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4話 婚約破棄
しおりを挟む「もういいですわ、アルバート様。私が悪かったんですの……」
ずっと黙りこくっていたイザベラがか細い声でアルバート伯爵に告げた。マダムが関わってきた以上、レオニーのことを責めさせるのは得策ではないと思ったのだろう。
「君が悪い……? そんなわけあるか!」
「私の言葉が信じられないとおっしゃるの? このお嬢さんが転んだから私が助けたのです。そちらの方がぶつかってるのをこの目でしっかりと確認いたしました」
ひとり張り切るアルバート伯爵にマダムがぴしゃりと言い返してくれた。イザベラもそれに乗っかるようにして、アルバート伯爵をこの場から引き剥がそうとした。
「もういいですわ、行きましょう。私がぶつかったんですの。……それに、王太子殿下ももうすぐいらっしゃる頃よ」
「そんなの関係ない! イザベラに何かしたならここできちんと謝らせる!」
怒りで周りが見えなくなっているようで、アルバート伯爵は外へ連れ出そうとするイザベラの手を振り払った。
これ以上マダムをを巻き込むわけにはいかないと思ったレオニーは小さな声で、もう大丈夫だから離れていた方がいいことを伝えた。
それを見たアルバート伯爵は地団駄を踏みならして吠えるように叫んだ。
「こそこそと何を話してるんだ! イザベラを策に嵌めようとしたのが失敗して相談でもしてるのか? レオニー、お前を許さない!」
「……」
「……もういい! お前とは婚約破棄する!」
「……はい。分かりました」
呆れてクラクラして立っていられなさそうだ。どうしてこんな恥ずかしいことが出来るのだろう。
こんなところにいたくない。
レオニーはなるべく顔を見られないように俯くと、スカートの裾を軽く持ち上げて転ばないように気をつけながら、貴族らしからぬ大股で走った。
頭に血が上り、奥の方からズキズキとした疼痛が襲ってくる。
会場を抜けても足を止めずに突き進む。とにかく外の空気が吸いたかった。
青空が見えるとレオニーは大きく息を吸った。頭痛はどんどん酷くなり、立っているのが辛いほどだ。
どこかに腰を下ろそうと周りを見渡したとき、レオニーの視界がぐらりと傾いた。平衡感覚を失ってどっちが空だかわからなくなる。
自分の身体が地面に倒れた衝撃で失っていた意識を取り戻すと、レオニーは自分の周りが白く発光しているのを感じた。
身体が中から燃えるように熱くなっていく。電撃が走ったようにピリピリとした感覚が突き抜けていった。
「あれ? もうクラクラしない」
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