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第壱章 旗の交わり
第什弐話 外交交渉団派遣準備
しおりを挟む皇暦2583年、一月一日の帝国外務省は日本国との正規接触を行おうとしていた。非正規接触を占守島の鎮守府が行い、情報をある程度入手する活動を日々行っているので外交交渉団形成はチュウバンバ帝国との時と比べ、比較的早く進んでいる。
「田中、噂の日本国に出張るらしいな。ちゃんと確かめに行ってこいよ。日本というのが本当かどうかをな」
皇国において日本国の噂は素早く全国へと広がっていた。
運がよいのか社団法人日本映像社の千島放送局が日本国の沖ノ鳥島転移を阿頼度山上空から目撃し、緊急速報として千島全土に流したのを皮切りに日映(社団法人日本映像社の略称)系列の放送局が放送。それを知った各民間放送局が各自慌てながら占守島へ記者を送り込み情報を収集し、放送することで話は政府中央と現地のみだったのが全国規模へと広がったのである。
その過程で憶測が真実として広がったり、それにさらにひれがついたりと報道からの憶測による噂がさらに憶測による噂を呼ぶ事態へと展開され、田中のような者が出てきたのである。
皇国人の思想において、日本というのは至尊とまではいかないが、結構重要なところに位置する言葉である。それにもかかわらず、何故人々は
「日本を名乗るなんて!不敬だ!!」
となっていないのか。理由は意外と簡単で、その称号を持つ今上陛下が玉音放送にて
「気にしないで」
と発したからである。
多くの閣僚、官僚はその対応に頭を悩まし、行動理由を推測しようとするがわかることはついぞ無かった。
「本当かどうかと見てきなと言われても、返答に困るよ。僕は確かに外交官だから状況を見に行くことができるかもしれないけれど、もしかしたら待機を命じられるかもしれないし、箝口令が敷かれるかもしれない。確約はできないけれど努力はするよ」
「本当か。ありがとう。田村、感謝するよ」
田中はそう言うと喜んで作業に戻った。
「相変わらずだね。田田二人組は」
「課長、仕事はちゃんと進んでいますよ。随行員は今のところ28人までに絞れていますよ」
今回の外交交渉団は定員計54名。その中で田村が担当して絞っているのは内情調査のための者で、表向き随行員としている者である。田村はどうしても仕事を減らそうと工夫をするきらいがある。だから課長は上司として勤務態度を確認しにきた。
「ともかく頑張ってくれたまえよ。知っていると思うが陛下も今回の派遣には期待している。心もって取りかかるように」
課長は去って行った。
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一月二日公示 外交交渉団(日本行)
本交渉団ハ日本国ヘノ派遣トシ、定員54名トス。以下団員トス。
特命全権大使
・百田直美
副使
・日比谷萌永
・糊巻荒夫
・回滋野人々
・八木希典
一等書記官
・田辺大一
・何礼豊
・福也源一郎
二等書記官
・渡辺共基
・小松済次
・林藤三郎
・長野敬二郎
三等書記官
・川路廣同
...........
トス。
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