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第三章
181話 戦況分析
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「レオ様! こちら軍師殿から預かっていた書簡でございます!」
「ほう……」
伝令から受け取った紙にはこれからの動きとあらゆる想定外に備えた策が記されていた。
「よし! それでは私たちファリア軍はトーアから出撃し正面十万を押し込むぞ! その間の防衛はリーンが、東方にはウィルフリードが行きエアネストと挟撃を行う!」
「「はっ!」」
「断続的に砲撃と爆撃を行いその間に我々は前進。後顧の憂いがある敵方は撤退を余儀なくされるだろう! 敵は大軍ではあるが恐れる必要はない! 我々は血を流すことなく勝利するのだ!」
弓も魔法も届かない距離から一方的に相手の希望をへし折る。それが私たちの戦い方だ。
「……全軍前進──!!!」
「ウォォォォオ!!!」
騎兵による突撃は行わない。砲兵隊の前進速度に合わせてじわじわと押していく。
「ルーデル、ハオラン! 弾薬は限られている。小型の制式三号航空爆弾で敵の指揮官をピンポイントで爆撃しろ!」
『了解』
『了解した』
十万の敵兵を全て屠るほどの絨毯爆撃をする余裕はない。そして仮にできたとして無駄に多くの兵を殺したくはない。
難しい任務にはなるが新設したからには空軍の働きに期待する。
「レオ様、どうやら西方の五万がトーアを守るリーンではなく我々の方へ向かってきているようです!」
「直接近衛騎士の惨状を見ていないからそうなる。十門を左に向けろ! 竜人の座標指定を受けた後に砲撃し牽制するのだ!」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
それから私たちはじわじわと皇都へ着実に歩みを進めていた。
基本は爆撃と砲撃で片付いたが、たまに一か八かの大勝負を挑んで来る敵部隊もあった。しかしまともな指揮官を失った散発的な攻撃は、手数のファリア連弩兵と長射程のエルフ長弓兵、強力な獣人歩兵部隊によって簡単に処理できるレベルだった。
戦況が大きく動いたのは二日後、朝日が登り始めた頃だ。
「お知らせします。東方でお味方が勝利。多少兵は減らしましたがウィルフリードとエアネスト合わせて四万がこちらへ合流するとの事です」
「いい流れだ。だがここで焦ってはいけない。まずは彼らと合流することを優先しよう。我々も決して楽観視できる状況ではないからな。──総員進軍停止! 敵の反攻に備えつつ休息を取れ!」
西方五万に正面十万。今はそれなりに減らし西方三万、正面七万ほどだ。リーンも出撃し私たちの援護に回っているが、依然として敵とこちらに大きな兵力差があることに変わりはない。ここは慎重に勝ち点を伸ばしていく。
「レオちょっといいか?」
戦況も落ち着いたので孔明のいる本陣まで下がり、休憩をしていた所、歳三が訪ねてきた。
「どうした? 妖狐族の部隊で何か問題があったか?」
「いや、違う。もうすぐウィルフリードとエアネストがやって来て、正面の国有軍本軍を追撃するだろ?」
「そうだな」
「だがその時に西方の敵軍は残しておくことになるが、ソイツはちょっと危険だ」
「まあ孔明が大丈夫だと判断した上での作戦だから大丈夫だとは思うが、……その通りではあるな」
「そこで俺にいくらかの兵と砲兵を与えて欲しい。俺が西方の軍と本軍を分断する」
歳三がそんなことを言い出すとは思っていなかったので少し驚いた。
しかし彼を召喚する際に、序盤は護衛として、中盤以降は指揮官としてその才を発揮してくれることを考えていたのも事実だ。そろそろより大きな役割を任せてもいいのかもしれない。
「分かった。では兵数などについての詳細は孔明と話してみてくれ」
「おう。後ろ、というか横は俺に任せてくれ」
「ああ。だがくれぐれも無茶はするなよ」
いつまでも英雄たちを勿体ない使い方はできない。可能な限り彼らの最大限の力を発揮できる場を与えるのが私の役目だ。
「ちなみにハオラン、そっちの様子はどうだ」
『……少しずつ後方の部隊が皇都へ向け撤退を始めている。ああそれと空からは中々面白い景色が見れるぞ』
「ほう? それはなんだ?」
『貴族や指揮官どもは爆撃を恐れて目印となる旗を下げ、挙句の果てには目立つからか豪華な鎧を脱ぎ捨て下級の兵士と同じ格好をしておる! そんなことをしようとも上から見れば明らかに警護が厳重な位置から居場所を推測できるのにな! ハハハ!』
連日、一番忙しいのは竜人たちだ。だが笑ってしまうぐらい余裕があるようで何よりである。
貴族の生きる社交世界において自己主張は絶対に必要なものだ。見栄やプライドを見せつけることで権力を誇示するが、逆に言えばそれが出来なければ周囲の人間に見損なわれる。
こんな状態でみすみす皇都へ帰れば、民衆は貴族たちに冷ややかな視線を送ることになるだろう。
「彼らも所詮は人の子、命が大事だということだ。引き続き敵に休ませることなく牽制として爆撃を続けてくれ」
『了解した!』
今後の展開を考えるとほんの少し楽しみな自分がいることに、もう驚きもしなかった。
「ほう……」
伝令から受け取った紙にはこれからの動きとあらゆる想定外に備えた策が記されていた。
「よし! それでは私たちファリア軍はトーアから出撃し正面十万を押し込むぞ! その間の防衛はリーンが、東方にはウィルフリードが行きエアネストと挟撃を行う!」
「「はっ!」」
「断続的に砲撃と爆撃を行いその間に我々は前進。後顧の憂いがある敵方は撤退を余儀なくされるだろう! 敵は大軍ではあるが恐れる必要はない! 我々は血を流すことなく勝利するのだ!」
弓も魔法も届かない距離から一方的に相手の希望をへし折る。それが私たちの戦い方だ。
「……全軍前進──!!!」
「ウォォォォオ!!!」
騎兵による突撃は行わない。砲兵隊の前進速度に合わせてじわじわと押していく。
「ルーデル、ハオラン! 弾薬は限られている。小型の制式三号航空爆弾で敵の指揮官をピンポイントで爆撃しろ!」
『了解』
『了解した』
十万の敵兵を全て屠るほどの絨毯爆撃をする余裕はない。そして仮にできたとして無駄に多くの兵を殺したくはない。
難しい任務にはなるが新設したからには空軍の働きに期待する。
「レオ様、どうやら西方の五万がトーアを守るリーンではなく我々の方へ向かってきているようです!」
「直接近衛騎士の惨状を見ていないからそうなる。十門を左に向けろ! 竜人の座標指定を受けた後に砲撃し牽制するのだ!」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
それから私たちはじわじわと皇都へ着実に歩みを進めていた。
基本は爆撃と砲撃で片付いたが、たまに一か八かの大勝負を挑んで来る敵部隊もあった。しかしまともな指揮官を失った散発的な攻撃は、手数のファリア連弩兵と長射程のエルフ長弓兵、強力な獣人歩兵部隊によって簡単に処理できるレベルだった。
戦況が大きく動いたのは二日後、朝日が登り始めた頃だ。
「お知らせします。東方でお味方が勝利。多少兵は減らしましたがウィルフリードとエアネスト合わせて四万がこちらへ合流するとの事です」
「いい流れだ。だがここで焦ってはいけない。まずは彼らと合流することを優先しよう。我々も決して楽観視できる状況ではないからな。──総員進軍停止! 敵の反攻に備えつつ休息を取れ!」
西方五万に正面十万。今はそれなりに減らし西方三万、正面七万ほどだ。リーンも出撃し私たちの援護に回っているが、依然として敵とこちらに大きな兵力差があることに変わりはない。ここは慎重に勝ち点を伸ばしていく。
「レオちょっといいか?」
戦況も落ち着いたので孔明のいる本陣まで下がり、休憩をしていた所、歳三が訪ねてきた。
「どうした? 妖狐族の部隊で何か問題があったか?」
「いや、違う。もうすぐウィルフリードとエアネストがやって来て、正面の国有軍本軍を追撃するだろ?」
「そうだな」
「だがその時に西方の敵軍は残しておくことになるが、ソイツはちょっと危険だ」
「まあ孔明が大丈夫だと判断した上での作戦だから大丈夫だとは思うが、……その通りではあるな」
「そこで俺にいくらかの兵と砲兵を与えて欲しい。俺が西方の軍と本軍を分断する」
歳三がそんなことを言い出すとは思っていなかったので少し驚いた。
しかし彼を召喚する際に、序盤は護衛として、中盤以降は指揮官としてその才を発揮してくれることを考えていたのも事実だ。そろそろより大きな役割を任せてもいいのかもしれない。
「分かった。では兵数などについての詳細は孔明と話してみてくれ」
「おう。後ろ、というか横は俺に任せてくれ」
「ああ。だがくれぐれも無茶はするなよ」
いつまでも英雄たちを勿体ない使い方はできない。可能な限り彼らの最大限の力を発揮できる場を与えるのが私の役目だ。
「ちなみにハオラン、そっちの様子はどうだ」
『……少しずつ後方の部隊が皇都へ向け撤退を始めている。ああそれと空からは中々面白い景色が見れるぞ』
「ほう? それはなんだ?」
『貴族や指揮官どもは爆撃を恐れて目印となる旗を下げ、挙句の果てには目立つからか豪華な鎧を脱ぎ捨て下級の兵士と同じ格好をしておる! そんなことをしようとも上から見れば明らかに警護が厳重な位置から居場所を推測できるのにな! ハハハ!』
連日、一番忙しいのは竜人たちだ。だが笑ってしまうぐらい余裕があるようで何よりである。
貴族の生きる社交世界において自己主張は絶対に必要なものだ。見栄やプライドを見せつけることで権力を誇示するが、逆に言えばそれが出来なければ周囲の人間に見損なわれる。
こんな状態でみすみす皇都へ帰れば、民衆は貴族たちに冷ややかな視線を送ることになるだろう。
「彼らも所詮は人の子、命が大事だということだ。引き続き敵に休ませることなく牽制として爆撃を続けてくれ」
『了解した!』
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