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第四章
226話 世界政府
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「じ、人類共同……」
「世界政府……?」
「そうだ! 『人類共同世界政府』とは即ち、文字通り全ての人類が人種・宗教の垣根を越え、これから我々に襲いかかるであろう困難に対し共に立ち向かうための組織である!」
魔王や魔物、モンスターといった脅威のない元の世界ですら、世界規模の困難に度々直面していた。
残酷な世界では、もっと深刻な問題がいつか訪れるだろう。
「世界政府による統治は全ての者に幸福をもたらすと約束しよう! 法律制定、国防、経済、教育、公衆衛生、社会保障、環境保護、公共インフラ管理、その他。これら全て我々の手によって万全なものにすると保証する!」
これらは国家における政府の重要な役割である。
そして画一化された政治システムは中央集権化を協力に推し進めるだろう。それこそが私の狙いだ。
「帝国の優れた技術が大陸中の経済を変えるだろう! 資源の独占を阻止し、富の再分配を行う!」
豊富な資源を帝国の工業地帯に、資源の豊富な地域へ工業技術を提供すれば、更なる経済の発展と専門性の特化を目指せるだろう。
国や各貴族同士の経済的な潰し合いは経済成長を阻害する。
「そして諸侯はその血をもって理解しただろう! もはや各諸侯の持つ小規模な私兵では進化した戦争については来れない! よって、これより全ての軍隊は国有軍とする!」
各地域への保安局の武力派遣はこの布石であった。
また、今回の戦いまで貴族たちに近代兵器を渡さなかったのも、この戦いで流血を強いることにより身をもって兵器の役割と運用にあたる軍事組織の改革の必要性を理解させる為であった。
軍事技術の変化は貴族たちが自身の軍隊を手放す要因の一つとなる。
火器の導入や規模の拡大した軍隊が必要とされるようになり、個々の貴族がこれを独自に満たすことは困難である。
ウィルフリード軍ですら手こずる魔王領での戦いには、大規模で専門化された軍勢を組織する必要性がある。それに伴って貴族たちの軍事力の役割が相対的に低下したと言えよう。
加えて経済的な要因も影響している。
いつ終わるかも分からない魔王領調査で戦うためには膨大な費用がかかる。近代兵器の製造と配備にも同様に剣や弓矢とは比較にならない程のコストがかかるのだ。
個々の貴族がこれらを負担するのは難しく、国家が財政的な統制を行いながら、より効率的に戦力を編成する必要が生じたのである。
当然中央集権化を推し進め、軍備という特権を剥奪することは貴族たちの反発を招くだろう。
しかし上記のやむを得ない理由の数々や、なにより全ての国の統一を成し遂げた私に対し、異論を唱えることのできる者はこの世に存在しない。
「亜人・獣人・人間、貴族・平民問わず全員が私に協力して欲しい! 帝国、王国、協商連合という形はなくなるが、それは文化や伝統の否定ではない! ……宣言しよう! 未来は明るい! 諸君らの生活か劇的に変わることはないかもしれないが、必ず好転すると約束する!」
これが私の望んだ、頭の中に思い描いた泰平の世だ。
「私の考えに賛同できぬ者もいるだろう! しかし! 新時代の到来を恐れてはならない! 私と共に、新たなる未来を切り拓こうではないか!」
私は拳を振り上げ、そう叫んだ。
「──以上だ! 今後の詳細は新聞や張り紙などを注目してくれ! ……それでは諸君、また会おう!」
全てを言い終わると私は降壇する。教皇たちもそれを見て私に続いた。
「お疲れ様でしたレオ」
「ああ。お前も準備ありがとうな孔明」
舞台袖に英雄たちが集まる。
「それにしても、こんなに急いでやる必要あったのか? もっと周りをゆっくり説得したり時間を掛けるべきじゃねェのか?」
「今だからこそなんだ歳三。どのみち大規模な混乱が起こるなら、この戦争の混乱に乗じた方がいい。ついでに貴族たちも軍が傷つき実力行使も難しいしな。特に他国に我々の考えを押し付けるなら今このタイミングを逃せばどんどん難しくなる」
「……まァ、裏切り者が出たら俺が全員叩き斬るだけだけどよ」
歳三は本当にやるだろう。鬼と呼ばれた彼にとって粛清はお手のものだ。
「事前に貴族院での真っ当な政治活動のやり方を教えたんだ。無駄な足掻きはしないだろうさ。……それよりも、今後の国家の組織を一から組み直さなければならないのが面倒だ。私たちとしても当然戦後処理が必要な中、仕事が無限に増えたのだからな。暫く休みはないぞ」
「そう悲観するな。吾輩の考案した法律は戦争前から完成している。それに、本当に一からではないだろう?」
ナポレオンにそう励まされ、私の中に微かな自信が湧いてきた。
「その通りだな。かつての政治システムはそのまま自治体という形で各地域の運営に当たらせる。国家規模のものは○○方面統括というより大きな枠組みを設け、結束感も失わないように配慮する。……いい部分は引き継ぎ、悪い部分はこの機に切り捨てるのだ」
「軍隊はどうする? 反乱がないとは言いきれないぞ」
あそこまで言ってもルーデルはそこが心配なようだ。……ただ次の戦場を待っているだけかもしれないがり
「現国有軍は厳戒態勢で皇都に駐留しておけ。組織の再編成や装備の刷新などは順次行うが、政治体制が安定するまでは今のままで行く」
「了解した」
これからは帝国内の省庁だけでなく、国外との調整も必須。その上に『人類共同世界政府』が成り立つのだ。
「ここからは私の戦いだ」
「世界政府……?」
「そうだ! 『人類共同世界政府』とは即ち、文字通り全ての人類が人種・宗教の垣根を越え、これから我々に襲いかかるであろう困難に対し共に立ち向かうための組織である!」
魔王や魔物、モンスターといった脅威のない元の世界ですら、世界規模の困難に度々直面していた。
残酷な世界では、もっと深刻な問題がいつか訪れるだろう。
「世界政府による統治は全ての者に幸福をもたらすと約束しよう! 法律制定、国防、経済、教育、公衆衛生、社会保障、環境保護、公共インフラ管理、その他。これら全て我々の手によって万全なものにすると保証する!」
これらは国家における政府の重要な役割である。
そして画一化された政治システムは中央集権化を協力に推し進めるだろう。それこそが私の狙いだ。
「帝国の優れた技術が大陸中の経済を変えるだろう! 資源の独占を阻止し、富の再分配を行う!」
豊富な資源を帝国の工業地帯に、資源の豊富な地域へ工業技術を提供すれば、更なる経済の発展と専門性の特化を目指せるだろう。
国や各貴族同士の経済的な潰し合いは経済成長を阻害する。
「そして諸侯はその血をもって理解しただろう! もはや各諸侯の持つ小規模な私兵では進化した戦争については来れない! よって、これより全ての軍隊は国有軍とする!」
各地域への保安局の武力派遣はこの布石であった。
また、今回の戦いまで貴族たちに近代兵器を渡さなかったのも、この戦いで流血を強いることにより身をもって兵器の役割と運用にあたる軍事組織の改革の必要性を理解させる為であった。
軍事技術の変化は貴族たちが自身の軍隊を手放す要因の一つとなる。
火器の導入や規模の拡大した軍隊が必要とされるようになり、個々の貴族がこれを独自に満たすことは困難である。
ウィルフリード軍ですら手こずる魔王領での戦いには、大規模で専門化された軍勢を組織する必要性がある。それに伴って貴族たちの軍事力の役割が相対的に低下したと言えよう。
加えて経済的な要因も影響している。
いつ終わるかも分からない魔王領調査で戦うためには膨大な費用がかかる。近代兵器の製造と配備にも同様に剣や弓矢とは比較にならない程のコストがかかるのだ。
個々の貴族がこれらを負担するのは難しく、国家が財政的な統制を行いながら、より効率的に戦力を編成する必要が生じたのである。
当然中央集権化を推し進め、軍備という特権を剥奪することは貴族たちの反発を招くだろう。
しかし上記のやむを得ない理由の数々や、なにより全ての国の統一を成し遂げた私に対し、異論を唱えることのできる者はこの世に存在しない。
「亜人・獣人・人間、貴族・平民問わず全員が私に協力して欲しい! 帝国、王国、協商連合という形はなくなるが、それは文化や伝統の否定ではない! ……宣言しよう! 未来は明るい! 諸君らの生活か劇的に変わることはないかもしれないが、必ず好転すると約束する!」
これが私の望んだ、頭の中に思い描いた泰平の世だ。
「私の考えに賛同できぬ者もいるだろう! しかし! 新時代の到来を恐れてはならない! 私と共に、新たなる未来を切り拓こうではないか!」
私は拳を振り上げ、そう叫んだ。
「──以上だ! 今後の詳細は新聞や張り紙などを注目してくれ! ……それでは諸君、また会おう!」
全てを言い終わると私は降壇する。教皇たちもそれを見て私に続いた。
「お疲れ様でしたレオ」
「ああ。お前も準備ありがとうな孔明」
舞台袖に英雄たちが集まる。
「それにしても、こんなに急いでやる必要あったのか? もっと周りをゆっくり説得したり時間を掛けるべきじゃねェのか?」
「今だからこそなんだ歳三。どのみち大規模な混乱が起こるなら、この戦争の混乱に乗じた方がいい。ついでに貴族たちも軍が傷つき実力行使も難しいしな。特に他国に我々の考えを押し付けるなら今このタイミングを逃せばどんどん難しくなる」
「……まァ、裏切り者が出たら俺が全員叩き斬るだけだけどよ」
歳三は本当にやるだろう。鬼と呼ばれた彼にとって粛清はお手のものだ。
「事前に貴族院での真っ当な政治活動のやり方を教えたんだ。無駄な足掻きはしないだろうさ。……それよりも、今後の国家の組織を一から組み直さなければならないのが面倒だ。私たちとしても当然戦後処理が必要な中、仕事が無限に増えたのだからな。暫く休みはないぞ」
「そう悲観するな。吾輩の考案した法律は戦争前から完成している。それに、本当に一からではないだろう?」
ナポレオンにそう励まされ、私の中に微かな自信が湧いてきた。
「その通りだな。かつての政治システムはそのまま自治体という形で各地域の運営に当たらせる。国家規模のものは○○方面統括というより大きな枠組みを設け、結束感も失わないように配慮する。……いい部分は引き継ぎ、悪い部分はこの機に切り捨てるのだ」
「軍隊はどうする? 反乱がないとは言いきれないぞ」
あそこまで言ってもルーデルはそこが心配なようだ。……ただ次の戦場を待っているだけかもしれないがり
「現国有軍は厳戒態勢で皇都に駐留しておけ。組織の再編成や装備の刷新などは順次行うが、政治体制が安定するまでは今のままで行く」
「了解した」
これからは帝国内の省庁だけでなく、国外との調整も必須。その上に『人類共同世界政府』が成り立つのだ。
「ここからは私の戦いだ」
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