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第一章
33話 伝令
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会議室には水に口をつける伝令の姿があった。
私を見るとすぐに立ち上がり口上を述べる。
「レオ=ウィルフリード様で間違いありませんか?」
「あぁ、私がレオ=ウィルフリードだ。君のことを待っていたよ」
「既に書状はお読みになられましたか?」
街に着くなりいきなりタリオに書状をぶんどられたのだから、伝令の彼が心配するのも無理はない。
「既に軽く読んだよ。早速詳しい内容を教えてくれ」
「は!それではウルツ様より預かった言葉です」
『ファリアに対しては一切反撃せず籠城戦に徹せよ。間もなく我らウィルフリード本軍が帰還する。それまではひたすら耐えよ』
父はファリアと戦うことに反対だったらしい。
それもそうだ。
歳三は異世界では歴戦の英雄であっても、この世界ではまともに戦闘に参加したことがない。現状残っている軍の最高幹部ではあるが、そのその能力を父が信じられなかったとしても無理はない。
そしてなにより、私は馬を乗りこなし真剣を振るうことすら危うい十歳の子供だ。そんな我が子に数倍の敵に対して打って出よとは、普通の親なら言える訳もない。
だが……。
「実は皇都からの援軍がすぐに来て助かったのだ」
「そのようですね。レオ様に何事もなくウルツ様もお喜びになると思います」
街は何事もなくなかったが。
「では次にルイース様からの伝言をお伝えします」
『万が一援軍が間に合わなかった場合、身分を隠し民に紛れてウィルフリードから逃れなさい。ウィルフリードを取り返した後のことは全て母に任せよ』
仮にも帝国の騎士である父には、戦場から逃げろとは言えなかったらしい。わざわざ母からということにして、私を逃がそうと考えていたのだ。
事実、私はファリアの大軍を前にして「貴族として逃げることはできない」「せめて戦場死のう」と思っていた。母はなんでもお見通しだ。
きっと母はそんな私の考えを見抜いてこのような伝言を遣わせたのだろう。
「ちなみにだが、お前はファリアに包囲されたウィルフリードにどのように伝言を伝えるつもりだったのだ?」
いくら外部から戦略を伝えたいとしても、完全に包囲された陣の中心を堂々と突っ切ることはできない。
「私は幻影魔法が使えますので」
「おぉ……」
この男、相当の手練のようだ。
幻影魔法は非殺傷魔法の中でも最上位に入る高級魔法だ。主に軍隊の伝令、もしくは暗殺者の補助魔法として使われる。
自分たちも戦いの最中だというのに最上級の伝令をこちらに差し向けたということだ。
「それで、ウィルフリード本軍はあとどのぐらいで着くのだ?」
「は、ではまず時系列順にお話申し上げます」
「頼んだ」
「まず、ファリア反乱の知らせを帝国が察知したのが、ファリア反乱の一日前でした」
始まる前からその動きを押さえていたのか。
「その時点で帝国は皇都から援軍と、最北で戦うウィルフリード本軍に伝令を送りました」
団長は事前に知った上で、騎馬隊のみという最速の援軍として駆けつけたということになる。
帝国が反乱を察知していなかったら、ウィルフリードからの伝令では確実に間に合わなかった。
一日前という余裕から、騎馬隊のみの部隊になっていなければ、援軍が到着するのは街は蹂躙された後になっただろう。
「反乱から四日目に当たる日には、北部で戦う我々の元に皇都からの伝令が到着しました」
さすが皇都の精鋭は伝令までもがその速さの違いを見せつけてくる。
北部の険しい地形は、普通の人間が馬に乗って渡ろうとすれば優に五日はかかる。訓練された皇都の伝令だからこそ、その道のりを三日で踏破したのだろう。
「我々の元に伝令が到着した時には、既に魔物討伐は完全に完了していました。魔物が異常に少なく、討伐自体はもっと早くに終わっていた。しかし、さすがに規定の日数より早く帰ることはできないので、到着から一ヶ月、つまり後十日ほど駐屯することに決まりました」
近年勢いを増していた魔物が「異常に」少ないというのは、それはそれで引っかかる。
「しかしウィルフリードが攻撃されたという知らせを聞き、任務自体は終わっているのだからと、以前の決定を取り消しすぐにウィルフリードへ向けて出発しました」
「なるほど。それではお前はその時点で本軍から離れたという事だな?」
「はい。私は一人でそこから最速でウィルフリードまで戻ってきたつもりです。ですが距離的に皇都からの援軍の方が早かったようです」
反乱まみれのガタガタ地方政治だが、軍機構はしっかりした帝国で良かった。これが怠慢軍隊であれば今頃私の命はなかっただろう。伝令の彼も任務を達成できないところだった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「では改めて、ウィルフリード本軍はあとどのぐらいでこちらに着くか分かるか?」
「兵糧などが少ない分行きよりは早く戻れるかと。しかし負傷者も運んでいてそこまでスピードは出せないため、最大速度で行軍したとしてあと十日はかかるでしょう」
「意外と早いな……」
逆に言えば、あと十日で一万の兵を迎え入れる準備を完了させなければならない。
「はい。包囲されたウィルフリード救援が目的ですので、ウルツ様も相当急いで兵を向けてます。そうなれば、落伍する者もいるでしょう」
「ではこちらから無事を知らせる伝令をすぐに出すべきだな」
「私が参りましょう」
数日かけてとはいえ、正確には分からないが数百キロはあるだろう道のりを来た疲れを、彼は全く感じさせない。
「いや、お前は十分に休んでくれ。伝令には別の者を出す」
「ご配慮感謝します」
彼は深々と頭を下げる。
「では今日はもう任務は終えて帰ることを許可しよう。ご苦労だった」
「失礼します……」
彼は音も立てず、洗練された足取りで部屋から出ていった。本当の猛者というのはその立ち振る舞いからでも察せるものだ。
「名前を聞いとくんだったな……」
まぁ、同じウィルフリードの人間同士、また会う機会があるはずだ。
私はシズネが仕事場代わりにしている図書室に向かった。
予想通り、彼女は本を何冊も机に広げながら書類仕事に勤しんでいた。
「シズネさん、ここに母からの指令が書かれている。あとは任せていいか?」
「……!奥様からですか!もちろんです!そこに置いといてください!」
シズネは耳をピンと立て、尻尾は左右に振り振りと揺れている。母の無事を知れて安心したのだろう。
母とシズネは特に仲が良かった。女性同士、知識人同士で馬が合うのだろう。
シズネは妖狐族なのでどちらかと言うと狐だが…………。
くだらない冗談は置いといて、私は至急取りかかるべき仕事に戻った。
私を見るとすぐに立ち上がり口上を述べる。
「レオ=ウィルフリード様で間違いありませんか?」
「あぁ、私がレオ=ウィルフリードだ。君のことを待っていたよ」
「既に書状はお読みになられましたか?」
街に着くなりいきなりタリオに書状をぶんどられたのだから、伝令の彼が心配するのも無理はない。
「既に軽く読んだよ。早速詳しい内容を教えてくれ」
「は!それではウルツ様より預かった言葉です」
『ファリアに対しては一切反撃せず籠城戦に徹せよ。間もなく我らウィルフリード本軍が帰還する。それまではひたすら耐えよ』
父はファリアと戦うことに反対だったらしい。
それもそうだ。
歳三は異世界では歴戦の英雄であっても、この世界ではまともに戦闘に参加したことがない。現状残っている軍の最高幹部ではあるが、そのその能力を父が信じられなかったとしても無理はない。
そしてなにより、私は馬を乗りこなし真剣を振るうことすら危うい十歳の子供だ。そんな我が子に数倍の敵に対して打って出よとは、普通の親なら言える訳もない。
だが……。
「実は皇都からの援軍がすぐに来て助かったのだ」
「そのようですね。レオ様に何事もなくウルツ様もお喜びになると思います」
街は何事もなくなかったが。
「では次にルイース様からの伝言をお伝えします」
『万が一援軍が間に合わなかった場合、身分を隠し民に紛れてウィルフリードから逃れなさい。ウィルフリードを取り返した後のことは全て母に任せよ』
仮にも帝国の騎士である父には、戦場から逃げろとは言えなかったらしい。わざわざ母からということにして、私を逃がそうと考えていたのだ。
事実、私はファリアの大軍を前にして「貴族として逃げることはできない」「せめて戦場死のう」と思っていた。母はなんでもお見通しだ。
きっと母はそんな私の考えを見抜いてこのような伝言を遣わせたのだろう。
「ちなみにだが、お前はファリアに包囲されたウィルフリードにどのように伝言を伝えるつもりだったのだ?」
いくら外部から戦略を伝えたいとしても、完全に包囲された陣の中心を堂々と突っ切ることはできない。
「私は幻影魔法が使えますので」
「おぉ……」
この男、相当の手練のようだ。
幻影魔法は非殺傷魔法の中でも最上位に入る高級魔法だ。主に軍隊の伝令、もしくは暗殺者の補助魔法として使われる。
自分たちも戦いの最中だというのに最上級の伝令をこちらに差し向けたということだ。
「それで、ウィルフリード本軍はあとどのぐらいで着くのだ?」
「は、ではまず時系列順にお話申し上げます」
「頼んだ」
「まず、ファリア反乱の知らせを帝国が察知したのが、ファリア反乱の一日前でした」
始まる前からその動きを押さえていたのか。
「その時点で帝国は皇都から援軍と、最北で戦うウィルフリード本軍に伝令を送りました」
団長は事前に知った上で、騎馬隊のみという最速の援軍として駆けつけたということになる。
帝国が反乱を察知していなかったら、ウィルフリードからの伝令では確実に間に合わなかった。
一日前という余裕から、騎馬隊のみの部隊になっていなければ、援軍が到着するのは街は蹂躙された後になっただろう。
「反乱から四日目に当たる日には、北部で戦う我々の元に皇都からの伝令が到着しました」
さすが皇都の精鋭は伝令までもがその速さの違いを見せつけてくる。
北部の険しい地形は、普通の人間が馬に乗って渡ろうとすれば優に五日はかかる。訓練された皇都の伝令だからこそ、その道のりを三日で踏破したのだろう。
「我々の元に伝令が到着した時には、既に魔物討伐は完全に完了していました。魔物が異常に少なく、討伐自体はもっと早くに終わっていた。しかし、さすがに規定の日数より早く帰ることはできないので、到着から一ヶ月、つまり後十日ほど駐屯することに決まりました」
近年勢いを増していた魔物が「異常に」少ないというのは、それはそれで引っかかる。
「しかしウィルフリードが攻撃されたという知らせを聞き、任務自体は終わっているのだからと、以前の決定を取り消しすぐにウィルフリードへ向けて出発しました」
「なるほど。それではお前はその時点で本軍から離れたという事だな?」
「はい。私は一人でそこから最速でウィルフリードまで戻ってきたつもりです。ですが距離的に皇都からの援軍の方が早かったようです」
反乱まみれのガタガタ地方政治だが、軍機構はしっかりした帝国で良かった。これが怠慢軍隊であれば今頃私の命はなかっただろう。伝令の彼も任務を達成できないところだった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「では改めて、ウィルフリード本軍はあとどのぐらいでこちらに着くか分かるか?」
「兵糧などが少ない分行きよりは早く戻れるかと。しかし負傷者も運んでいてそこまでスピードは出せないため、最大速度で行軍したとしてあと十日はかかるでしょう」
「意外と早いな……」
逆に言えば、あと十日で一万の兵を迎え入れる準備を完了させなければならない。
「はい。包囲されたウィルフリード救援が目的ですので、ウルツ様も相当急いで兵を向けてます。そうなれば、落伍する者もいるでしょう」
「ではこちらから無事を知らせる伝令をすぐに出すべきだな」
「私が参りましょう」
数日かけてとはいえ、正確には分からないが数百キロはあるだろう道のりを来た疲れを、彼は全く感じさせない。
「いや、お前は十分に休んでくれ。伝令には別の者を出す」
「ご配慮感謝します」
彼は深々と頭を下げる。
「では今日はもう任務は終えて帰ることを許可しよう。ご苦労だった」
「失礼します……」
彼は音も立てず、洗練された足取りで部屋から出ていった。本当の猛者というのはその立ち振る舞いからでも察せるものだ。
「名前を聞いとくんだったな……」
まぁ、同じウィルフリードの人間同士、また会う機会があるはずだ。
私はシズネが仕事場代わりにしている図書室に向かった。
予想通り、彼女は本を何冊も机に広げながら書類仕事に勤しんでいた。
「シズネさん、ここに母からの指令が書かれている。あとは任せていいか?」
「……!奥様からですか!もちろんです!そこに置いといてください!」
シズネは耳をピンと立て、尻尾は左右に振り振りと揺れている。母の無事を知れて安心したのだろう。
母とシズネは特に仲が良かった。女性同士、知識人同士で馬が合うのだろう。
シズネは妖狐族なのでどちらかと言うと狐だが…………。
くだらない冗談は置いといて、私は至急取りかかるべき仕事に戻った。
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