玉の輿がしたいだけなのに!~毎度事件が起こる上に、興味のない平民魔法師団長から溺愛されるメイドの事件手帳~

高岩唯丑

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エキセントリック・メイドドリーム

解決編04

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「まずは王様が殺害された時……どうやって殺害されたのか、トール様はなんて聞いてます?」
 突然の指名に、一瞬戸惑った顔をするトール。ややあっておずおずと口を開く。
「父上がうつ伏せで寝ている所に、犯人がベッドに膝をついて短剣を振り下ろした……と」
 トールの顔が少しだけ、眉をひそめる。殺害シーンを、思い浮かべてしまったのだろうか。しかもその犯人は母親であるエミラだと、先ほど指摘されたばかりだ。かなり嫌な想像だったかもしれない。トールに話を振ったのは失敗だったかも。
「たぶんほとんどの人がそうやって想像したか、人から聞いたと思います」
 私はアリーンを睨みつける。こいつがその話の元である。やっぱり怒りが、ぶり返してきてしまう。
「先ほどから何かね、なぜ睨むのかね?」
 本当にわからないという顔で、アリーンが首を傾げた。少しばかりイラッとしたけど、言いがかりに近いものがあるから、これ以上はやめておく。私はアリーンを無視して、話を続けた。
「その殺害方法は、たぶん間違っています」
 その場にいた人たちが、一斉にざわついた。思い込んでしまったら、そうそう別の可能性を考えない物だ。仕方がない。
「注目してもらいたのは傷跡です……凶器は片刃の短剣」
 私はみんなが想像する時間を作るために、少し間を置く。
「片刃の短剣はだいたいが、柄の刃がついている側が持ちやすい様に曲線を描いています……つまり、順手でも逆手でも、片刃の短剣を握れば、刃が外側、つまり自分に向いていない状態になります」
「それはそうだけど、でもそれがどう関わってくるんだい?」
 戸惑った様子で、トールが問いかけてくる。他の皆も同じように戸惑った様子で、まだ分かっていない。
「王様の傷跡は右肩の方を向いていました、そして、ベッドのしわがついていたのは右側面……短剣を自然な形で持ってベッドの右側面側から短剣を振り下ろしたら……刃は左肩の方を向きませんか?」
 皆がそのシーンを想像していたのだろう。一瞬沈黙が流れた後、その場にいる皆は目を見開いたり小さく声をあげたりする。俯いているエミラを除いて。
「確かにそうだ、どうして気付かなかった、そんな矛盾に」
 悔しそうに顔を歪ませるセブリアン。私はすかさずフォローを入れる。
「アリーン様のせいですので、お気になさらず」
「なぜ僕のせいなのだよ! 僕の一意見にすぎない、最終的にどの意見を信じるか自分が決める物だろう、思考停止していた証拠なのだよ」
 私はアリーンの頭をはたく。使用人も王子たちも王様が殺されて冷静ではなかったのだから、思考停止にもなる。抗議する様に頭を擦りながら、アリーンが私を睨む。私もアリーンを睨み返して、文句を言ってやろうとした所にエミラの声で遮られた。
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