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第49話 柊を束ねる時期
しおりを挟むロスカが白く濁ったものを吐いたように、フレイアの中にあった熱もパチパチと弾けていった。
先程よりも強く感じられたのは二度目だったからだろうか。 背中に立てられた爪が緩くなり、フレイアはゆっくりと、彼の腕を辿りながらベッドへと手をおろした。
二人を包む空気は甘いミルク粥を浸したように、しっとりと濡れている。
「はあ、だめだな」
ロスカはフレイアの乱れた髪を整えながら、呟いた。
何が駄目なのだろうか。
「既に無理をさせているのに、もう一度したいと思ってしまう」
確かに、彼の熱杭は再び硬くなりそうな気配はあった。
出来れば応えたい。もう一度、フレイアも彼の熱の中に溺れてしまいたい。
そう思った。けれども、熱を与えられる事に堪えれるか不安だった。
既に腰は重く、下腹部はどこか鈍く痛い。
彼女は息を整えながら、彼の濡れた額に張り付いた髪を取っては首を振った。
休ませて、と。
「それもそうだな・・・」
下腹部を満たしていた杭が、ゆっくりと抜かれる。
抜いているだけなのに、名残惜しそうに果肉が吸い付いたのは気のせいではない筈だ。
ただ、あんなにも圧迫感を感じたものが無くなると、どこかもの寂しいのは不思議であった。
「愛してる」
ロスカに口づけをされる。
燃えるような欲が互いの体から消えた後だ。甘い気だるさも相まって、フレイアは彼の優しさに身を委ねてそのまま眠ってしまった。
◇ ◇ ◇
翌朝、沼地の底から目覚めたフレイアは辺りを見渡した。ロスカは既に床を出たらしい。
かわりに、ベッドサイドの横にある小さなテーブルの上には手紙が置いてあった。
『フレイア
今日は外に出る。
無理をさせてしまったので、く休むように。
一応、肌を拭ったが湯浴みをした方が良いだろう。また夜に。
ロスカ』
その手紙の通り、フレイアは身につけていなかった筈の肌着を身につけている。
眠ってしまった後にロスカが肌を拭っては着せてくれたらしい。純潔は間違いなく失ったのに、どこか夢見心地だった。
「お妃様、よく眠られたようで。湯の準備をする間に昼食をお持ちします」
外に控えていた侍女長の娘に声をかければ、ようやく、彼女はぼんやりとしていた頭が晴れた。
なんてこと、と彼女はぎょっとした。
朝にしては随分明るいと思ったが、まさかもう昼だったとは。
肌着で食事を取るのは憚られる為、フレイアは比較的緩やかなドレスを身に付けた。締め付けのない、直線的な線のドレスである。
「陛下から、お妃様に無理をさせてはいけないと仰せつかっております。本日は雪もまた降りますし、城内でお過ごし頂けますようお願い申し上げます」
過保護が過ぎるのではないか、とフレイアは思った。
確かに腰も痛いし、下腹部には鈍い痛みがまだ残っている。でもいつも通り、過ごせるくらいである。馬には乗れないが。
運ばれた食事は、簡単なスープとパン、それからヤギのチーズだけであった。パンを手に取り、千切った所で彼女はある感覚を思い出した。
ロスカに爪を立てた感覚である。
最初は痛くて力を入れてしまったのだが、次第に彼から与えられる熱にを堪える為に入れてしまった。多分、引っ掻き傷が残っているのではないか、と彼女は不安になった。
しかし、そんな不安も杞憂である。
政務を終えたロスカに尋ねれば、彼はこう答えたのだ。
「子猫の引っ掻き傷のようなものだ」
勿論、この言葉にフレイアが頬を赤らめたのは言うまでもない話である。
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