸将である。
「任せたぞ! 歳三! ハオラン!」
『対魔人特殊作戦部隊を投入します! 速やかに脅威の排除を!』
『了解だぜ』
『了解』
特殊作戦部隊を刷新した対魔人特殊作戦部隊、通称対魔。
土方歳三を隊長に特殊作戦部隊をそのまま。そこに航空機の登場により立場を失った竜人たちを加えた魔人専門の特殊部隊である。
『行くぞお前ら! 戦闘開始だ!』
3
お気に入りに追加
100
あなたにおすすめの小説
悠久の機甲歩兵
竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。
※現在毎日更新中
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。
いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成!
この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。
戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。
これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。
彼の行く先は天国か?それとも...?
誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。
小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中!
現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。
【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
日本VS異世界国家! ー政府が、自衛隊が、奮闘する。
スライム小説家
SF
令和5年3月6日、日本国は唐突に異世界へ転移してしまった。
地球の常識がなにもかも通用しない魔法と戦争だらけの異世界で日本国は生き延びていけるのか!?
異世界国家サバイバル、ここに爆誕!
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
ハズレ職業のテイマーは【強奪】スキルで無双する〜最弱の職業とバカにされたテイマーは魔物のスキルを自分のものにできる最強の職業でした〜
平山和人
ファンタジー
Sランクパーティー【黄金の獅子王】に所属するテイマーのカイトは役立たずを理由にパーティーから追放される。
途方に暮れるカイトであったが、伝説の神獣であるフェンリルと遭遇したことで、テイムした魔物の能力を自分のものに出来る力に目覚める。
さらにカイトは100年に一度しか産まれないゴッドテイマーであることが判明し、フェンリルを始めとする神獣を従える存在となる。
魔物のスキルを吸収しまくってカイトはやがて最強のテイマーとして世界中に名を轟かせていくことになる。
一方、カイトを追放した【黄金の獅子王】はカイトを失ったことで没落の道を歩み、パーティーを解散することになった。
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる