甘やかされすぎた妹には興味ないそうです

もるだ

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6話 無理やりの発表

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「ようこそ、いらしてくださったんですね。嬉しいですわ」

 アーリアが一生懸命掃除した大広間には招待されてやってきた人々でいっぱいになっていた。スザンネは張り切って挨拶をしている。

「無駄なことしたらただじゃおかないから。……お前はただの添え物なんだよ」
 
 すれ違いざまにアーリアの耳元に顔を寄せたベルーザが、ニコニコとした表情を作りながら低い声で囁く。

 ベルーザ以外は、穏やかな雰囲気に包まれていて、和気あいあいとした楽しい時間が流れていた。

「……アーリア様」

 背後からした声に振り向くと、フォンの姿があった。先日の求婚が思い出されて頬が熱くなる。

「あら、ようこそ。楽しんでいって下さいね」

「はい……」

 フォンが何か言いたそうにしていると、いきなり照明が落ちた。辺りは真っ暗になって、驚いた人たちはざわざわと騒ぎ出す。

 丸いライトが大広間を駆け回り、最終的には一つの場所を照らし出した。光の中にはスザンネがいて、特設されたステージの中に立っている。

「今日は大切なご報告があり、皆様にはお集まりいただきました……」

 スザンネは緊張したように息を弾ませながら、キラキラと輝かせた瞳で隣を見つめた。なにかのサプライズだと気がついた来賓たちは拍手を響かせる。

 すると、光がひとつ増えた。

 丸いライトの中には、いつの間にか目の前からいなくなっていたらしいフォンの姿があった。不思議そうな顔で周囲をキョロキョロと見回している。

「……私たちは結婚しますっ!」

 盛大な拍手と歓声に包まれる。弾けるような笑顔のスザンネに反してフォンは冷たい表情だった。

 今何が起きているのかが分かってきたらしいフォンは、盛り上がってきた空気を打ち消すように大きく手を振る。

 スザンネが近付いてフォンを制止しようとするが、ふたりの様子がおかしいことは誰が見ても明白だった。

「もう正式に婚約した仲なのに!!」

「誤解だ! 間違ってる!」

 真剣な剣幕のフォンに圧倒されて、緊迫した空気感が漂いはじめた。状況が変わった会場内には明かりが戻った。

「私が結婚を申し込んだのはこの方ではない。……他にいる。それなのに、誰かに手を加えられてスザンネ様と結婚を約束したことになっています」

「嘘よこんなのっ!」

 悲壮感溢れるスザンネは、ベルーザに目をやった。ふたりはアイコンタクトを取ると周りにバレないようにうなずき合った。

 アーリアは長年の経験から、ふたりが何か企んでいるとお見通しだった。
 
「フォン殿下は嘘をついています……! こんなことが出来るなんて信じられないっ」

「な、なんだって?」


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