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第一章

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 私は転移術を使う事にした。というかすぐ使って、逃げればよかったのに、謎の恐怖に支配されて、頭が回っていなかった。
 転移術を使うと私の体が黒い物に覆われる。一瞬視界が真っ暗になった後、変わった景色が目に飛び込んできた。
「ふぅ」
 街の外に転移してきた私は、一息。それから、街に背を向けて歩き始める。いろいろあったけど、とりあえずは、言葉の問題は解消できた。街の場所も覚えたし。とは言っても、この街にはリーヴェが待ち構えていそうで、ちょっと怖い。
「いやでもなぁ、私だって同じようなもんだし」
 親近感を感じている。たぶん悪い子じゃないし。上手く付き合えれば、いい友達にはなれそうな気はしてる。支援者って感じで、あの子には自分の正体を明かすのは、ありかもしれない。それに人間の凄さを私は知っている。
「人間ってすごいんだよねぇ、美味しい物作るし、便利な物作るし……この世界の人間はどうなっていくか楽しみだ」
 人間と関わる事で、楽しさは格段に上がる。私はこれからの生活にウキウキしながら、元の目的である、爽やかな風が吹く小高い丘探しを再開した
 とりあえず、街の近くにはなさそうだからと思い、街から離れるように、歩いているけど、無意味に歩き回って、見つかるだろうか。地形的に少し高い方に行くべきか。すぐに見つかるとは思ってないし、適当に決めたくない。でももうそろそろ、おやつ時の時間だ。もうしばらく日が傾いたら、空が赤くなってくる。そうなったらすぐ夜だ。野宿は嫌だから、とりあえずの場所を決めるべきか。
「あれ?」
 無意味に歩き続けていると、スライムが集まっているのを見つける。何してるんだろう。よく見ると複数のスライムが一匹を囲んでいるようにも見える。
「イジメ……かな?」
 真ん中のスライムが、周りのスライムに、体当たりされている様に見えなくもない。弱すぎて、体当たりが体当たりらしくない。もしかしたら、じゃれあってるだけとも言える。
「違ったらごめん」
 私はそう謝ってから、風を起こし、スライムたちを吹き飛ばす。真ん中のスライムのみ、私の手元に落ちてくるように、風を調節した。
「よいしょ」
 上手くキャッチできる。
「イジメに見えたから助けたけど、違ったらごめんねぇ」
 私はキャッチしたスライムを地面に降ろす。心成しか、喜んでいる様に見えた。本当にイジメられていたみたいだ。勘違いじゃなかった。
「ありがとうございます!」
「おぉ、頭の中に声がする」
「僕たちみたいに、喋れないモンスターはこうやって、意思疎通をするんです、人間には波長が合わなくて、出来ないはずなんですが」
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