君に支配されたい

擬似支配

離れたご主人様と(1)

理人が戻ってきて、水を差し出す。僕はそれを受け取る。
「ちゃんと水分取れよ？」
「ああ。」

生返事をする。トイレで食べ物を摂取するのは苦手だ。

弱い振動で僕をいじめ続けるローターに悶絶しながら、立ち上がる。

聡介に支配される前、僕は体も心もぼろぼろだった。
痛みや苦しみが僕をこの世界に繋ぎ止める唯一だった。

聡介による支配だってあの頃と大差ない。
行き過ぎた快楽。
痛みの強いおしおき。
でも何かが違う。聡介に支配されると満たされる。

静かだった廊下から人の足音や話し声が聞こえる。1限目の講義が始まる15分前。

この騒がしい世界は僕とは繋がっていなかった。それなのに、いつの間にか同級生たちの声が、足音が、現実味を帯びて聞こえるようになった。

理人の顔をみる。

「これで、貸し借りなしな。」

「ああ、ちょっとはましになったか？」

僕はずるい。
レポートなどでは精算しきれないほどのものを貰っておいて、こんなことを言うのだから。そして、今回介抱した事だと勘違いしている理人を放っておくのだから。

「理人、先講義室行っておいて。」

一時理人は怪訝な顔をして、1人で頷く。
「あ、大」

「いや、それ以上言うな。」

理人をトイレの個室から追い出して鍵を閉める。

「じゃ、ごゆっくり～」

理人が小学生のように楽しげに笑いながら歩き去っていく。

僕は彼のように無邪気ではない。

ローターが浅い位置を刺激して、我慢から解放されたペニスが軽く立ち上がる。

トイレの壁に手を付き、ローターを奥へと押し込む。

「っっん」

声を押し殺しながら、快楽を一つ一つ拾う。
裏筋、亀頭を手で擦りながら、ローターの振動を強くする。

「ふぅんっ」

昨日散々搾り取られたペニスでは中々射精できない。

「はぁぁ」

会陰を指の腹で撫でながら、亀頭と尿道口をぐりぐり弄る。

「んんっ」
やっとのことで射精した。

「はぁ、しんどい。」

快楽よりも疲労感が勝る。それでもアナルでローターが暴れれば、背中がむずむずするような、脳みそがじんと甘く痺れるような快感を拾ってしまう。

「毎日空になるまでイッて。」
聡介が妖艶に微笑む。

僕は落ちついたペニスにコックリングを装着する。

「イッンン」
睾丸がわずかに締め付けられる。

理人がくれた、騒がしく、穏やかで楽しい世界。そこで僕は快楽に耽る。楽しい世界だけでは僕の心は過去に囚われてしまうから。