君に支配されたい

Yuki-Hana

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擬似支配

君を私に教えて(2)

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-ピンポーン-

ワンルームの呼び出し音がなる。
前日に彼が言っていたことは本当だったのだと、目覚めてまもない僕の頭が判断する。

「なんで本当に来てるんだよ。」
ゆきはあくびをしながら、インターホンに話しかける。
「え、約束したじゃん?」

昔、大学に入学したばかりの頃、自宅を教えたのが間違いだった。

「絶対遊園地なんか行かない。」

インターホンのモニターに、膨れっ面した理人の顔が映し出される。

「あーあ、そんなこと言っていいのかな?ゆきちゃんは子供の頃、色白美少年で、おんなっっ」
「おまえ、近所迷惑だろ。この声量バカ。あと頭もバカ。」
ゆきは、理人を玄関に招き入れて、口を両手で塞ぐ。

「ふふっありがとう。お礼に、着替え手伝ってあげようか?」

理人は満面の笑みで、ゆきの手首から、パジャマの袖に細い指先を差し入れる。

「この、最低セクハラ野郎。」
「いてっ」
ゆきのゲンコツが、理人の脳天に落ちる。

「はいはい、何もしませんよ。」
理人は両手を上に上げて、器用に靴を脱ぐ。

「ね、ここ座っていい?」
「はあ。いいよ。なんでそこだけ律儀なんだよ。」
理人はダイニングテーブルの椅子に座る。ゆきはポットでお湯を沸かして、紅茶を淹れる。淡い花が描かれたティーカップとソーサーで理人に差し出す。
「ゆきこそ、変なところ律儀。というか、育ち?」

ゆきは理人の言葉を無視して、ソファに横たわる。

「ええ、ゆきちゃーん。」

「うるさい。体だるいんだって。」
四六時中1人でシてるからとは言えない。

「ほらほら、ゆきちゃん、これを見よ。」
理人は嬉しそうに、パスを見せる。

「この魔法のチケットを使えば待ち時間ゼロ。そして…」

理人は人差し指に何かを引っ掛けて、くるくると回す。

「理人という、ドライバー付き。」
「うげぇ、俺の友達の愛が重い。」
「そうそう。逃げられないよ。」

ゆきはため息をついて、のろのろとソファから起き上がる。クローゼットを開けて、シャツとベージュのゆったりとしたジャケットに、やや艶のある麻のパンツを引っ張り出す。

「ゆきって気だるそうなのに、ちゃんとおしゃれだよな。」

「おしゃれ?昔教わったような、癖が抜けないだけ。」

「へー。」
理人はそれ以上詮索してこない。

「お前、ほんと不思議。」
「何が?」
理人はにへらと笑う。
「さあね。なんとなく。」
僕も、短く答えて、着替えを済ませる。

「さあ、夢の国へレッツゴー」

満面の笑みを浮かべた理人に手を引かれて、玄関から飛び出す。
晴天で、軽やかな風が吹く。

「めっちゃいい天気!」
理人は僕の手を引いたまま、大きく息を吸い込む。
「ははっ、確かにいい天気」

理人はゆきを横目でみて、微笑む。

本当にいい天気。
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