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第一章
83話 改革
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まずは身近な屋敷の間取りを。そして地図で街の様子を確認したりしているうちに、日が傾き始めた。
途中、この屋敷の料理人を名乗る人物が私に軽食を差し出してきた。
歳三は「毒が入ってるかもしれねェ」と止めたが、なんともなかった。
タリオも残っているファリアの兵士と、地下牢に入れられた捕虜の数を伝えに来た。
その際、また闖入者に来られても迷惑なので、屋敷の警備を数人任せることにした。
しばらくすると、外からガヤガヤと人々の話し声が聞こえて来た。それはすぐに彼らの到着が分かった。
「遅かったな孔明」
私が外に出て出迎えると、屋敷の前には五台の馬車が停められていた。
護衛の兵士らは兵舎へ向かったらしい。
「道中、魔物に襲われましてね」
「そうか。それでも兵士がいたから大丈夫だっただろ?」
「いえ、魔物を撃退したのは───」
「お師匠様です!」
二台目の馬車から、ミラがひょっこり顔を出した。
「ヘクセルが?攻撃魔法は使えないはずでは……。戦えたのか?」
「魔石をウィルフリードで買えたからね。暇な馬車での移動の間にちょっとした新発明をしちゃったのさ。……か、考えれば貴重な魔石を使わずとも、歴戦のウィルフリード兵の方々に任せた方が良かったよね…………」
「馬車のように限られた空間で簡単に作れて、武器に使える魔道具……。後でじっくり聞かせて欲しいものだな」
これが天才というやつか。
私が与えた金貨。その小さなきっかけで、ヘクセルはまた歴史を変えるような発明をしてしまった。
「ああ、場所と言えば。さっき街の家屋状況に関する資料を読んでいた時、ヘクセルとミラにちょうどいい空き家があったんだ。そこを好きに改造して研究室にでもしてくれ。すぐに手配させるから、今日はとりあえず宿に泊まってな」
「分かりました!」
「この屋敷は今日から私が主だ。歳三は護衛の為、孔明は仕事の為にしばらくここに住んでもらおうか」
「おう」
「了解しました」
「荷物は明日運び入れる。必要なものだけ取り出して、残りは倉庫にしまっておけ。屋敷には 寝泊まりするのに困らない程度の物資は揃っている」
とりあえず今後の発展の中心人物となる人間の割り振りは済んだ。後はこの連れてきた兵士たちだが……。
「兵士の皆さんは私についてきてください!幸か不幸か、バルンは軍拡に勤しんでいたので、兵舎には余裕がありました」
「───と、いうことらしい。各員、今日は寝床の確保と十分な休養を任務とする。仕事は明日に改めて割り振ろう。……それでは解散!」
「は!」
兵士らはタリオに連れられ兵舎の方へ駆け足で去っていった。
「さて、と。孔明、明日からすぐにでも取り掛からなければならない仕事が沢山あった。今日の夜は長くなるぞ。明るい魔法のライトもないがな」
「ふふ、蛍雪の功となるでしょうか……。なんなりとお任せ下さい」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
私たちはまたあの狭い執務室に籠っていた。
私と孔明は、か細い蝋燭の灯りを頼りに資料を広げる。歳三は目を瞑りながら、刀を抱えて入口の近くで座っていた。
「───成程、これは少々問題がありますね」
「ああ。これで、よくまともに街の運営が成り立っていたな、としか言いようがないレベルだ」
バルンは見栄なのか知らんが、大量の財物を買い込んでいた。それはあの美術館気取りの展覧室を見ても明らかだった。
「いえ、しかしこれは有効活用出来ますよ。バルンが抱え込んだ財宝を売れば去年の税収の凡そ半分になりそうです」
「それを陛下への上納「ファリアの税収五割」に充てれば、一年は余裕が持てるという訳だな」
「はい。そして得た一年で、増徴された三割分の税収を増やしましょう」
「それが秘策とやらか?なぁ、もう聞かせてくれてもいいんじゃないか?」
「口で言うのは難しいのです。百聞は一見に如かず。されど秘策を披露するのは今ではない。レオ、もう少しお待ちを」
「ううむ……。分かった……」
孔明が羽扇を口元に当てて笑みを隠す時、それは彼の頭脳が正解を導き出した時だ。
今は孔明を信じよう。
「金策は後に見れる秘策に期待するとして……、軍備について策はあるか?ファリアはそのほとんどの兵を失っている。残っているのは僅かな捕虜と戦いにも呼ばれなかった新兵だ」
「新兵の訓練は歳三に任せます。しかし、その点についても、私が無策のまま馬に揺られていた訳ではありませんよ」
「どうする?」
「ふふ、そうです。”ど“にしましょう」
「は?」
「上級な訓練を要する弓ではなく、弩、それも連射できる連弩です」
「諸葛連弩か!」
弩。英語ではクロスボウ、ヨーロッパではボルトと呼ばれる武器だ。
弓は、他の武器に比べ射程が長く強力ではある。しかし、その威力を発揮するには、弓を引き絞って構えるための筋力と、その状態で狙いをつけて放つための訓練が必要だ。
十分な弓術の訓練を受けた弓兵でなければ、集団戦では却って足でまといになりかねない。
これらの弱点を簡単に克服するのがクロスボウだ。予め専用の矢を装填しておくことで、弦に矢を掛ける時のみの力で運用できる。
そして狙う時はただ構えるだけでよく、弓のように弦を引き絞る必要がない。
加えて、人間では到底扱えないような強力な弦と鉄製のボルトを装填することで、弓では決して出せないほどの威力を持つ兵器にも化ける。
それも、予め装填するという特徴を活かし、専用の器具を用いて矢を番える事ができるからだ。
これが連弩となり、連射できると考えただけでもその恐ろしさが分かる。
しかも連弩は銃のように弾倉を交換することで、更にその制圧力を高める。
ちなみに固定砲台のようなバージョンもあり、その汎用性はお墨付きだ。
「良し、それじゃあまずはその設計図から頼む。私も明日ファリア中の技術者をかき集めよう」
「了解しました」
「材質はどうする?恐らく中原で手に入れていた木と、こちらの世界の木では、性質も全く違うだろう」
「そうですね。必要な条件としてはまず硬さ。それに靱やかさも重要です。そして最も大切なのは───」
こうして会議は夜更けまで続いた。
途中、この屋敷の料理人を名乗る人物が私に軽食を差し出してきた。
歳三は「毒が入ってるかもしれねェ」と止めたが、なんともなかった。
タリオも残っているファリアの兵士と、地下牢に入れられた捕虜の数を伝えに来た。
その際、また闖入者に来られても迷惑なので、屋敷の警備を数人任せることにした。
しばらくすると、外からガヤガヤと人々の話し声が聞こえて来た。それはすぐに彼らの到着が分かった。
「遅かったな孔明」
私が外に出て出迎えると、屋敷の前には五台の馬車が停められていた。
護衛の兵士らは兵舎へ向かったらしい。
「道中、魔物に襲われましてね」
「そうか。それでも兵士がいたから大丈夫だっただろ?」
「いえ、魔物を撃退したのは───」
「お師匠様です!」
二台目の馬車から、ミラがひょっこり顔を出した。
「ヘクセルが?攻撃魔法は使えないはずでは……。戦えたのか?」
「魔石をウィルフリードで買えたからね。暇な馬車での移動の間にちょっとした新発明をしちゃったのさ。……か、考えれば貴重な魔石を使わずとも、歴戦のウィルフリード兵の方々に任せた方が良かったよね…………」
「馬車のように限られた空間で簡単に作れて、武器に使える魔道具……。後でじっくり聞かせて欲しいものだな」
これが天才というやつか。
私が与えた金貨。その小さなきっかけで、ヘクセルはまた歴史を変えるような発明をしてしまった。
「ああ、場所と言えば。さっき街の家屋状況に関する資料を読んでいた時、ヘクセルとミラにちょうどいい空き家があったんだ。そこを好きに改造して研究室にでもしてくれ。すぐに手配させるから、今日はとりあえず宿に泊まってな」
「分かりました!」
「この屋敷は今日から私が主だ。歳三は護衛の為、孔明は仕事の為にしばらくここに住んでもらおうか」
「おう」
「了解しました」
「荷物は明日運び入れる。必要なものだけ取り出して、残りは倉庫にしまっておけ。屋敷には 寝泊まりするのに困らない程度の物資は揃っている」
とりあえず今後の発展の中心人物となる人間の割り振りは済んだ。後はこの連れてきた兵士たちだが……。
「兵士の皆さんは私についてきてください!幸か不幸か、バルンは軍拡に勤しんでいたので、兵舎には余裕がありました」
「───と、いうことらしい。各員、今日は寝床の確保と十分な休養を任務とする。仕事は明日に改めて割り振ろう。……それでは解散!」
「は!」
兵士らはタリオに連れられ兵舎の方へ駆け足で去っていった。
「さて、と。孔明、明日からすぐにでも取り掛からなければならない仕事が沢山あった。今日の夜は長くなるぞ。明るい魔法のライトもないがな」
「ふふ、蛍雪の功となるでしょうか……。なんなりとお任せ下さい」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
私たちはまたあの狭い執務室に籠っていた。
私と孔明は、か細い蝋燭の灯りを頼りに資料を広げる。歳三は目を瞑りながら、刀を抱えて入口の近くで座っていた。
「───成程、これは少々問題がありますね」
「ああ。これで、よくまともに街の運営が成り立っていたな、としか言いようがないレベルだ」
バルンは見栄なのか知らんが、大量の財物を買い込んでいた。それはあの美術館気取りの展覧室を見ても明らかだった。
「いえ、しかしこれは有効活用出来ますよ。バルンが抱え込んだ財宝を売れば去年の税収の凡そ半分になりそうです」
「それを陛下への上納「ファリアの税収五割」に充てれば、一年は余裕が持てるという訳だな」
「はい。そして得た一年で、増徴された三割分の税収を増やしましょう」
「それが秘策とやらか?なぁ、もう聞かせてくれてもいいんじゃないか?」
「口で言うのは難しいのです。百聞は一見に如かず。されど秘策を披露するのは今ではない。レオ、もう少しお待ちを」
「ううむ……。分かった……」
孔明が羽扇を口元に当てて笑みを隠す時、それは彼の頭脳が正解を導き出した時だ。
今は孔明を信じよう。
「金策は後に見れる秘策に期待するとして……、軍備について策はあるか?ファリアはそのほとんどの兵を失っている。残っているのは僅かな捕虜と戦いにも呼ばれなかった新兵だ」
「新兵の訓練は歳三に任せます。しかし、その点についても、私が無策のまま馬に揺られていた訳ではありませんよ」
「どうする?」
「ふふ、そうです。”ど“にしましょう」
「は?」
「上級な訓練を要する弓ではなく、弩、それも連射できる連弩です」
「諸葛連弩か!」
弩。英語ではクロスボウ、ヨーロッパではボルトと呼ばれる武器だ。
弓は、他の武器に比べ射程が長く強力ではある。しかし、その威力を発揮するには、弓を引き絞って構えるための筋力と、その状態で狙いをつけて放つための訓練が必要だ。
十分な弓術の訓練を受けた弓兵でなければ、集団戦では却って足でまといになりかねない。
これらの弱点を簡単に克服するのがクロスボウだ。予め専用の矢を装填しておくことで、弦に矢を掛ける時のみの力で運用できる。
そして狙う時はただ構えるだけでよく、弓のように弦を引き絞る必要がない。
加えて、人間では到底扱えないような強力な弦と鉄製のボルトを装填することで、弓では決して出せないほどの威力を持つ兵器にも化ける。
それも、予め装填するという特徴を活かし、専用の器具を用いて矢を番える事ができるからだ。
これが連弩となり、連射できると考えただけでもその恐ろしさが分かる。
しかも連弩は銃のように弾倉を交換することで、更にその制圧力を高める。
ちなみに固定砲台のようなバージョンもあり、その汎用性はお墨付きだ。
「良し、それじゃあまずはその設計図から頼む。私も明日ファリア中の技術者をかき集めよう」
「了解しました」
「材質はどうする?恐らく中原で手に入れていた木と、こちらの世界の木では、性質も全く違うだろう」
「そうですね。必要な条件としてはまず硬さ。それに靱やかさも重要です。そして最も大切なのは───」
こうして会議は夜更けまで続いた。
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