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エキセントリック・メイドドリーム
解決編06
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この事は、昨日ベッドに寝ころんでいる時に気が付いた。そこからエミラが犯人ではないかと絞っていったのだ。私がエミラに視線を向けると、苦々しい表情を浮かべるだけだった。反論が思いつかないのだろう。私は構わずに続ける。
「次に行きましょう……アンデスト様が殺された件」
それを言った瞬間、思い出したように胸がズキリと痛んだ。やっぱりまだ、割り切れていない。言葉一つで思い出してしまって、ぶり返してくる。でも今は堪えないと。そうしているとアリーンが私に頷いて見せて、その場にいた人たちに向かって口を開いた。
「アンデスト様の殺害現場について、僕が少し復習しようかね、ベルばかりに活躍させられないのだよ」
私が持ち直すまで、アリーンは時間を稼いでくれるようだ。たぶん。
「アンデスト様は昨日の十五の刻あたりに殺害された、凶器は両刃の短剣、王の殺害に使用された凶器とは違う物だ……後からわかったのだがね、武器庫から一つ短剣が消えていた……アンデスト様の胸の骨は短剣によって貫通していた、さらに貫通時骨が折れたようで、おそらく覆いかぶさって、体重をかけて短剣を押し込んだのが原因ではと思われる、ちなみに短剣は刺さったままになっていた」
アリーンがトールの顔を見る。
「トール様はベルと一緒にいた、何をしていたのですかな?」
「……ベルがアップルパイを持ってきてくれて、それを一緒に食べていた」
アリーンの問いかけに、おずおずとトールが答える。
「羨ましい限り……これでトール様に犯行は出来ない」
アリーンが私に視線を送る。何かを訴える様な目だった。アップルパイを要求しているのだろうか。私は少し呆れて肩をすくめる。バカらしく思ったら、少し心が軽くなった。アリーンがセブリアンに視線を移す。
「セブリアン様は?」
問いかけられたセブリアンは、考えるように眉を寄せる。ここまで来たら手紙の件を言ってしまうべきか、と悩んでいるのかもしれない。決断したのか、セブリアンは口を開く。
「……手紙をもらって、南西にある庭園に行っていた」
「ほぉう、どのような内容の手紙で?」
アリーンがそう問いかけると、セブリアンは懐から手紙を取り出す。誰にも見つからない様に、持ち歩いていたらしい。
「犯人の手掛かりがあるから来てほしいと……私は誰にもその事を告げずに、一人で庭園まで行ってきた、誰も現れなかったが」
「ほぉ……なるほど、そういう事かね」
アリーンが不敵な笑みを浮かべる。エミラが犯人と名指しされた後、この手紙の存在を知れば、勘が良ければあるストーリーが思い浮かぶ。
「アリーン、ありがと、あとは私が」
私がそう言うとアリーンは一瞬残念そうにしてから笑みを浮かべて、芝居がかった礼をしながら二歩ほど後ろにさがる。本当に活躍したかっただけなんだろうか。少し呆れながら私は口を開いた。
「次に行きましょう……アンデスト様が殺された件」
それを言った瞬間、思い出したように胸がズキリと痛んだ。やっぱりまだ、割り切れていない。言葉一つで思い出してしまって、ぶり返してくる。でも今は堪えないと。そうしているとアリーンが私に頷いて見せて、その場にいた人たちに向かって口を開いた。
「アンデスト様の殺害現場について、僕が少し復習しようかね、ベルばかりに活躍させられないのだよ」
私が持ち直すまで、アリーンは時間を稼いでくれるようだ。たぶん。
「アンデスト様は昨日の十五の刻あたりに殺害された、凶器は両刃の短剣、王の殺害に使用された凶器とは違う物だ……後からわかったのだがね、武器庫から一つ短剣が消えていた……アンデスト様の胸の骨は短剣によって貫通していた、さらに貫通時骨が折れたようで、おそらく覆いかぶさって、体重をかけて短剣を押し込んだのが原因ではと思われる、ちなみに短剣は刺さったままになっていた」
アリーンがトールの顔を見る。
「トール様はベルと一緒にいた、何をしていたのですかな?」
「……ベルがアップルパイを持ってきてくれて、それを一緒に食べていた」
アリーンの問いかけに、おずおずとトールが答える。
「羨ましい限り……これでトール様に犯行は出来ない」
アリーンが私に視線を送る。何かを訴える様な目だった。アップルパイを要求しているのだろうか。私は少し呆れて肩をすくめる。バカらしく思ったら、少し心が軽くなった。アリーンがセブリアンに視線を移す。
「セブリアン様は?」
問いかけられたセブリアンは、考えるように眉を寄せる。ここまで来たら手紙の件を言ってしまうべきか、と悩んでいるのかもしれない。決断したのか、セブリアンは口を開く。
「……手紙をもらって、南西にある庭園に行っていた」
「ほぉう、どのような内容の手紙で?」
アリーンがそう問いかけると、セブリアンは懐から手紙を取り出す。誰にも見つからない様に、持ち歩いていたらしい。
「犯人の手掛かりがあるから来てほしいと……私は誰にもその事を告げずに、一人で庭園まで行ってきた、誰も現れなかったが」
「ほぉ……なるほど、そういう事かね」
アリーンが不敵な笑みを浮かべる。エミラが犯人と名指しされた後、この手紙の存在を知れば、勘が良ければあるストーリーが思い浮かぶ。
「アリーン、ありがと、あとは私が」
私がそう言うとアリーンは一瞬残念そうにしてから笑みを浮かべて、芝居がかった礼をしながら二歩ほど後ろにさがる。本当に活躍したかっただけなんだろうか。少し呆れながら私は口を開いた。
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