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第31話 国王様はお妃様の心臓が欲しい(2023.2.21一部修正)
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フレイアの指の感覚がロスカの唇に残っていた。
昨夜のやり取りは彼の胸に不思議な余韻を残したらしく、不安の四肢もそれに飲まれる形で静かに眠っている。
幼馴染の辺境伯の言葉で生まれた四肢だったが、ロスカは気がついた。彼はフレイアが純潔かどうかは気にしていなかった。
事実、彼は彼女との婚約が決まった際も、純潔かどうかの確認をさせる事を許さないと言っていた。
『国王様、なりません。お妃様になる女性に純潔かどうかも確認させないなんて』
過ぎた事だが、ロスカにとっては今思い出しても不愉快になる話である。
『彼女は以前婚約者がいたのですから。中には婚姻前に肌を合わせる女性がいます。医師を呼んで、牧師の元確認させる必要があるでしょう』
『国王である俺より先に、医師に足を広げさせろというのか?牧師にその姿を見せろと?牧師や医師に確認させて何になる?お前達は婚姻前に他の女に触らなかったのか?』
亡命生活によるものなのか。
ロスカは王族に纏わりつく習慣の多くを不愉快に思っていた。
元老院は彼らに噛み付く若き国王にも戸惑っていたし、国王の質問に答える事が出来なかった。
『俺は許さない。認めない。赤の他人に、お前達に何故フレイアが純潔かどうかを証明せねばならないのだ』
ロスカのはっきりとした、強い口調に元老院は言葉を失う。
けれども、彼らの中にも譲れないものがあるらしく、負けじとロスカに抗議を繰り返した。
『ならば、産婆ならよろしいでしょう。同じ女性ですから』
『人の話を聞いてないな、お前達は。俺は他人にフレイアの純潔かどうかを証明するつもりはない、と言っているんだ。この話は終わりだ。わかったか?』
返事のない元老院達にロスカは、机を指の関節で叩きながら再度尋ねる。わかったか?と。
元老院達は渋々、頷きフレイアの肌は医師にも牧師にも、勿論産婆にも見られていない。
フレイアの肌を知るのは湯浴みを手伝う僅かな侍女だけである。
しかし、自身の行いのせいで、妃を奇特な存在に見せる可能性もある、と臣下には言われたがロスカは聞く耳を持たなかった。
それ以上に他人が二人の秘め事に首を突っ込むのが許せなかったのだ。
『国の立て直しも終わっていない。夫婦の秘め事を憂慮する場合ではないだろ』
かくして、ロスカは父親の遺した置き土産を言い訳に王室の通例を破った。
勿論、彼は幼馴染の辺境伯の言葉を経ても、これを破って良かったと納得している。では、彼にとっての問題は、不安の四肢の行方は?本当は不安の四肢を支える心臓が、答えが見えているのにロスカは知らないふりをしていた。
回された書類の文字を掴みながら、ロスカはぼんやりと考えた。フレイアが、以前の婚約者に恋心を抱いていたら、と思っていたのだ。彼が亡くなり、そのショックで声を失ったのかもしれない、と。
真実はわからないが、ロスカはそれを想像するだけで嫌な気持ちになった。
自分の想い人の心の中には他の男がいるのだ。そんなの、彼は堪えれなかった。フレイアの心の中を自分だけで埋めて欲しい。
自分の心臓を渡しても構わないから、彼女の心臓が欲しい。ロスカはフレイアの胸の奥で輝く心臓が欲しくてたまらなかった。
頭の中がフレイアの髪色に染まっていく。その髪を掴んで、無理矢理にでもこちらを振り向かせたい。
振り向かせて、彼女の唇を奪ってしまいたかった。この間の夜の続きのように、唇を通して、自分の思いで溺れさせたい。
そんな強い気持ちが生まれてしまった。
いつの間にか、フレイアへの気持ちが強くなった事に彼は驚いた。
何せ、誰も恋について教えてくれなかったのだから、彼は恋心の持ち方がわからない。
昨夜のやり取りは彼の胸に不思議な余韻を残したらしく、不安の四肢もそれに飲まれる形で静かに眠っている。
幼馴染の辺境伯の言葉で生まれた四肢だったが、ロスカは気がついた。彼はフレイアが純潔かどうかは気にしていなかった。
事実、彼は彼女との婚約が決まった際も、純潔かどうかの確認をさせる事を許さないと言っていた。
『国王様、なりません。お妃様になる女性に純潔かどうかも確認させないなんて』
過ぎた事だが、ロスカにとっては今思い出しても不愉快になる話である。
『彼女は以前婚約者がいたのですから。中には婚姻前に肌を合わせる女性がいます。医師を呼んで、牧師の元確認させる必要があるでしょう』
『国王である俺より先に、医師に足を広げさせろというのか?牧師にその姿を見せろと?牧師や医師に確認させて何になる?お前達は婚姻前に他の女に触らなかったのか?』
亡命生活によるものなのか。
ロスカは王族に纏わりつく習慣の多くを不愉快に思っていた。
元老院は彼らに噛み付く若き国王にも戸惑っていたし、国王の質問に答える事が出来なかった。
『俺は許さない。認めない。赤の他人に、お前達に何故フレイアが純潔かどうかを証明せねばならないのだ』
ロスカのはっきりとした、強い口調に元老院は言葉を失う。
けれども、彼らの中にも譲れないものがあるらしく、負けじとロスカに抗議を繰り返した。
『ならば、産婆ならよろしいでしょう。同じ女性ですから』
『人の話を聞いてないな、お前達は。俺は他人にフレイアの純潔かどうかを証明するつもりはない、と言っているんだ。この話は終わりだ。わかったか?』
返事のない元老院達にロスカは、机を指の関節で叩きながら再度尋ねる。わかったか?と。
元老院達は渋々、頷きフレイアの肌は医師にも牧師にも、勿論産婆にも見られていない。
フレイアの肌を知るのは湯浴みを手伝う僅かな侍女だけである。
しかし、自身の行いのせいで、妃を奇特な存在に見せる可能性もある、と臣下には言われたがロスカは聞く耳を持たなかった。
それ以上に他人が二人の秘め事に首を突っ込むのが許せなかったのだ。
『国の立て直しも終わっていない。夫婦の秘め事を憂慮する場合ではないだろ』
かくして、ロスカは父親の遺した置き土産を言い訳に王室の通例を破った。
勿論、彼は幼馴染の辺境伯の言葉を経ても、これを破って良かったと納得している。では、彼にとっての問題は、不安の四肢の行方は?本当は不安の四肢を支える心臓が、答えが見えているのにロスカは知らないふりをしていた。
回された書類の文字を掴みながら、ロスカはぼんやりと考えた。フレイアが、以前の婚約者に恋心を抱いていたら、と思っていたのだ。彼が亡くなり、そのショックで声を失ったのかもしれない、と。
真実はわからないが、ロスカはそれを想像するだけで嫌な気持ちになった。
自分の想い人の心の中には他の男がいるのだ。そんなの、彼は堪えれなかった。フレイアの心の中を自分だけで埋めて欲しい。
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振り向かせて、彼女の唇を奪ってしまいたかった。この間の夜の続きのように、唇を通して、自分の思いで溺れさせたい。
そんな強い気持ちが生まれてしまった。
いつの間にか、フレイアへの気持ちが強くなった事に彼は驚いた。
何せ、誰も恋について教えてくれなかったのだから、彼は恋心の持ち方がわからない。
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