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さきもと
さきもと
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通路の電気はカチカチと点滅していて幽霊でも出そうな雰囲気だ。
使用禁止が貼られたエレベーターの前を通り過ぎ、階段をあがる。
3階につき、1部屋しかない扉を開けると錆びれたビルからは想像できないぐらいいいにおいと、大きなテディベアにお出迎えされた。
「しーちゃんおるかー。」
「いるー。来てー。」
問いかけに答えた声は想像とは違い低く、響いた。
慣れた様子で中に入る神成に続き、お邪魔します。と小さな声ではいる。
テディベアの後ろに広がっていただだっ広い部屋はピンクで覆われていて、少女趣味の人間なら一度は憧れたであろうお姫様をイメージさせるベッドまであった。
億に進むとそんな部屋には似合わない無機質なビルの扉。鍵を差し込み開けた神成の背中越しからフローラルないい香りがまた鼻をかすり、ピンクの壁と床、そこには似合わない大量のモニターとその前のソファに座った髪の長い大きな人物がひょいっと、背もたれに腹をあずけ手を広げ歓迎してきた。
「いらっしゃーい!あーちゃん連絡もなしに来るからすっぴんじゃない。はずかしい。」
「すっぴんでもべっぴんやでー。」
軽く受け流し、タバコに火をつけながら神成は壁によりかかる。
「彩海ちゃんはそちらにどーぞ!」
笑ってうさぎの灰皿が置かれた机と丸い椅子を指さされる。
「失礼します。」
座って、お茶お茶ーと小さな冷蔵庫からだした2lのペットボトルの紅茶を可愛いティーカップにそそぎ私の目の前におき、神成にはビールを投げつけていた。
「なんで俺はビールやねん。」
「あーちゃん使ったものは捨てなきゃだめだから、缶ビールしかなったのよねぇ。めんご!」
てへっと、首を傾げて手を合わせる彼に、ため息をつきながらもポケットから先程分解したままの私の携帯だったものを投げつる。
この二人は投げてものをやり取りするような仲間なのか...
「これねぇ。預かっていい?」
「もういらんやろ?」
私を見るふたりに、コクリと頭を立てに振って答えた。
正直何がなんだかわかってない。
早く説明をしてくれ、と目で神成に訴える。
「あぁ、えっとな、機械とかちょーいと得意でこいつには色々世話になってる俺のパートナーでつけられた盗聴器とかがどこで買われたかとか調べてもらおうと思ったんと、ここなら小山内は知らんやろからゆっくり話できるおもってなぁ。」
初対面の人の前で自分の話をしろというのか、と思い神成を睨む。
減らっと笑った顔がムカつく。
「大丈夫や、しーちゃんのこと知ってるやろ。静緒っつったら分かるか」
「しずお...って静緒くん?」
ぱっと、しーちゃんと呼ばれた男を見ると長い髪を前髪ごと一つに束ねてみせた。
その顔は私の知っている顔だった。
「え、静緒くんなんでここにってかなんで神成と?!ってか、え。なんでオネェにってか、小山内のこと...」
静緒くんは驚きすぎて、言葉にできていない私の横に座り、落ち着いて。と私の膝に手を置く。
「久しぶりにあった義理の弟がオカマになってたらそりゃびっくりするわよね。それに、紫輝のことは全部あーちゃんに聞いてるわ。ごめんなさいね。うちの愚兄が...本当に。」
小山内静緒、小山内紫輝の双子の弟で結婚式以来だ。
「びっくりした...静緒くんと神成はなんで?」
「それは「そんなことより、お前の話や。」
静緒の言葉を遮り、神成は私の前の机をバンッと叩いた。
「アンタの話も途中だった。」
「話してくれたら話したるわ。」
どうせ話すつもりだったし、と私はまた記憶を遡った。
使用禁止が貼られたエレベーターの前を通り過ぎ、階段をあがる。
3階につき、1部屋しかない扉を開けると錆びれたビルからは想像できないぐらいいいにおいと、大きなテディベアにお出迎えされた。
「しーちゃんおるかー。」
「いるー。来てー。」
問いかけに答えた声は想像とは違い低く、響いた。
慣れた様子で中に入る神成に続き、お邪魔します。と小さな声ではいる。
テディベアの後ろに広がっていただだっ広い部屋はピンクで覆われていて、少女趣味の人間なら一度は憧れたであろうお姫様をイメージさせるベッドまであった。
億に進むとそんな部屋には似合わない無機質なビルの扉。鍵を差し込み開けた神成の背中越しからフローラルないい香りがまた鼻をかすり、ピンクの壁と床、そこには似合わない大量のモニターとその前のソファに座った髪の長い大きな人物がひょいっと、背もたれに腹をあずけ手を広げ歓迎してきた。
「いらっしゃーい!あーちゃん連絡もなしに来るからすっぴんじゃない。はずかしい。」
「すっぴんでもべっぴんやでー。」
軽く受け流し、タバコに火をつけながら神成は壁によりかかる。
「彩海ちゃんはそちらにどーぞ!」
笑ってうさぎの灰皿が置かれた机と丸い椅子を指さされる。
「失礼します。」
座って、お茶お茶ーと小さな冷蔵庫からだした2lのペットボトルの紅茶を可愛いティーカップにそそぎ私の目の前におき、神成にはビールを投げつけていた。
「なんで俺はビールやねん。」
「あーちゃん使ったものは捨てなきゃだめだから、缶ビールしかなったのよねぇ。めんご!」
てへっと、首を傾げて手を合わせる彼に、ため息をつきながらもポケットから先程分解したままの私の携帯だったものを投げつる。
この二人は投げてものをやり取りするような仲間なのか...
「これねぇ。預かっていい?」
「もういらんやろ?」
私を見るふたりに、コクリと頭を立てに振って答えた。
正直何がなんだかわかってない。
早く説明をしてくれ、と目で神成に訴える。
「あぁ、えっとな、機械とかちょーいと得意でこいつには色々世話になってる俺のパートナーでつけられた盗聴器とかがどこで買われたかとか調べてもらおうと思ったんと、ここなら小山内は知らんやろからゆっくり話できるおもってなぁ。」
初対面の人の前で自分の話をしろというのか、と思い神成を睨む。
減らっと笑った顔がムカつく。
「大丈夫や、しーちゃんのこと知ってるやろ。静緒っつったら分かるか」
「しずお...って静緒くん?」
ぱっと、しーちゃんと呼ばれた男を見ると長い髪を前髪ごと一つに束ねてみせた。
その顔は私の知っている顔だった。
「え、静緒くんなんでここにってかなんで神成と?!ってか、え。なんでオネェにってか、小山内のこと...」
静緒くんは驚きすぎて、言葉にできていない私の横に座り、落ち着いて。と私の膝に手を置く。
「久しぶりにあった義理の弟がオカマになってたらそりゃびっくりするわよね。それに、紫輝のことは全部あーちゃんに聞いてるわ。ごめんなさいね。うちの愚兄が...本当に。」
小山内静緒、小山内紫輝の双子の弟で結婚式以来だ。
「びっくりした...静緒くんと神成はなんで?」
「それは「そんなことより、お前の話や。」
静緒の言葉を遮り、神成は私の前の机をバンッと叩いた。
「アンタの話も途中だった。」
「話してくれたら話したるわ。」
どうせ話すつもりだったし、と私はまた記憶を遡った。
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