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第三章
04
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「もぉ!」
私は声をあげる。モヤモヤした気持ち悪い考えを吹き飛ばしたくて。のんびり暮らすって目標とは違ってくるけど、日本にいた時とは確実に違う道なんだ。それにスローライフだって諦める必要はない。やればできるはず。
私の声に驚いたのか、モンスターたちが、恐る恐るといった声で「サワ様?」と声をあげる。
「ごめん、大丈夫、ここから皆を逃がす」
「どうするのですか?」
スーがすぐさま反応する。
「私が捜索している冒険者達を攪乱して、時間を稼ぐから、みんな逃げて、街とは反対方向がいいかな、そこはスーに任せる」
「はい!」
緊張からか、スーの体が小刻みに揺れて返事も少し震えていた。私は屈んで、スーに目線を合わせた。
「しっかりして、スーがリーダーとして、皆を誘導するんだよ」
私はスーにそう言った後、モンスターたちに向けて言葉を発する。
「今からスーがリーダーだから、スーについて行って!」
モンスターたちは頷く。ここに来て、そいつがリーダーなんて嫌だとか言うやつがいなくてよかった。さすが穏健派というか、自己主張激しめなのはいないらしい。悪く言えば引っ込み思案。
「今から、あなたの姿を人型に変える」
「え?! 人型?!」
スーが驚いたように体を震わせた。
「不安もあるかもしれないけど、今はそっちの方が都合がいい、簡単に言うと、逃げてる最中に冒険者……人間に遭遇したら、人型を利用すれば、切り抜けやすい」
「……分かりました」
意を決した様子のスー。私は「よし」と微笑んでから、スーの頭に手を乗せる。妖創術を応用して、スーの体に妖力を混ぜ込んで、形を変える。今初めてやったから、上手くいくか心配だったけど、スーはキチンと人の姿になった。見た目は女の子とも男の子とも言える美形で中性的な子供の姿。髪は黒色になってしまった。街中で見た子供をイメージしたはずが、日本人の子供が、この世界の子供の服を着ているような感じになってしまった。
「しょうがない」
とりあえず、上手くいったとは言い切れないが、人型にはできた。たぶん相手が人間や他のモンスターだったら、変化に耐えられず、死んじゃうだろうな。スライムという軟体のモンスターだからできる事だろう。
「すごい、人型です!」
スーが驚いてあげた声にリーヴェが反応する。
「あれ、言葉が分かるわ」
「言葉を喋れないと、もしもの時困るからね」
言葉を発する器官をちゃんと作った。これはもう職人技である。
「もう時間がない、いろいろ気になると思うけど、まずは逃げて」
私は興味津々で、自分の体を触ったり、動かしたりしているスーに、そう声をかける。
「あっ、すみません」
照れたようにスーが笑って言った。表情もちゃんと動かせるようでよかった。
私は声をあげる。モヤモヤした気持ち悪い考えを吹き飛ばしたくて。のんびり暮らすって目標とは違ってくるけど、日本にいた時とは確実に違う道なんだ。それにスローライフだって諦める必要はない。やればできるはず。
私の声に驚いたのか、モンスターたちが、恐る恐るといった声で「サワ様?」と声をあげる。
「ごめん、大丈夫、ここから皆を逃がす」
「どうするのですか?」
スーがすぐさま反応する。
「私が捜索している冒険者達を攪乱して、時間を稼ぐから、みんな逃げて、街とは反対方向がいいかな、そこはスーに任せる」
「はい!」
緊張からか、スーの体が小刻みに揺れて返事も少し震えていた。私は屈んで、スーに目線を合わせた。
「しっかりして、スーがリーダーとして、皆を誘導するんだよ」
私はスーにそう言った後、モンスターたちに向けて言葉を発する。
「今からスーがリーダーだから、スーについて行って!」
モンスターたちは頷く。ここに来て、そいつがリーダーなんて嫌だとか言うやつがいなくてよかった。さすが穏健派というか、自己主張激しめなのはいないらしい。悪く言えば引っ込み思案。
「今から、あなたの姿を人型に変える」
「え?! 人型?!」
スーが驚いたように体を震わせた。
「不安もあるかもしれないけど、今はそっちの方が都合がいい、簡単に言うと、逃げてる最中に冒険者……人間に遭遇したら、人型を利用すれば、切り抜けやすい」
「……分かりました」
意を決した様子のスー。私は「よし」と微笑んでから、スーの頭に手を乗せる。妖創術を応用して、スーの体に妖力を混ぜ込んで、形を変える。今初めてやったから、上手くいくか心配だったけど、スーはキチンと人の姿になった。見た目は女の子とも男の子とも言える美形で中性的な子供の姿。髪は黒色になってしまった。街中で見た子供をイメージしたはずが、日本人の子供が、この世界の子供の服を着ているような感じになってしまった。
「しょうがない」
とりあえず、上手くいったとは言い切れないが、人型にはできた。たぶん相手が人間や他のモンスターだったら、変化に耐えられず、死んじゃうだろうな。スライムという軟体のモンスターだからできる事だろう。
「すごい、人型です!」
スーが驚いてあげた声にリーヴェが反応する。
「あれ、言葉が分かるわ」
「言葉を喋れないと、もしもの時困るからね」
言葉を発する器官をちゃんと作った。これはもう職人技である。
「もう時間がない、いろいろ気になると思うけど、まずは逃げて」
私は興味津々で、自分の体を触ったり、動かしたりしているスーに、そう声をかける。
「あっ、すみません」
照れたようにスーが笑って言った。表情もちゃんと動かせるようでよかった。
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