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第三章
179話 戦場の女神
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『──レオ、来たぞ!』
「早いな」
トーア攻略から半日経たずに国有軍到来の知らせが入った。私たちはトーア北方で防衛陣地を構築している途中のことである。
『とんでもない数だぞ! 騎兵だけで三万はいる!』
流石のハオランも興奮気味にそう話す。無線機越しに向こうでの困惑ぶりが伝わってきた。
「そのまま偵察を強行し敵の陣容を暴け」
『危険過ぎる! 例のワイバーン竜騎兵が五百は飛んでいるぞ!』
「ではまず制空戦闘だ。制空権確保を第一に動け」
『無理だ! こっちは五十もいないんだぞ!?』
『こちらも無理です。申し訳ありませんが帰還させて頂きます』
『……族長の指示に従う』
ハオランだけでなくリーフェンとルーシャンからも抗議の通信が入る。
「……分かった。では竜人は皆戻っていい。……ルーデル、やれるな?」
『一つ言っておこう。俺は爆撃機乗りでありながら敵機を幾つも撃墜したエースパイロットだったと言うことをな』
「と、いうことだハオラン。竜人は戻って休んでいいぞ」
『ぐぬぬぬ……。──我ら誇り高き竜人が人間一人に任せ逃げるなどしないわ! 我々もいくぞリーフェン! ルーシャン!』
『正気ですか族長!?』
『……リーフェン、族長の指示に従え』
対抗心を煽れば彼らが乗ってくることは読めていた。
それにワイバーン竜騎兵と言えば聞こえは良いが、向こうは言葉の通じないモンスターをなんとか飼い慣らしただけであり、竜人が簡単に負ける筈もない。数だけの見掛け倒しだ。
「発破の掛け方が上手くなったなレオ」
「これから先、私に必要なのは人心掌握術だ」
「まァ、そうだな。皆お前のこと期待してるぜ? そうじゃねェと兵どももこれから十倍以上の敵に向かってくってのにあんな自信満々な顔してねェ」
歳三にそう言われ辺りを見渡すと、敵軍襲来の知らせが聞こえてきた周りの兵士たちは取り乱すこともなく、皆落ち着いた表情で私の指示を待っていた。
練度の高さだけでは片付けられない、私に対する強い信頼。これを裏切ることがないよう、私も全身全霊を捧げてこの戦いに挑まなければならない。
「諸君! 遂に奴らがやって来た! 奴らはこの戦いの勝者は我々の他にない!」
私の声に気が付き、見渡す限りの我が軍の兵が私の言葉を固唾を飲んで見守っていた。
「正義は我らにあり! 全軍、戦闘開始!!!」
声の震えが悟られないよう、私は腹の底からそう大声で叫んだ。
『──レオ! 我らは依然戦闘であるが大体の敵の場所が分かったぞ!』
「よくやったハオラン。伝えてくれ」
『まず正面騎兵二万がそちらに突撃している! 防御陣地が完成する前に出端を挫くつもりだろう! 我々は制空戦闘を行っているためそちらに近接航空支援が行えない!』
「了解した。……ルーデル、一分後の敵騎兵隊進軍予測位置の座標を送れ」
『……2381.1536だ』
「孔明。三十秒後、2381.1536に砲撃を行え。砲兵隊による三十門全て斉射だ。繰り返す。2381.1536に三十門で支援砲撃を行え」
『了解致しました』
悪いが出端を挫くのはこちらの方だ。
開発陣ヘクセルとドワーフ、私に歳三、そしてそこにルーデルを加えて新開発された新兵器、制式一号魔装カノン砲。銃にするには威力の調節が難しいなら大砲を先に作ればいいじゃないか、という発送の元開発されたらこの兵器。
火薬の力で撃ち出された直径88cmの砲弾には、爆弾と同様に火薬と魔石の破片が詰め込まれている。
発展途上の技術力ではかのアハトアハトのような高精度、高威力は引き出せない。砲身寿命は僅か二十発程度であり、信頼性にも大きく欠ける。
だがその中でもマシな三十門を集め、三百発の弾薬を用意した。これがどれだけ役に立つかはこれから目の当たりにする。
無線連絡から間もなくして砲撃が開始された。
ズドドドドドドドドドドン! という爆音が私たちの後方から鳴り響く。大地を揺るがし鼓膜をつんざくような轟音の後、頭上に弧を描く十本の光の筋が流れた。
「レオ様、もうこちらの望遠鏡で見える距離まで敵の騎兵隊が」
「ちょうどいいな」
タリオから特注の望遠鏡を受け取り覗き込む。
目を凝らすと魚鱗の陣形で土煙を上げながら突撃してくる大量の騎兵隊の様子が見えた。
「あの旗は……、先頭は近衛騎士団か……。申し訳ないな、君らに罪は無いが死んでもらう。──だんちゃーく……、いま」
適当にそう呟いたその瞬間、ジャストタイミングで砲弾が敵騎兵隊に降り注ぐ。
望遠鏡を覗き込む私の目が焼ける程の閃光が放たれた後、遅れて爆音と爆風がここまで届いた。
「こちらからは爆煙で確認できない……。弾着観測求む……」
『……敵に壊滅的な打撃を与えたと言える。十七発が敵部隊に直撃、内四発は隊列の中央に当たり指揮系統を喪失。部隊は混乱に陥り撤退……、というより四方に敗走を開始している』
戦場を支配するが如く威力を発揮する砲兵。その圧倒的な強さから戦場の女神とまで呼ばれるそれは、この世界に置いても有用であることを彼らの死を以て証明したのだ。
「早いな」
トーア攻略から半日経たずに国有軍到来の知らせが入った。私たちはトーア北方で防衛陣地を構築している途中のことである。
『とんでもない数だぞ! 騎兵だけで三万はいる!』
流石のハオランも興奮気味にそう話す。無線機越しに向こうでの困惑ぶりが伝わってきた。
「そのまま偵察を強行し敵の陣容を暴け」
『危険過ぎる! 例のワイバーン竜騎兵が五百は飛んでいるぞ!』
「ではまず制空戦闘だ。制空権確保を第一に動け」
『無理だ! こっちは五十もいないんだぞ!?』
『こちらも無理です。申し訳ありませんが帰還させて頂きます』
『……族長の指示に従う』
ハオランだけでなくリーフェンとルーシャンからも抗議の通信が入る。
「……分かった。では竜人は皆戻っていい。……ルーデル、やれるな?」
『一つ言っておこう。俺は爆撃機乗りでありながら敵機を幾つも撃墜したエースパイロットだったと言うことをな』
「と、いうことだハオラン。竜人は戻って休んでいいぞ」
『ぐぬぬぬ……。──我ら誇り高き竜人が人間一人に任せ逃げるなどしないわ! 我々もいくぞリーフェン! ルーシャン!』
『正気ですか族長!?』
『……リーフェン、族長の指示に従え』
対抗心を煽れば彼らが乗ってくることは読めていた。
それにワイバーン竜騎兵と言えば聞こえは良いが、向こうは言葉の通じないモンスターをなんとか飼い慣らしただけであり、竜人が簡単に負ける筈もない。数だけの見掛け倒しだ。
「発破の掛け方が上手くなったなレオ」
「これから先、私に必要なのは人心掌握術だ」
「まァ、そうだな。皆お前のこと期待してるぜ? そうじゃねェと兵どももこれから十倍以上の敵に向かってくってのにあんな自信満々な顔してねェ」
歳三にそう言われ辺りを見渡すと、敵軍襲来の知らせが聞こえてきた周りの兵士たちは取り乱すこともなく、皆落ち着いた表情で私の指示を待っていた。
練度の高さだけでは片付けられない、私に対する強い信頼。これを裏切ることがないよう、私も全身全霊を捧げてこの戦いに挑まなければならない。
「諸君! 遂に奴らがやって来た! 奴らはこの戦いの勝者は我々の他にない!」
私の声に気が付き、見渡す限りの我が軍の兵が私の言葉を固唾を飲んで見守っていた。
「正義は我らにあり! 全軍、戦闘開始!!!」
声の震えが悟られないよう、私は腹の底からそう大声で叫んだ。
『──レオ! 我らは依然戦闘であるが大体の敵の場所が分かったぞ!』
「よくやったハオラン。伝えてくれ」
『まず正面騎兵二万がそちらに突撃している! 防御陣地が完成する前に出端を挫くつもりだろう! 我々は制空戦闘を行っているためそちらに近接航空支援が行えない!』
「了解した。……ルーデル、一分後の敵騎兵隊進軍予測位置の座標を送れ」
『……2381.1536だ』
「孔明。三十秒後、2381.1536に砲撃を行え。砲兵隊による三十門全て斉射だ。繰り返す。2381.1536に三十門で支援砲撃を行え」
『了解致しました』
悪いが出端を挫くのはこちらの方だ。
開発陣ヘクセルとドワーフ、私に歳三、そしてそこにルーデルを加えて新開発された新兵器、制式一号魔装カノン砲。銃にするには威力の調節が難しいなら大砲を先に作ればいいじゃないか、という発送の元開発されたらこの兵器。
火薬の力で撃ち出された直径88cmの砲弾には、爆弾と同様に火薬と魔石の破片が詰め込まれている。
発展途上の技術力ではかのアハトアハトのような高精度、高威力は引き出せない。砲身寿命は僅か二十発程度であり、信頼性にも大きく欠ける。
だがその中でもマシな三十門を集め、三百発の弾薬を用意した。これがどれだけ役に立つかはこれから目の当たりにする。
無線連絡から間もなくして砲撃が開始された。
ズドドドドドドドドドドン! という爆音が私たちの後方から鳴り響く。大地を揺るがし鼓膜をつんざくような轟音の後、頭上に弧を描く十本の光の筋が流れた。
「レオ様、もうこちらの望遠鏡で見える距離まで敵の騎兵隊が」
「ちょうどいいな」
タリオから特注の望遠鏡を受け取り覗き込む。
目を凝らすと魚鱗の陣形で土煙を上げながら突撃してくる大量の騎兵隊の様子が見えた。
「あの旗は……、先頭は近衛騎士団か……。申し訳ないな、君らに罪は無いが死んでもらう。──だんちゃーく……、いま」
適当にそう呟いたその瞬間、ジャストタイミングで砲弾が敵騎兵隊に降り注ぐ。
望遠鏡を覗き込む私の目が焼ける程の閃光が放たれた後、遅れて爆音と爆風がここまで届いた。
「こちらからは爆煙で確認できない……。弾着観測求む……」
『……敵に壊滅的な打撃を与えたと言える。十七発が敵部隊に直撃、内四発は隊列の中央に当たり指揮系統を喪失。部隊は混乱に陥り撤退……、というより四方に敗走を開始している』
戦場を支配するが如く威力を発揮する砲兵。その圧倒的な強さから戦場の女神とまで呼ばれるそれは、この世界に置いても有用であることを彼らの死を以て証明したのだ。
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