婚約破棄に追放って不幸がちょっと起こりすぎじゃない?!

高岩唯丑

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「あっ、あなたの婚約は破棄されたわよ」
「は?」
 昼食の席、姉カルナからそんな言葉が告げられて、私は頭が真っ白になった。
「あら、聞こえなかった? 婚約破棄よ」
 カルナは勝ち誇ったように笑顔を浮かべて、ねちっこい言葉の発し方で、同じ事を言っていた。思えば、この傲慢なカルナが、こういう事をしてくるのは、いくらでも予測できたのかもしれない。父を言いくるめ、領地の実権を握り、好き放題して、私腹を肥やしているこの姉なら。私は助けを求めるように、父へと視線を送る。父は私の視線から逃げた。目をそらし、うつむいて、何も言わない。母を亡くして、姉に言いくるめられ、ずっとあんな調子だった。
「それからね、あの人、あなたの元婚約者、私と結婚する事になったから」
「結……婚、何で! そうなるの!」
 元という言葉をことさら強調する。その嫌な態度に私はつい、魔力が体から漏れ出てしまった。一瞬、私は躊躇したけど、構うものかと、魔力を抑えるのをやめた。
「きゃー、兵士たちよー、この者を捕えてちょうだい、我が領主にクーデターを企てんとするものよ!」
 カルナが芝居かかった物言いでそう告げた。クーデター。その言葉に私は気付く。これは、カルナの策略だ。私の結婚を妬んで、血のつながった実の妹である私にまで、その毒牙をかけようとしている。私はすぐさま魔力を抑える。そんな意思はないと、訴えるために。
 兵士たちはとても動きが早かった。最初から決められていたかのように、私を即座に捕縛する。いや、きっと最初から、すべて指示されていたんだ。思いつきじゃない、計画的な。
 どうすれば。私は捕縛を振り払う事を考えた。私の魔法をもってすれば、それは難しくない。でもそれをする事で、カルナに私を殺す口実が出来てしまう気がした。正当防衛。命の危険を感じた。そう言えば通ってしまう。いやそう通すだろう。
「……なんだ、暴れないのね、計画が狂っちゃった」
 カルナが残念そうに、呟く。やはり、そういう事だ。私を殺す気だった。私はカルナを睨みつける。
「こわーい、そんな顔しないで、エルナ」
 勝ち誇ったような顔で、カルナが私の耳元に口を近づけた。そしてとても小さな声で呟く。
「目障りなのよ、あなた、良い男に恵まれて、魔法の天才と持てはやされて……早く消えて?」
「ッ!」
 体中を沸騰したかのような怒りが渦巻いた。そんな理由で。
「はははっ、じゃあ、そいつを追放して……どこか遠くの、とっても危険な場所へ捨ててきて」
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