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擬似支配
離れたご主人様と(3)
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「ほんと、ゆきの笑いのつぼはよく分からないよな。」
理人は一定のリズムでキーボードを鳴らす。
レポートを手伝って欲しいと頼まれるが、いつもほとんど自分で書き上げてしまう。
ゆきはさっそく机に顔を突っ伏して昼寝をする事にした。
快楽よりも気だるさが勝り体内で震え続けるローターの刺激は、ただじんじんと鈍い痛みに似た感覚を与える。
無理に目を閉じる。少し冷たい風が心地良い。
「ピィピィロロ」
「母様、父様、この鳥を見てみたい。」
白銀の羽を持つ美しい鳥。
「いつかね。ゆき。」
「体が強くなったらな。」
類が温かいお茶を差し出す。見目の整ったティカップ。独特の苦い香りのするお茶を一口含む。
少年が手を差し出す。
すらりとして美しい指先。
僕の知らない世界を指し示し、僕はその手を握り返す。
「ねえ、外の世界はこんなに楽しい。冬になったら× × × ×を見に行こう。」
美しい思い出の中の彼の顔はどこか優しい笑顔で微笑んでいる。そんな気がした。
窓の外は雪がちらちらと舞い、とても寒かった。
パチパチと暖炉が軽やかにはぜる。
「父様。なんで。」
ピシッ--
ベッドにぬいつけられた足裏に短鞭が振り下ろされる。
「ひっ、とぉさま。」
ヒュン-
鞭がしなる音が背後で聞こえる。
美しい鳥の鳴き声が聞こえる。窓枠にちょこんと器用に止まって首を傾げる。
そして、パタパタと真っ白な羽を羽ばたかせて澄みきった空へと飛んで行く。
「ゆき~俺もういくからな。」
「は?お前、だ、れ?」
理人が呆れ顔で体を揺する。
「俺は天才化学者、遠坂理人。」
「万年彼女なしの理人だろ。」
またなと手を振りながら、理人は教室をあとにする。
理人は結局1人でレポートを書き上げて鼻歌を歌う。
午後の授業まであと30分。とても苦しい夢を見ていた気がする。
僕はちゃんと笑えていただろうか。
あれはとてつもなく昔のことなのに、今でも不意にどこにも無いはずの傷が痛み出す。
沢山の痛みで上書きされて、僕の形は作り直されたはずなのに、温かいお茶、温かい掌、美しい鳥、僕を連れ出す少年、鋭い痛み。どこにもいない僕。
「ブーブー」
スマホのバイブが鳴る。
ゆきは大きく息を吐き出して、見つかるはずのない金木犀に目を凝らす。
「はい。」
震える声を押し殺して、平静を装う。
「ゆき。」
穏やかな聡介の声が聞こえる。
温かい日のはずなのに冷たく震えていた手のひらが温もりを帯びる。
「ゆき。何かあった?」
「何もない。」
電話越しで僕の心の隅っこで陰るこの感情が伝わるはずがない。
「どうしたの?」
「どうもしないよ。今日は大学で講義受けて、お昼寝してた。」
ゆきはしらばっくれて、ゆったりと答える。
「ねえ、ゆき。私にちゃんと教えて?」
聡介の雰囲気が変わる。
「ちょっと、聡介、会社だろ?」
「ゆき、私の命令は?」
「っっっ。ちゃんと守っています。」
「良い子だね。じゃあ、今ゆきがどんな風に感じているか教えて?」
「後ろにローター入れて、前にコックリングつけてます。」
「うん、それで?」
「っっん」
「ほら、ちゃんと教えて?それとも今度、プレイルームでおしおきされたい?」
想像するとコックリングにペニスが締め付けられて痛む。
「あっん。ご主人様の声を聞くと、おかしっくっっ。さっきまでなんともなかったのに。」
「泣いてるの?ゆき。」
「……。」
「じゃあ、ゆき、コックリングをつけながら後ろ自分でいじって。」
ゆきはローターを入れたままのアナルに指を入れる。
「ううんっ」
「今何本入ってる?」
「っっまだ、1本です。」
「3本入るまで頑張ろうね。ほら、ゆきの好きな浅い場所触って?」
「ひっんん」
鈍い快感から、お腹の底から湧き上がる快感に変化する。
「ローターの振動を強くして、指もう1本入れて。」
聡介は、快感を拾い上げながら声を押し殺すゆきに容赦なく命令する。
「やぁんんっ」
「気持ちいいね。ゆき。」
「んんっっ」
「ゆきの本当の気持ち教えて?そうしたらご褒美あげる。」
「んんっな、に。」
僕にはもう、聡介の声しか聞こえない。もう痛くない。あれは過ぎ去った痛みだとはっきりと分かる。けれど、どこか悲しくて胸が締め付けられる。
「ひっくっっ、そーすけ、ぉねがい、イかせて。」
僕はなぜ、こんなことしか言えないのだろう。心の奥底で燻る感情は今僕の体を駆け巡る快楽と似ていた。
「いいよ。ゆき。イって。」
「んんっっ」
ゆきは聡介の命令で果てた。
「今度はちゃんときみの気持ちを教えてあげる。そして素直に言えるように調教してあげる。」
聡介の声が艶やかで、僕は絶頂に達した余韻のなか、ぼんやりとしていた。
理人は一定のリズムでキーボードを鳴らす。
レポートを手伝って欲しいと頼まれるが、いつもほとんど自分で書き上げてしまう。
ゆきはさっそく机に顔を突っ伏して昼寝をする事にした。
快楽よりも気だるさが勝り体内で震え続けるローターの刺激は、ただじんじんと鈍い痛みに似た感覚を与える。
無理に目を閉じる。少し冷たい風が心地良い。
「ピィピィロロ」
「母様、父様、この鳥を見てみたい。」
白銀の羽を持つ美しい鳥。
「いつかね。ゆき。」
「体が強くなったらな。」
類が温かいお茶を差し出す。見目の整ったティカップ。独特の苦い香りのするお茶を一口含む。
少年が手を差し出す。
すらりとして美しい指先。
僕の知らない世界を指し示し、僕はその手を握り返す。
「ねえ、外の世界はこんなに楽しい。冬になったら× × × ×を見に行こう。」
美しい思い出の中の彼の顔はどこか優しい笑顔で微笑んでいる。そんな気がした。
窓の外は雪がちらちらと舞い、とても寒かった。
パチパチと暖炉が軽やかにはぜる。
「父様。なんで。」
ピシッ--
ベッドにぬいつけられた足裏に短鞭が振り下ろされる。
「ひっ、とぉさま。」
ヒュン-
鞭がしなる音が背後で聞こえる。
美しい鳥の鳴き声が聞こえる。窓枠にちょこんと器用に止まって首を傾げる。
そして、パタパタと真っ白な羽を羽ばたかせて澄みきった空へと飛んで行く。
「ゆき~俺もういくからな。」
「は?お前、だ、れ?」
理人が呆れ顔で体を揺する。
「俺は天才化学者、遠坂理人。」
「万年彼女なしの理人だろ。」
またなと手を振りながら、理人は教室をあとにする。
理人は結局1人でレポートを書き上げて鼻歌を歌う。
午後の授業まであと30分。とても苦しい夢を見ていた気がする。
僕はちゃんと笑えていただろうか。
あれはとてつもなく昔のことなのに、今でも不意にどこにも無いはずの傷が痛み出す。
沢山の痛みで上書きされて、僕の形は作り直されたはずなのに、温かいお茶、温かい掌、美しい鳥、僕を連れ出す少年、鋭い痛み。どこにもいない僕。
「ブーブー」
スマホのバイブが鳴る。
ゆきは大きく息を吐き出して、見つかるはずのない金木犀に目を凝らす。
「はい。」
震える声を押し殺して、平静を装う。
「ゆき。」
穏やかな聡介の声が聞こえる。
温かい日のはずなのに冷たく震えていた手のひらが温もりを帯びる。
「ゆき。何かあった?」
「何もない。」
電話越しで僕の心の隅っこで陰るこの感情が伝わるはずがない。
「どうしたの?」
「どうもしないよ。今日は大学で講義受けて、お昼寝してた。」
ゆきはしらばっくれて、ゆったりと答える。
「ねえ、ゆき。私にちゃんと教えて?」
聡介の雰囲気が変わる。
「ちょっと、聡介、会社だろ?」
「ゆき、私の命令は?」
「っっっ。ちゃんと守っています。」
「良い子だね。じゃあ、今ゆきがどんな風に感じているか教えて?」
「後ろにローター入れて、前にコックリングつけてます。」
「うん、それで?」
「っっん」
「ほら、ちゃんと教えて?それとも今度、プレイルームでおしおきされたい?」
想像するとコックリングにペニスが締め付けられて痛む。
「あっん。ご主人様の声を聞くと、おかしっくっっ。さっきまでなんともなかったのに。」
「泣いてるの?ゆき。」
「……。」
「じゃあ、ゆき、コックリングをつけながら後ろ自分でいじって。」
ゆきはローターを入れたままのアナルに指を入れる。
「ううんっ」
「今何本入ってる?」
「っっまだ、1本です。」
「3本入るまで頑張ろうね。ほら、ゆきの好きな浅い場所触って?」
「ひっんん」
鈍い快感から、お腹の底から湧き上がる快感に変化する。
「ローターの振動を強くして、指もう1本入れて。」
聡介は、快感を拾い上げながら声を押し殺すゆきに容赦なく命令する。
「やぁんんっ」
「気持ちいいね。ゆき。」
「んんっっ」
「ゆきの本当の気持ち教えて?そうしたらご褒美あげる。」
「んんっな、に。」
僕にはもう、聡介の声しか聞こえない。もう痛くない。あれは過ぎ去った痛みだとはっきりと分かる。けれど、どこか悲しくて胸が締め付けられる。
「ひっくっっ、そーすけ、ぉねがい、イかせて。」
僕はなぜ、こんなことしか言えないのだろう。心の奥底で燻る感情は今僕の体を駆け巡る快楽と似ていた。
「いいよ。ゆき。イって。」
「んんっっ」
ゆきは聡介の命令で果てた。
「今度はちゃんときみの気持ちを教えてあげる。そして素直に言えるように調教してあげる。」
聡介の声が艶やかで、僕は絶頂に達した余韻のなか、ぼんやりとしていた。
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