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エキセントリック・メイドドリーム
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「どうして……アンデスト様」
アンデストがなぜ。そう考えると、真っ先に浮かんでくるのは王位継承権についてだった。王様とアンデストが居なくなった今、セブリアンが王位継承者となったのだ。考えたくないけどセブリアンは演技をしていて、内心ほくそ笑んでいたという事だろうか。
タイミング的に、私がセブリアンを訪ねる前に殺害をしている。確かに私が訊ねた時、セブリアンは自室におらず、ちょうど帰ってきた所に出くわした。そうなると手紙も、自作自演という事になる。
もう一人の容疑者であるトールは、私と一緒に居た。十五の刻だから、アップルパイを食べようという話をしたから確実だ。トールは犯人ではない。少なくともアンデスト殺しは。
「やっぱりセブリアン様がやったの?」
私は疑問を口に出してみる。やっぱり違和感があった。一番怪しいのはセブリアンだけど、私の印象では犯人ではないのだ。それともあれは、演技だったのか。
「ふぅー」
私は一度大きく息を吐き、最初から思い出してみる。
はじめに起きたのは王様殺害事件。亡くなったのは夜の一の刻から三の刻のどこか。もう丸一日くらい経っているから、昨日だ。
首と背中の中間あたり右肩寄りを刺されていて、刃が右肩の方を向いていた。そして傷を隠して発見を遅らせるのが目的なのか、仰向けにされていた。寝室を覗いた人がいるかはわからないけど、たぶん夜では、ベッドに血液が染み込んでいても気づかない。いや、匂いで気づく人もいただろうから、そもそも覗いた人はいないかも。そう考えると、発見を遅らせる目的だった可能性は低いのか。
ちなみに仰向けになっていたのはほぼ真ん中。言い方が正しいかわからないけど、寝る際の正しい位置。
凶器は現場に無かったから傷跡からの推測らしいけど、服の中に忍ばせられる片刃の短剣。
それからベッドのシーツの右側面が、引っ張られたように乱れていた。うつ伏せに寝ていた王様がいて、ベッドの右側面から膝をついて短剣を振り下ろした。そんな想像ができる。アリーンも同じ推測をしていたし、噂を聞く感じでは皆同じように想像したみたいだ。だからたぶん、そんな感じで殺されたのだろう。
「……アンデスト様」
アンデストの殺害現場は見ていない。整理するために教えてもらった事を思い返そうとしたけど、辛くてできなかった。
もう玉の輿がどうとか、関係ない。アンデストを殺した人間を捕まえたい。
「と息巻いてみても、何もわからない」
ため息をつきながら、私は寝返りをうった。ふとベッドのシーツが乱れているのが視界に入る。
「……っ?!」
私の中に衝撃が走る。今まで勘違いしていたかもしれない。私は仰向けになって、腕を何度か振ってみる。私の頭の中にある映像が出来上がっていった。
「こちらの方が、遥かに自然だ」
これまでの想像には、矛盾があった。可能性がない訳ではない、小さな矛盾。そこが分かると一気にストーリーが出来上がっていく。あの時の気遣いも、計画の内だったのだ。
「……なんて事だ、犯人の可能性が最も高いのは……でも証拠がない」
決定的証拠がない。今はただの推測でしかない。
アンデストがなぜ。そう考えると、真っ先に浮かんでくるのは王位継承権についてだった。王様とアンデストが居なくなった今、セブリアンが王位継承者となったのだ。考えたくないけどセブリアンは演技をしていて、内心ほくそ笑んでいたという事だろうか。
タイミング的に、私がセブリアンを訪ねる前に殺害をしている。確かに私が訊ねた時、セブリアンは自室におらず、ちょうど帰ってきた所に出くわした。そうなると手紙も、自作自演という事になる。
もう一人の容疑者であるトールは、私と一緒に居た。十五の刻だから、アップルパイを食べようという話をしたから確実だ。トールは犯人ではない。少なくともアンデスト殺しは。
「やっぱりセブリアン様がやったの?」
私は疑問を口に出してみる。やっぱり違和感があった。一番怪しいのはセブリアンだけど、私の印象では犯人ではないのだ。それともあれは、演技だったのか。
「ふぅー」
私は一度大きく息を吐き、最初から思い出してみる。
はじめに起きたのは王様殺害事件。亡くなったのは夜の一の刻から三の刻のどこか。もう丸一日くらい経っているから、昨日だ。
首と背中の中間あたり右肩寄りを刺されていて、刃が右肩の方を向いていた。そして傷を隠して発見を遅らせるのが目的なのか、仰向けにされていた。寝室を覗いた人がいるかはわからないけど、たぶん夜では、ベッドに血液が染み込んでいても気づかない。いや、匂いで気づく人もいただろうから、そもそも覗いた人はいないかも。そう考えると、発見を遅らせる目的だった可能性は低いのか。
ちなみに仰向けになっていたのはほぼ真ん中。言い方が正しいかわからないけど、寝る際の正しい位置。
凶器は現場に無かったから傷跡からの推測らしいけど、服の中に忍ばせられる片刃の短剣。
それからベッドのシーツの右側面が、引っ張られたように乱れていた。うつ伏せに寝ていた王様がいて、ベッドの右側面から膝をついて短剣を振り下ろした。そんな想像ができる。アリーンも同じ推測をしていたし、噂を聞く感じでは皆同じように想像したみたいだ。だからたぶん、そんな感じで殺されたのだろう。
「……アンデスト様」
アンデストの殺害現場は見ていない。整理するために教えてもらった事を思い返そうとしたけど、辛くてできなかった。
もう玉の輿がどうとか、関係ない。アンデストを殺した人間を捕まえたい。
「と息巻いてみても、何もわからない」
ため息をつきながら、私は寝返りをうった。ふとベッドのシーツが乱れているのが視界に入る。
「……っ?!」
私の中に衝撃が走る。今まで勘違いしていたかもしれない。私は仰向けになって、腕を何度か振ってみる。私の頭の中にある映像が出来上がっていった。
「こちらの方が、遥かに自然だ」
これまでの想像には、矛盾があった。可能性がない訳ではない、小さな矛盾。そこが分かると一気にストーリーが出来上がっていく。あの時の気遣いも、計画の内だったのだ。
「……なんて事だ、犯人の可能性が最も高いのは……でも証拠がない」
決定的証拠がない。今はただの推測でしかない。
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