玉の輿がしたいだけなのに!~毎度事件が起こる上に、興味のない平民魔法師団長から溺愛されるメイドの事件手帳~

高岩唯丑

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エキセントリック・メイドドリーム

エピローグ02

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「きっと、事件解決の褒美なのだよ! 僕は爵位授与で、ベルにはその場でどんな褒美が欲しいか聞くつもりとか!」
 アリーンのテンションが、どんどん上がっていく。というか事件解決くらいで爵位授与されるだろうか。褒美と言うのはありえそうだけど。
「これで僕もベルにふさわしい男になれるのだよ」
「い、いや爵位授与と決まった訳じゃ」
 決まった訳じゃない。決まった訳じゃないのに、胸が高鳴ってくる。いや、何で胸が高鳴るの。尻尾が動いてしまうし、耳もピコピコと動いてしまう。頭の中に変な考えが過る。やっとアリーンと……。寸前で私はその考えを振り払った。違う違う。ありえないから。
「これでついに僕が、ベルを玉の輿させてあげれるのだよ」
 アリーンが攻め時と考えたのか、そう言いながらふいに体を寄せてくる。
「寄るにゃ! ふしゃー」
 とりあえず威嚇してみるけど、アリーンには効いていないようだ。くそ。なら言葉で威嚇するまで。
「玉の輿候補は、他にもいますけど?!」
「ふむ、セブリアン様かね?」
 トールは結婚するから、セブリアンを狙うしかない。今後はセブリアン一筋で行く。するとアリーンが少し声のトーンを落として言った。
「セブリアン様は差別なんてしないと思うがね……ただ、おそらく人間しか妻にしないのだよ、しかもそれなりに身分の高い貴族のお嬢様」
 アリーンの言葉はたぶん当たっているだろうと、私は思う。差別的な意味合いでは決してなく、無用な騒動を起こさないために、きっとセブリアンの代はそうするしかないのだ。
「はぁ……」
 私はため息をつく。セブリアンは黙って国のために殉ずるだろう。自由に恋愛をする事もできない。私は少し心配になった。強すぎる王。いつか潰れてしまわないだろうか。トールが一緒に重荷を持ってくれればいいけど。
「……僕にしとけよ」
 不意に耳元で、吐息と共にそんな声が耳に届く。アリーンが囁いたらしかった。
「ふにゃぁ!」
 私はすぐさま後ろに飛び退いて、威嚇のポーズを見せた。
「ふむふむ、効果はかなり高いのだね」
 アリーンの視線は私の尻尾を捉えているらしかった。すぐさま尻尾を手で押さえる。
「ははっ、ベルは子供の頃から、わかりやすいのだよ、表情は澄ましているのだがね……僕を見て反応してくれるのが可愛くて、愛おしい」
 アリーンの言葉は、最後の方だけ小声で聞き取れなかった。聞き返そうと思ったけど、T字通路から出てきた人物がそれを遮ったのだ。
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