玉の輿がしたいだけなのに!~毎度事件が起こる上に、興味のない平民魔法師団長から溺愛されるメイドの事件手帳~

高岩唯丑

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エキセントリック・メイドドリーム

解決編01

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 翌朝、いつもの決まりの仕事を終えた私に、同僚のメイドが耳打ちをしてきた。
「なんか食堂で、騒ぎが起こってるらしいよ……セブリアン様が犯人じゃないかって感じの」
「え? 今?」
 同僚のメイドが頷く。いま食堂では、王子たちとエミラが朝食をとっているはずだ。これでは犯人の思うつぼだ。セブリアンは今の時点で、最も得をする人物。犯人と名指しされたら、みんな納得してしまうだろう。そうなってはセブリアンが濡れ衣を着せられて、真犯人は逃げおおせてしまう。
「ちょっと行ってくる!」
「え? ちょっと!」
 まだ仕事が残っているけど、それを投げ出して、私は食堂に急ぐ。後ろから同僚の咎める声が聞こえてくるけど、無視する。今はそれどころではない。ごめん。

 私は、食堂の前までやってきた。普段は仕事とかでみんなバラバラに食事をとっているけど、葬儀中の食事は可能な限り家族でとるのが、王家の暗黙の了解らしい。関係者が全員集まるこのタイミングは、セブリアンを犯人と糾弾するのにはちょうど良かったのだろう。
「ベルも来たのかね」
 騒ぎを聞きつけたらしいアリーンが、そんな事を言いながら近づいてくる。今日この場にはアリーンもいるべきだったから、呼ぶ手間が省けた。
「ちょうど良かった、アリーンも一緒に中に入って……私の話を聞いてもらいたいから」
 私の言葉に、一瞬アリーンのマユが動いた気がした。
「……どういう事かね?」
「中で話す」
 私は自分を抑えて、そう伝えた。分からないふりをしているのか。とりあえず中に入らない事には始まらない。私は扉を開け放って、食堂に入る。
 中には使用人を含めて、セブリアン、トール、エミラがいた。全員が一斉にこちらに視線を送る。
「……ベル、アリーン」
 セブリアンが少し苦しそうな声をあげながら、私達を見た。椅子から立ち上がって、少し後ずさっているような姿勢だ。机越しのその正面にはエミラが立ち上がって、セブリアンを指差している状態で止まっている。たぶん糾弾している所だったのだろう。その脇でトールが中腰になって、エミラを落ち着かせようとしているように見える。まさに、犯人を名指ししているシーンを切り取ったような場面。
 まだ決定的証拠がない状態なのに、飛び込んでしまった。でもセブリアンが濡れ衣を着せられてしまうのを、黙って見ている事もできない。とっていってもセブリアンが無実かどうかも、決定的証拠がないと分からないのだけど。
 私が固まってしまっていると、エミラが指差すのをやめて、微笑みながら私に近寄ってくる。
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