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最終話 どんな可能性にでも懸ける
しおりを挟む「散々私のことを苦しめたのは誰ですか! いろんな女に手を出して……。私の姉とまで……」
さめざめと泣き出すスザンネを見て信じたらしい人たちが、アーリアに視線を向けてきた。
「……違います! 事実無根ですから!」
アーリアは慌てて否定するも、辛そうに涙を流すスザンネより説得力はなさそうだった。
やれやれと諦めたように頭を振ると、フォンはついてきた護衛になにか指示を出したようだった。
こそこそと耳打ちをして、護衛が外へ出ていく。
「ベルーザ、あなたを公文書を偽造した罪で逮捕する!」
フォンが勢いよく宣言すると、同時にたくさんの衛兵たちがぞろぞろと大広間に駆け込んできた。
「何かの間違いよ! よくもそんな真似が出来たわね! ……スザンネ、すぐ戻ってくるわ!」
衛兵に両脇から支えられたベルーザは、フォンに向かって大声で叫ぶ。引き摺られるように進みながらスザンネを見つめる。
「スザンネ! スザンネ!」
母親に名前を呼ばれているのに、スザンネは何も知らないようなきょんとした表情。わなわなと震えると、両手で口元を抑えた。
「そ……、そんな! お母様が……っ」
あくまでもしらを切るつもりらしいスザンネに、フォンが歩み寄る。ビシッと人差し指を向けると低い声で言った。
「王族の私を大衆の前で侮辱するとはいい度胸だな……。私がいつアーリア様に近付いたのです? あなたも母親と同じだ! 連行してくれ!」
「王族がしたことを言えば罪になるのか! クズ野郎!」
「真実でないことを言いふらせば罪になる。私が本当に酷いことをしたなら、裁判でそう主張しろ!」
ベルーザを切り捨てれば助かると思っていたらしいスザンネは、目論見が外れてしまったようだ。
堂々としたフォンの態度は素晴らしかった。スザンネは最後までフォンやアーリアに恨み言を言いながら連行されていった。
アーリアは、パーティーに来た人々に頭を下げて謝りながら、お開きとなった。
「……申し訳ありませんでした」
人がいなくなった広い部屋でフォンは項垂れていた。だが、アーリアにはフォンがどうして人前でああいうことを言ったのか分かっていた。
「私に汚名を着せないために、わざとやったんですよね?」
微笑みながら言うと、フォンの顔色がぱーっと明るくなる。
「ありがとうございました、おかげさまで助かりました……! もしよろしければ、お友達になって頂けませんか?」
この前の返事の代わりに今度はアーリアから提案した。フォンは何度も頷くと、アーリアの表情も明るくなった。
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