私を愛しすぎた殺人鬼

まぁ

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さきもと

さきもと

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ざわざわと人がごった返す駅の中、ベビーカーを引き片方の手で子供と手をつなぐ彼女の姿を見つける。

「おまたせしました。」

「急にごめんなさい。ありがとうございます。」

化粧で隠れてはいるが、腫れて広がった2重が痛々しく感じる。
私が声をかけたことで彼女の後ろに隠れた男の子にこんばんわ。とニコリと笑う。

「ここから歩いて5分位なのですが、タクシー乗ります?」

「いえ、大丈夫です。行くよ。こうちゃん。」

こうちゃんと呼ばれた子供が彼女の後ろからでてくる。ベビーカーを押しながら手をつなぐのも大変だろう。
ベビーカーを押すのは正直こわいから、しゃがんでこうちゃんと目線を合わせた。

「はじめまして。彩海です。こうちゃん?お姉さんと手繋いでくれる??」

1度、母である彼女の方をちらりと見たこうちゃんに彼女は、コクリと頷くと、釣られたようにこうちゃんも私にコクリと頷いた。
彼女の手から解け差し出された手を握り、歩幅を合わせ歩き出す。
彼女から口を開くことはなさそうなので、私はこうちゃんに話しかける。

「こうちゃんはご飯食べた?」

「まだー!」

「おー、ならいっぱい食べよう何が好き?」

「ハンバーグ!」

「いいねぇ。ならハンバーグ食べよう!」

凛の店にハンバーグあったっかなぁと不安になりながら、ちらりと彼女の方を見るとうつむき気味にもこうちゃんのことを見つめていた。

「お、ついたよー!こうちゃんここ押して。」

「うん!」

少し背伸びをして自動ドアのボタンを押す。
晩ごはん時でざわざわとした声が聞こえる店内からいらっしゃいませー。と声が聞こえる。

「あ、彩海さん!オーナーもうちょっと後で来られますが開けてます!どうぞ!」

この店の店長をしている凛の弟に案内され、奥にすすみ個室に入る。

「崎本さん。何飲みます?」

「あ、お茶で。」

「了解です。こうちゃんはなにのむ?」

「オレンジジュース!」

「了解!!」

お茶2つとオレンジジュースを頼み、彼女を見る。
まだ、おずおずと話しづらそうにしてる彼女に、ニコリと笑いかけた。

「まずは、ご飯選んでてください!遠慮しないで。同級生の店なんで無理言えますし。こうちゃんにハンバーグ入りのお子様ランチお願いしてきますね。のついでに、一服してくるんでご飯選んでて下さい。」

隣に座るこうちゃんの頭をなでて、個室を出る。
外に出て、タバコに火をつけると駐車場の方から小走りで金色の髪をお団子にまとめた凛がこちらに向かってきた。

「おー、今日はいきなりごめんね。ありがと。」

「全然!予約なかったからおけ。で、子連れの友達なんて珍しいね。」

「んー、なんか旦那に浮気されまくって大変みたい。」

「うわー。大変じゃん。けどそんな話子供の前でできなくない?」

「あ、ほんとだ。抜けてた。」

「隣の個室空いてるから私見ててあげる。」

「え、いいの。」

「こう見えて私も2児の母ですけど?」

凛は、高校卒業後18の時キャバクラで働いて2ヶ月でお客さんだった今の旦那とスピード婚し双子を産んだ。

「助かります。あとハンバーグ入りのお子様ランチつくって。」

「え、つくねしかない。」

「なんか違うの?」

「全然違うわ。」

タバコを灰皿に投げ、すぐ行くと言いながら厨房に向かった凛とわかれ、個室に戻る。
メニューを仲良さげに見ている二人をみて、心がいたんだ。
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