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ようこそミスカタ島へ~Welcome to MISUKATA Island~
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これは私の住んでいる時代のお話です。君の過ごしている時代より、先の話...。
暑い七月がやって来ました。暑がりな私は、体がアイスのように溶けてしまいそうです。もちろんそんなことはありませんが。でも夏は嫌いではありません。むしろ素敵な季節です。山に行くと川の水がとても気持ちいい。半袖の服を選び着るのもとても楽しい。悪い事ばかりではありません。探せばいいものも沢山あります。
...しかし、中には昔の辛い記憶を思い出す人もいます。
今から丁度二十二年前、五年間続いたある時代が終わりました。
「呪われ時代」
幼い頃、私は親からその話を聞きました。しかし、幼かった私には難しい話でした。分かったのは、死人と悲しみに暮れている人が大勢いた事だけ。この時代が終わった時期は七月の真夏だったそうです。呪われた時代が終わっても、その後の一年間は地獄のような毎日が続いてたと言っていました。
昔に比べると大分世界は落ち着いていき、大人達は昔より自然が多くなったと言っています。どうやら呪われた時代をきっかけに人口は減ったものの、環境改善する人が増えたとの事です。
そして、呪われた時代の間にある島が誕生しました。島の名は『ミスカタ島』。私の住んでいた日の国のすぐ近くにできました。今ではその島は、日の国のひとつとして任命されています。初めは誰一人住んでいませんでしが、今では大勢の人がこの島で暮らしています。(みんな個性的です。)
十六歳になった私は、縁あってこの島に住んでいます。住むことになったのは十三歳の頃。人の心が分かるように
なった時でした。いわゆるエスパーというものでしょうか?この力を抑え込むためにミスカタ島に来たと言ってもいいでしょう。しかし、本来の目的は別にあります。
いかに楽しめるか。それが、この世界に生まれて来た使命だと教わりました。私は自分を試すため、ミスカタ島へやってきたかもしれません。
━━━━━━━━━━━━━━━
夜中の二時五十五分。トランクを持った俺は、家の近くのバス停にいる。夜中の夏はまるで冷蔵庫の中みたいだ。肌寒い...、もっと着込んでおけばよかった。
そして三時丁度、約束のバスが来る時間になった。何故か周りが霧がかっていく。そして...
「...あれか」
霧の中で前照灯が見えた。右に首を傾けると、バスがこちらへと近づいてくるのが分かる。そのバスはボンネットバスと同じデザイン。ここで走っているのは見たことがない。
バス停の前に止まり、目の前でドアが開いた。俺は迷いなくバスに乗った。そのバスには運転席はない。全て客席だ。さらに、自分以外に客は誰もいない。俺は適当に入口のすぐ側の椅子に座ると、入口のドアが閉まり、バスは動き出した。
「これでミスカタ島へ...」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
願いが叶うといわれるミスカタ島。と言っても、俺には特別な願いはない。ただ家を出たかった。
大学を休んでいる引きこもりの俺に、親はいつも怒鳴ってばかり。それに大学だってつまらなかった。知らない事を知るために大学に来たはずだった...が、知っている事ばかり学ばされる。こんなつまらない所に居たくない。しかし、自分のやりたい事の知らないない俺はどうすればいいか分からず家にこもっていた。…大学に行きたくなくなったのは、それだけの理由ではないが...
そんな時、一通の手紙が届いた。それはミスカタ島への招待状。
「丁度いい、ここにずっといるよりは...」
そう思い、俺は今日の夜中家を出た。ミスカタ島へは簡単に行ける。しかしそれは、この招待状があればの話。
『午前三時、バス停にて。招待状をお持ちください。』
手紙の中に入ってた招待状であるメッセージカードの裏に書いてあった。そして、バスの絵も描いてある。最初はどのバス停に行くべきか分からなかった。調べたところでネットには島の写真しか出てこない。飛行機やフェリーを調べてもミスカタ島行きはなかった。答えはどこにもない。そのため俺は、どこでもいいからバス停へ行けばいいのではないかと考えた。(こんな単純でいいのか分からんが...)
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「まさか、本当にバスが来るとは…」
バスに揺られる中、俺は思った。半分疑っていたんだ。こんな都市伝説みたいな話、誰かのイタズラじゃないかと。
しかもあんな遠い場所、バスで行けるはずがない。しかし、この招待状の封筒と中に入っているメッセージカード…俺の知る限り、見たことも無い素材だ。半透明でガラスのようにツルツル。一体どうしたらこんなものが...?
霧が晴れてきた。まだ十分しか経っていないというのにいつの間にかバスは知らない街を走っている。まさか、ここがミスカタ島?
バスが止まりドアが開いた。バスを降りた俺の目の前にあったのは、ヨーロッパのような街並み。まだ朝早いせいか人は歩いていない。いや、そもそも人はいるのか?
だが、バス停にはミスカタ島東エリアと書いてある。確かにここはミスカタ島だ。
「?......!?」
突然目の前に...熊が現れた。しかもホテルマンの服を着ている...。
「…......」
俺は驚きのあまり、体が固まっていた。
「おはようございます。」
「しゃ、喋った...」
「ははっよく言われますその言葉。私はここに来た人を案内する担当のものです。ようこそミスカタ島へ。よければその荷物、お預かりしましょうか?」
「...はぃ...」
俺は恐る恐る、熊にトランクを渡した。俺のトランクを持ち歩いている…。何がどうなっているんだ?熊が二足歩行で喋って、その上荷物を運んで...バスが来てから不思議な事ばかりだ。
「こちらへ。」
俺は案内される通り、熊の後に着いて行った。てか...熊の後について行く人間って...
着いて行った先には...
「...これって...あの駅?」
本で見たことある。昔、東の京(みやこ)にあった駅と全く同じ建物だ。
「ここはホテルです。かつて日の国の京にあった駅と同じデザインにしたんですよ。素晴らしい建築物ですよね。建てた人は、知らない人にどうしてもこの素晴らしさを知ってほしいと思い造ったそうです。」
「...なぜ、ホテルに…?」
「この島には鉄道がありませんからね。大きな駅はないんです。しかし、どうしてもこのデザインの建築物を建てたいと言う人がいましてね。ホテルとしては少し不便な形をしていますが、廊下は自動式なので長時間歩く必要はございません。」
今の東の京にはない建物。本の挿し絵でしか見たことがない。場所は違うとはいえ、まさか見られるとは...
「さぁ、こちらへどうぞ。」
建物の中に入ると、そこはクラシックホテルと同じようなラウンジ。
「このまま部屋へ向かいます。招待状が鍵代わりになりますので。」
「招待状って...これの事か?」
ずっと手に持っていた手紙を見せた。
「はい。中に入っているメッセージカードが鍵になります。」
このホテルにチェックインはない。招待状を持っているものだけが泊まれるホテルだと熊のホテルマンは説明した。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「では、ごゆっくり。」
部屋に着き一人になった俺は、ベットの上に寝転がった。
冷静になった俺は思い出す...ミスカタ島からの招待状。夜中のボンネットバス。喋る熊。かつて東の京にあったはずの駅の建築物...有り得ない事ばかりだったが...不思議と悪くない。知らない事ばかりの方が俺には合っている。ここにいれば...
「...しかし、これからどうすればいい...」
メッセージカードの裏に、バスの案内以外の内容が書いてあった。
ホテルに一泊するか、このまま島に住むか...
俺の答えは決まっている。だがどうすればいいか分からない。どうしたらここに住むことができるんだ...?
━━━━━━━━━━━━━━━
ジリリリリリリ...!
現在は朝の六時。私が目覚まし時計を止める時間です。ベットからゆっくり起き上がり、右手を伸ばす。その先の目覚まし時計をガシャン!と押す。私にとって、一日の中では最も大変な作業です。朝は頭が回りませんから...
「...ん~よく寝た...」
ダメだと分かっていても目を擦ります。擦りすぎると失明するかもしれない...それを知ってでも私は擦ります。私の目を覚ますためには必要な事です。
カーテンを開け朝日を浴び、お日様パワーを私に。さらに、いつもお世話になっている私の部屋に。これが気持ちいい。心の癒しのひとつです。
階段を降りた先には、リビングとキッチンが一緒になっている部屋があります。お気に入りのレトロなスカイブルーの冷蔵庫を開け牛乳を取り出し、黄色い花柄のガラスコップに注ぎ入れます。そして、腰に手を当て一気に飲み干す!まろやかな風味、まろやか舌触り。目が覚めたばかりの朝と風呂上がりの時間、このまろやかさを私の体は求めてやまないのです。
「あ、そうだ。」
今朝はフレンチトーストを食べようと思い、昨日の晩からつけておいた事を思い出しました。恥ずかしながら私は料理が苦手なもので、簡単なものしか作れないのです。混ぜてつけて焼くだけ。美味しく簡単なフレンチトーストは私にとって救世主でございます。ついでに言うと、ホットケーキも救世主でございます。
再び冷蔵庫を開け、ボウルを取り出します。ボウルの中を覗くとクリーミーな黄色に染まった輪切りのフランスパンが現れました。これから焼くのが楽しみです。温めたフランスパンにバターを入れ全体に行き渡るようにします。食べる時このバターが香ばしくいい匂いがするんです...!パンを両面焼きます。昔はよく焦がしましたが、今では綺麗な焼き色をつけることができました。フレンチトーストとちぎったレタス、ミニトマトをお皿に乗せ、机へと運びます。ナイフとフォーク、さらにオレンジジュースを用意し、今日のモーニングメニューの完成です。
「いただきますっ」
手を合わせて感謝を伝えた私に、食べられる権利を得られました。「温かいうちにお食べ。」きっとフレンチトーストはそう言っています。ありがたく頂戴いたします!
「うんまぁ~...」
卵の香り、牛乳の香り、バターの香り...現在、私のお鼻はお花畑です。勿体ないことですが、口の中が香りでこもりっきりだといけません。オレンジジュースで口の中を洗い流します。
「ご馳走様でした。」
手を合わせ、卵を作ってくれた人、牛乳を作ってくれた人...あと諸々の人に感謝をしました。美味しい食べ物をありがとう存じますです...
服を着替え、店の準備をします。私の家は三階建て。一番下はお店になっております。私が営んでいるお店は「お守り屋」です。皆さんも是非遊びに来てくださいね。なんだか今日は一段とワクワクします。
「今日はどんなお客さんが来るんだろう?」
暑い七月がやって来ました。暑がりな私は、体がアイスのように溶けてしまいそうです。もちろんそんなことはありませんが。でも夏は嫌いではありません。むしろ素敵な季節です。山に行くと川の水がとても気持ちいい。半袖の服を選び着るのもとても楽しい。悪い事ばかりではありません。探せばいいものも沢山あります。
...しかし、中には昔の辛い記憶を思い出す人もいます。
今から丁度二十二年前、五年間続いたある時代が終わりました。
「呪われ時代」
幼い頃、私は親からその話を聞きました。しかし、幼かった私には難しい話でした。分かったのは、死人と悲しみに暮れている人が大勢いた事だけ。この時代が終わった時期は七月の真夏だったそうです。呪われた時代が終わっても、その後の一年間は地獄のような毎日が続いてたと言っていました。
昔に比べると大分世界は落ち着いていき、大人達は昔より自然が多くなったと言っています。どうやら呪われた時代をきっかけに人口は減ったものの、環境改善する人が増えたとの事です。
そして、呪われた時代の間にある島が誕生しました。島の名は『ミスカタ島』。私の住んでいた日の国のすぐ近くにできました。今ではその島は、日の国のひとつとして任命されています。初めは誰一人住んでいませんでしが、今では大勢の人がこの島で暮らしています。(みんな個性的です。)
十六歳になった私は、縁あってこの島に住んでいます。住むことになったのは十三歳の頃。人の心が分かるように
なった時でした。いわゆるエスパーというものでしょうか?この力を抑え込むためにミスカタ島に来たと言ってもいいでしょう。しかし、本来の目的は別にあります。
いかに楽しめるか。それが、この世界に生まれて来た使命だと教わりました。私は自分を試すため、ミスカタ島へやってきたかもしれません。
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夜中の二時五十五分。トランクを持った俺は、家の近くのバス停にいる。夜中の夏はまるで冷蔵庫の中みたいだ。肌寒い...、もっと着込んでおけばよかった。
そして三時丁度、約束のバスが来る時間になった。何故か周りが霧がかっていく。そして...
「...あれか」
霧の中で前照灯が見えた。右に首を傾けると、バスがこちらへと近づいてくるのが分かる。そのバスはボンネットバスと同じデザイン。ここで走っているのは見たことがない。
バス停の前に止まり、目の前でドアが開いた。俺は迷いなくバスに乗った。そのバスには運転席はない。全て客席だ。さらに、自分以外に客は誰もいない。俺は適当に入口のすぐ側の椅子に座ると、入口のドアが閉まり、バスは動き出した。
「これでミスカタ島へ...」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
願いが叶うといわれるミスカタ島。と言っても、俺には特別な願いはない。ただ家を出たかった。
大学を休んでいる引きこもりの俺に、親はいつも怒鳴ってばかり。それに大学だってつまらなかった。知らない事を知るために大学に来たはずだった...が、知っている事ばかり学ばされる。こんなつまらない所に居たくない。しかし、自分のやりたい事の知らないない俺はどうすればいいか分からず家にこもっていた。…大学に行きたくなくなったのは、それだけの理由ではないが...
そんな時、一通の手紙が届いた。それはミスカタ島への招待状。
「丁度いい、ここにずっといるよりは...」
そう思い、俺は今日の夜中家を出た。ミスカタ島へは簡単に行ける。しかしそれは、この招待状があればの話。
『午前三時、バス停にて。招待状をお持ちください。』
手紙の中に入ってた招待状であるメッセージカードの裏に書いてあった。そして、バスの絵も描いてある。最初はどのバス停に行くべきか分からなかった。調べたところでネットには島の写真しか出てこない。飛行機やフェリーを調べてもミスカタ島行きはなかった。答えはどこにもない。そのため俺は、どこでもいいからバス停へ行けばいいのではないかと考えた。(こんな単純でいいのか分からんが...)
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「まさか、本当にバスが来るとは…」
バスに揺られる中、俺は思った。半分疑っていたんだ。こんな都市伝説みたいな話、誰かのイタズラじゃないかと。
しかもあんな遠い場所、バスで行けるはずがない。しかし、この招待状の封筒と中に入っているメッセージカード…俺の知る限り、見たことも無い素材だ。半透明でガラスのようにツルツル。一体どうしたらこんなものが...?
霧が晴れてきた。まだ十分しか経っていないというのにいつの間にかバスは知らない街を走っている。まさか、ここがミスカタ島?
バスが止まりドアが開いた。バスを降りた俺の目の前にあったのは、ヨーロッパのような街並み。まだ朝早いせいか人は歩いていない。いや、そもそも人はいるのか?
だが、バス停にはミスカタ島東エリアと書いてある。確かにここはミスカタ島だ。
「?......!?」
突然目の前に...熊が現れた。しかもホテルマンの服を着ている...。
「…......」
俺は驚きのあまり、体が固まっていた。
「おはようございます。」
「しゃ、喋った...」
「ははっよく言われますその言葉。私はここに来た人を案内する担当のものです。ようこそミスカタ島へ。よければその荷物、お預かりしましょうか?」
「...はぃ...」
俺は恐る恐る、熊にトランクを渡した。俺のトランクを持ち歩いている…。何がどうなっているんだ?熊が二足歩行で喋って、その上荷物を運んで...バスが来てから不思議な事ばかりだ。
「こちらへ。」
俺は案内される通り、熊の後に着いて行った。てか...熊の後について行く人間って...
着いて行った先には...
「...これって...あの駅?」
本で見たことある。昔、東の京(みやこ)にあった駅と全く同じ建物だ。
「ここはホテルです。かつて日の国の京にあった駅と同じデザインにしたんですよ。素晴らしい建築物ですよね。建てた人は、知らない人にどうしてもこの素晴らしさを知ってほしいと思い造ったそうです。」
「...なぜ、ホテルに…?」
「この島には鉄道がありませんからね。大きな駅はないんです。しかし、どうしてもこのデザインの建築物を建てたいと言う人がいましてね。ホテルとしては少し不便な形をしていますが、廊下は自動式なので長時間歩く必要はございません。」
今の東の京にはない建物。本の挿し絵でしか見たことがない。場所は違うとはいえ、まさか見られるとは...
「さぁ、こちらへどうぞ。」
建物の中に入ると、そこはクラシックホテルと同じようなラウンジ。
「このまま部屋へ向かいます。招待状が鍵代わりになりますので。」
「招待状って...これの事か?」
ずっと手に持っていた手紙を見せた。
「はい。中に入っているメッセージカードが鍵になります。」
このホテルにチェックインはない。招待状を持っているものだけが泊まれるホテルだと熊のホテルマンは説明した。
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「では、ごゆっくり。」
部屋に着き一人になった俺は、ベットの上に寝転がった。
冷静になった俺は思い出す...ミスカタ島からの招待状。夜中のボンネットバス。喋る熊。かつて東の京にあったはずの駅の建築物...有り得ない事ばかりだったが...不思議と悪くない。知らない事ばかりの方が俺には合っている。ここにいれば...
「...しかし、これからどうすればいい...」
メッセージカードの裏に、バスの案内以外の内容が書いてあった。
ホテルに一泊するか、このまま島に住むか...
俺の答えは決まっている。だがどうすればいいか分からない。どうしたらここに住むことができるんだ...?
━━━━━━━━━━━━━━━
ジリリリリリリ...!
現在は朝の六時。私が目覚まし時計を止める時間です。ベットからゆっくり起き上がり、右手を伸ばす。その先の目覚まし時計をガシャン!と押す。私にとって、一日の中では最も大変な作業です。朝は頭が回りませんから...
「...ん~よく寝た...」
ダメだと分かっていても目を擦ります。擦りすぎると失明するかもしれない...それを知ってでも私は擦ります。私の目を覚ますためには必要な事です。
カーテンを開け朝日を浴び、お日様パワーを私に。さらに、いつもお世話になっている私の部屋に。これが気持ちいい。心の癒しのひとつです。
階段を降りた先には、リビングとキッチンが一緒になっている部屋があります。お気に入りのレトロなスカイブルーの冷蔵庫を開け牛乳を取り出し、黄色い花柄のガラスコップに注ぎ入れます。そして、腰に手を当て一気に飲み干す!まろやかな風味、まろやか舌触り。目が覚めたばかりの朝と風呂上がりの時間、このまろやかさを私の体は求めてやまないのです。
「あ、そうだ。」
今朝はフレンチトーストを食べようと思い、昨日の晩からつけておいた事を思い出しました。恥ずかしながら私は料理が苦手なもので、簡単なものしか作れないのです。混ぜてつけて焼くだけ。美味しく簡単なフレンチトーストは私にとって救世主でございます。ついでに言うと、ホットケーキも救世主でございます。
再び冷蔵庫を開け、ボウルを取り出します。ボウルの中を覗くとクリーミーな黄色に染まった輪切りのフランスパンが現れました。これから焼くのが楽しみです。温めたフランスパンにバターを入れ全体に行き渡るようにします。食べる時このバターが香ばしくいい匂いがするんです...!パンを両面焼きます。昔はよく焦がしましたが、今では綺麗な焼き色をつけることができました。フレンチトーストとちぎったレタス、ミニトマトをお皿に乗せ、机へと運びます。ナイフとフォーク、さらにオレンジジュースを用意し、今日のモーニングメニューの完成です。
「いただきますっ」
手を合わせて感謝を伝えた私に、食べられる権利を得られました。「温かいうちにお食べ。」きっとフレンチトーストはそう言っています。ありがたく頂戴いたします!
「うんまぁ~...」
卵の香り、牛乳の香り、バターの香り...現在、私のお鼻はお花畑です。勿体ないことですが、口の中が香りでこもりっきりだといけません。オレンジジュースで口の中を洗い流します。
「ご馳走様でした。」
手を合わせ、卵を作ってくれた人、牛乳を作ってくれた人...あと諸々の人に感謝をしました。美味しい食べ物をありがとう存じますです...
服を着替え、店の準備をします。私の家は三階建て。一番下はお店になっております。私が営んでいるお店は「お守り屋」です。皆さんも是非遊びに来てくださいね。なんだか今日は一段とワクワクします。
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