24 / 40
エキセントリック・メイドドリーム
解決編01
しおりを挟む
翌朝、いつもの決まりの仕事を終えた私に、同僚のメイドが耳打ちをしてきた。
「なんか食堂で、騒ぎが起こってるらしいよ……セブリアン様が犯人じゃないかって感じの」
「え? 今?」
同僚のメイドが頷く。いま食堂では、王子たちとエミラが朝食をとっているはずだ。これでは犯人の思うつぼだ。セブリアンは今の時点で、最も得をする人物。犯人と名指しされたら、みんな納得してしまうだろう。そうなってはセブリアンが濡れ衣を着せられて、真犯人は逃げおおせてしまう。
「ちょっと行ってくる!」
「え? ちょっと!」
まだ仕事が残っているけど、それを投げ出して、私は食堂に急ぐ。後ろから同僚の咎める声が聞こえてくるけど、無視する。今はそれどころではない。ごめん。
私は、食堂の前までやってきた。普段は仕事とかでみんなバラバラに食事をとっているけど、葬儀中の食事は可能な限り家族でとるのが、王家の暗黙の了解らしい。関係者が全員集まるこのタイミングは、セブリアンを犯人と糾弾するのにはちょうど良かったのだろう。
「ベルも来たのかね」
騒ぎを聞きつけたらしいアリーンが、そんな事を言いながら近づいてくる。今日この場にはアリーンもいるべきだったから、呼ぶ手間が省けた。
「ちょうど良かった、アリーンも一緒に中に入って……私の話を聞いてもらいたいから」
私の言葉に、一瞬アリーンのマユが動いた気がした。
「……どういう事かね?」
「中で話す」
私は自分を抑えて、そう伝えた。分からないふりをしているのか。とりあえず中に入らない事には始まらない。私は扉を開け放って、食堂に入る。
中には使用人を含めて、セブリアン、トール、エミラがいた。全員が一斉にこちらに視線を送る。
「……ベル、アリーン」
セブリアンが少し苦しそうな声をあげながら、私達を見た。椅子から立ち上がって、少し後ずさっているような姿勢だ。机越しのその正面にはエミラが立ち上がって、セブリアンを指差している状態で止まっている。たぶん糾弾している所だったのだろう。その脇でトールが中腰になって、エミラを落ち着かせようとしているように見える。まさに、犯人を名指ししているシーンを切り取ったような場面。
まだ決定的証拠がない状態なのに、飛び込んでしまった。でもセブリアンが濡れ衣を着せられてしまうのを、黙って見ている事もできない。とっていってもセブリアンが無実かどうかも、決定的証拠がないと分からないのだけど。
私が固まってしまっていると、エミラが指差すのをやめて、微笑みながら私に近寄ってくる。
「なんか食堂で、騒ぎが起こってるらしいよ……セブリアン様が犯人じゃないかって感じの」
「え? 今?」
同僚のメイドが頷く。いま食堂では、王子たちとエミラが朝食をとっているはずだ。これでは犯人の思うつぼだ。セブリアンは今の時点で、最も得をする人物。犯人と名指しされたら、みんな納得してしまうだろう。そうなってはセブリアンが濡れ衣を着せられて、真犯人は逃げおおせてしまう。
「ちょっと行ってくる!」
「え? ちょっと!」
まだ仕事が残っているけど、それを投げ出して、私は食堂に急ぐ。後ろから同僚の咎める声が聞こえてくるけど、無視する。今はそれどころではない。ごめん。
私は、食堂の前までやってきた。普段は仕事とかでみんなバラバラに食事をとっているけど、葬儀中の食事は可能な限り家族でとるのが、王家の暗黙の了解らしい。関係者が全員集まるこのタイミングは、セブリアンを犯人と糾弾するのにはちょうど良かったのだろう。
「ベルも来たのかね」
騒ぎを聞きつけたらしいアリーンが、そんな事を言いながら近づいてくる。今日この場にはアリーンもいるべきだったから、呼ぶ手間が省けた。
「ちょうど良かった、アリーンも一緒に中に入って……私の話を聞いてもらいたいから」
私の言葉に、一瞬アリーンのマユが動いた気がした。
「……どういう事かね?」
「中で話す」
私は自分を抑えて、そう伝えた。分からないふりをしているのか。とりあえず中に入らない事には始まらない。私は扉を開け放って、食堂に入る。
中には使用人を含めて、セブリアン、トール、エミラがいた。全員が一斉にこちらに視線を送る。
「……ベル、アリーン」
セブリアンが少し苦しそうな声をあげながら、私達を見た。椅子から立ち上がって、少し後ずさっているような姿勢だ。机越しのその正面にはエミラが立ち上がって、セブリアンを指差している状態で止まっている。たぶん糾弾している所だったのだろう。その脇でトールが中腰になって、エミラを落ち着かせようとしているように見える。まさに、犯人を名指ししているシーンを切り取ったような場面。
まだ決定的証拠がない状態なのに、飛び込んでしまった。でもセブリアンが濡れ衣を着せられてしまうのを、黙って見ている事もできない。とっていってもセブリアンが無実かどうかも、決定的証拠がないと分からないのだけど。
私が固まってしまっていると、エミラが指差すのをやめて、微笑みながら私に近寄ってくる。
0
お気に入りに追加
190
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
悪役令嬢カテリーナでございます。
くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ……
気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。
どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。
40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。
ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。
40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
魅了の魔法を使っているのは義妹のほうでした・完
瀬名 翠
恋愛
”魅了の魔法”を使っている悪女として国外追放されるアンネリーゼ。実際は義妹・ビアンカのしわざであり、アンネリーゼは潔白であった。断罪後、親しくしていた、隣国・魔法王国出身の後輩に、声をかけられ、連れ去られ。
夢も叶えて恋も叶える、絶世の美女の話。
*五話でさくっと読めます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
愛のゆくえ【完結】
春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした
ですが、告白した私にあなたは言いました
「妹にしか思えない」
私は幼馴染みと婚約しました
それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか?
☆12時30分より1時間更新
(6月1日0時30分 完結)
こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね?
……違う?
とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。
他社でも公開
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
美人の偽聖女に真実の愛を見た王太子は、超デブス聖女と婚約破棄、今さら戻ってこいと言えずに国は滅ぶ
青の雀
恋愛
メープル国には二人の聖女候補がいるが、一人は超デブスな醜女、もう一人は見た目だけの超絶美人
世界旅行を続けていく中で、痩せて見違えるほどの美女に変身します。
デブスは本当の聖女で、美人は偽聖女
小国は栄え、大国は滅びる。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約破棄で命拾いした令嬢のお話 ~本当に助かりましたわ~
華音 楓
恋愛
シャルロット・フォン・ヴァーチュレストは婚約披露宴当日、謂れのない咎により結婚破棄を通達された。
突如襲い来る隣国からの8万の侵略軍。
襲撃を受ける元婚約者の領地。
ヴァーチュレスト家もまた存亡の危機に!!
そんな数奇な運命をたどる女性の物語。
いざ開幕!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる