正しい魔導書の使い方

嫁葉羽華流

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「マスター……心配です……」
 マスターがいつどこで他の魔術師……もしくは昨日倒し損ねた襲撃者にまたもや襲われていないか、私は心配だった。
 やっぱり、無理矢理にでもついて行った方がよかったのだろうか。
 それを今更になって後悔していた。
 それに、
「……うー……」
 私は寝たままごろごろと転がっていました。
 要するに、暇。すっごく暇。
 右にごろごろと。
 左にごろごろと。
 ごろごろ。ごろごろ。
 ……なんだか楽しくなってきた。
 調子に乗って私は更に転がり始めた。
  ごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろ……がんっ。
「――いったぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 痛い! 頭がすっごく痛い!
 マスターに本の角で叩かれるほどの痛みと同等の痛みが、私の頭頂部に襲いかかった。
「くぅあああああああ!」
 そしてそうやってまたごろごろと部屋の中を転げ回りました。その時になんだか体中に痛みが走ったような感じがしてまたごろごろ。
 やっと痛みが収まったと確認して、はっと立ち上がって部屋を見てみると……。
 机は割れ、椅子は根本からポッキリと折れ、いろんな棚が粉砕されていたし、ベットは足が全て折られていて……要するにこの部屋だけがすさまじい嵐にでも遭ったかのような惨状になっていました。そして……。
「なんか、本が全部びりびりに破けられてるんですけど……」
 ベットの下から見つけ出されたその本は、転がったショックで全てめちゃくちゃになっていました。
 ――なんだマスターも魔術について興味あったのですか。
 ――だとしたら、これはとても大事な物かもしれないですね。
 そう思い、ページを一枚ずつ復元していくと、色彩鮮やかに、女の私が見てもなまめかしい女の人の裸とか写ってました。
 ――な、何なんですか、これ。
 いつの時代でも男性は女性に何かしらの感情は持つ物なんでしょうか。
 復元された本を、私はしばらく眺めていました。
 …………。
 ちょ、ちょっとだけ……。
 ちょ、ちょっとだけ、覗いてみても、いいでしょうか……?
 い、いや! 待て私! これはマスターの部屋に置いてあった! ということは、マスターの持ち物に違いない。……はず。
 それを勝手に見てしまうとは、魔人の恥です! マスターの持ち物に勝手に触れるとは言語道断。
 あ……でも、最初にベットに潜り込んでたし……。
 そ、その時点でもう、いいですよね!? うん! 暇ですし。
 でもだからといってマスターが隠していた本を勝手に盗み見るのは……。
 ん? 盗み見る?
 その時私には一つの天才的な考えが頭をよぎりました。
「ばれなければ……万事オッケィ……デスか?」
 そうだ。マスターが帰ってくる前にこの部屋を元通りにして、そしてなおかつこの本が何もなかったかのようにしておけば……。
 私に対するアレも無くなりますし、おとがめも無し。
 すごいです。私天才でしょうか。
 そうと決まったら、早速この本を読むとしますか。
 そう思って私は目の前にある少しぐちゃぐちゃに復元された本を手にとって読もうとした、その時でした。
「んっ?」
 なんだか嫌な予感。
 マスターの身に何か起こったのでしょうか。
「マスター……」
 私はひとまず、マスターの様子を見に行くために、家を飛び出して行きました。
 部屋は後ですればいいと思って。
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