玉の輿がしたいだけなのに!~毎度事件が起こる上に、興味のない平民魔法師団長から溺愛されるメイドの事件手帳~

高岩唯丑

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エキセントリック・メイドドリーム

エピローグ01

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 それからエルラが提出した衣服からアンデストの血が見つかり、王様殺害の罪に加えてアンデスト殺害の罪で、エミラは捕縛された。死罪は免れないレベルの事をしたのだけど、これを王様になったセブリアンと宰相になったトールが、二人で各方面に頭を下げて回り何とか回避された。けどさすがに、お咎めなしはありえない。という事で初めて聞く様な名前の島へと流罪になった。でもそれで解決はしなかった。身分の高い高官たちが騒いだのだ。元々獣人族かもしれない身分の低い人間を、王族に入れるのは反対だったとか言い始めて。そういう考えが、差別を生んでいるのが分からないのか。
 そこでスカッとする事が起こった。トールがアリアンを妻にしたのだ。あの時勇気を出して、エミラが短剣を持っていると言ったアリアンだ。しかもアリアンは猫系獣人族にもかかわらず、側妻ではなく正妻に、だ。卑しい身分の獣人族は愛玩用というのが常だというのに、ちゃんと人間として扱ったのだ。高官たちのあごが外れたように口をあんぐりする姿を見て、爽快な気分になった。ざまぁ。
 でも悔しさもある。私だって猫系獣人族だ。私でもよかったんじゃないかな、なんて。あとから聞いた話によると、前からトールとアリアンは、妙に親しかったらしい。もしかしたら結構前から、そういう関係だったのか。トールは何か決意したようだった。宰相になったのも、アリアンを正妻にしたのも、そういう事なのかな。
「どうしたのだね?」
「別にぃ」
 アリーンに問いかけられて、私はそう答える。つれない態度をしたはずなのに、アリーンは少し嬉しそうに私を見ていた。
「なに、ジッと見て」
「いや……相変わらず可愛いのだよ、ベル」
「にゃっ、可愛いって……し、知ってるし」
 私は反応を抑えようと、お尻の方に手を回す。尻尾が動いてしまうのを、手で押さえるのだ。獣人族というのは厄介である。感情が尻尾に出やすい。いや、別に嬉しくないけど。アリーンに言われたから、尻尾が動いてしまっている訳じゃ、断じてないし。
「そっ、それより!」
 私は話題を変えるために、声を裏返してしまいながらそう声をあげて続ける。
「何の用だろう、私とアリーン、メイドと魔法師団長の組み合わせで呼び出しって、ありえない組み合わせでしょ」
 現在セブリアンに呼び出されて、私とアリーンのセットで、執務室に向かっている所だった。
「ふむ……もしかしたら、僕に爵位授与の内示かもしれないのだよ!」
 思いついたようにアリーンが言うと、小躍り気味に早足になる。
「いや、だったら私を呼ぶ意味が分からない」
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