大和日本連合

秋田川幸政

文字の大きさ
上 下
12 / 13
第壱章 旗の交わり

第什弐話 外交交渉団派遣準備

しおりを挟む

 皇暦2583年、一月一日の帝国外務省は日本国との正規接触を行おうとしていた。非正規接触を占守島の鎮守府が行い、情報をある程度入手する活動を日々行っているので外交交渉団形成はチュウバンバ帝国との時と比べ、比較的早く進んでいる。



「田中、噂の日本国に出張るらしいな。ちゃんと確かめに行ってこいよ。日本というのが本当かどうかをな」



 皇国において日本国の噂は素早く全国へと広がっていた。

 運がよいのか社団法人日本映像社の千島放送局が日本国の沖ノ鳥島転移を阿頼度山上空から目撃し、緊急速報として千島全土に流したのを皮切りに日映(社団法人日本映像社の略称)系列の放送局が放送。それを知った各民間放送局が各自慌てながら占守島へ記者を送り込み情報を収集し、放送することで話は政府中央と現地のみだったのが全国規模へと広がったのである。

 その過程で憶測が真実として広がったり、それにさらにひれがついたりと報道からの憶測による噂がさらに憶測による噂を呼ぶ事態へと展開され、田中のような者が出てきたのである。

 皇国人の思想において、日本というのは至尊とまではいかないが、結構重要なところに位置する言葉である。それにもかかわらず、何故人々は

「日本を名乗るなんて!不敬だ!!」

となっていないのか。理由は意外と簡単で、その称号を持つ今上陛下が玉音放送にて

「気にしないで」

と発したからである。

 多くの閣僚、官僚はその対応に頭を悩まし、行動理由を推測しようとするがわかることはついぞ無かった。



「本当かどうかと見てきなと言われても、返答に困るよ。僕は確かに外交官だから状況を見に行くことができるかもしれないけれど、もしかしたら待機を命じられるかもしれないし、箝口令が敷かれるかもしれない。確約はできないけれど努力はするよ」

「本当か。ありがとう。田村、感謝するよ」



 田中はそう言うと喜んで作業に戻った。



「相変わらずだね。田田二人組は」

「課長、仕事はちゃんと進んでいますよ。随行員は今のところ28人までに絞れていますよ」



 今回の外交交渉団は定員計54名。その中で田村が担当して絞っているのは内情調査のための者で、表向き随行員としている者である。田村はどうしても仕事を減らそうと工夫をするきらいがある。だから課長は上司として勤務態度を確認しにきた。



「ともかく頑張ってくれたまえよ。知っていると思うが陛下も今回の派遣には期待している。心もって取りかかるように」



 課長は去って行った。



------------------------------



 一月二日公示 外交交渉団(日本行)

 本交渉団ハ日本国ヘノ派遣トシ、定員54名トス。以下団員トス。

特命全権大使

・百田直美

副使

・日比谷萌永

・糊巻荒夫

・回滋野人々

・八木希典

一等書記官

・田辺大一

・何礼豊

・福也源一郎

二等書記官 

・渡辺共基

・小松済次

・林藤三郎

・長野敬二郎

三等書記官

・川路廣同

 ...........

トス。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

悪役令嬢にざまぁされた王子のその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。 その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。 そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。 マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。 人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。

「あなたの好きなひとを盗るつもりなんてなかった。どうか許して」と親友に謝られたけど、その男性は私の好きなひとではありません。まあいっか。

石河 翠
恋愛
真面目が取り柄のハリエットには、同い年の従姉妹エミリーがいる。母親同士の仲が悪く、二人は何かにつけ比較されてきた。 ある日招待されたお茶会にて、ハリエットは突然エミリーから謝られる。なんとエミリーは、ハリエットの好きなひとを盗ってしまったのだという。エミリーの母親は、ハリエットを出し抜けてご機嫌の様子。 ところが、紹介された男性はハリエットの好きなひととは全くの別人。しかもエミリーは勘違いしているわけではないらしい。そこでハリエットは伯母の誤解を解かないまま、エミリーの結婚式への出席を希望し……。 母親の束縛から逃れて初恋を叶えるしたたかなヒロインと恋人を溺愛する腹黒ヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:23852097)をお借りしております。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

超文明日本

点P
ファンタジー
2030年の日本は、憲法改正により国防軍を保有していた。海軍は艦名を漢字表記に変更し、正規空母、原子力潜水艦を保有した。空軍はステルス爆撃機を保有。さらにアメリカからの要求で核兵器も保有していた。世界で1、2を争うほどの軍事力を有する。 そんな日本はある日、列島全域が突如として謎の光に包まれる。光が消えると他国と連絡が取れなくなっていた。 異世界転移ネタなんて何番煎じかわかりませんがとりあえず書きます。この話はフィクションです。実在の人物、団体、地名等とは一切関係ありません。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【完結】「心に決めた人がいる」と旦那様は言った

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
「俺にはずっと心に決めた人がいる。俺が貴方を愛することはない。貴女はその人を迎え入れることさえ許してくれればそれで良いのです。」 そう言われて愛のない結婚をしたスーザン。 彼女にはかつて愛した人との思い出があった・・・ 産業革命後のイギリスをモデルにした架空の国が舞台です。貴族制度など独自の設定があります。 ---- 初めて書いた小説で初めての投稿で沢山の方に読んでいただき驚いています。 終わり方が納得できない!という方が多かったのでエピローグを追加します。 お読みいただきありがとうございます。

結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください

シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。 国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。 溺愛する女性がいるとの噂も! それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。 それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから! そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー 最後まで書きあがっていますので、随時更新します。 表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。

処理中です...