玉の輿がしたいだけなのに!~毎度事件が起こる上に、興味のない平民魔法師団長から溺愛されるメイドの事件手帳~

高岩唯丑

文字の大きさ
上 下
21 / 40
エキセントリック・メイドドリーム

13

しおりを挟む
「はぁ」
 私はどっと疲れた気分になった。一日かけて三人の王子が寝ていた時間を、調べただけなのだから。
「どういう事だろう」
 最重要容疑者であったはずの三人の王子は、犯行があった刻限には寝ていた。つまり犯行は可能。でも印象的にも、動機的にも三人が犯人ではないと感じる。この中に、嘘をついている人間がいるのだろうか。私は信じたくない気持ちになる。
 今日、それぞれの王子と顔を合わせて話した。三人とも形は違えど、王様が、父親が居なくなってほしいなんて思っていなかった事がわかった。
 アンデストは王になる覚悟を、まだ持つ事ができないと言っていた。それなのに王様を殺害するだろうか。むしろ長生きしてほしいと思う気がする。居なくなって困るとさえ、思っているかもしれない。その上、声をあげて泣いた。泣きじゃくっていた。本当に悲しんでいたと感じる。
 トールは王様に感謝をしていた。自分は王の器ではないと理解していた。いろんな人から外に追いやられた哀れな王子と思われていたけど、実際はその立場に望んで留まっていたともいえる。のんびり研究をしている方が性に合っていると、そう思っている。野心なんて見えかったし、王様を恨んでもいなかった。
 セブリアンはむしろ王になりたがっていた。でもそれは殺害してでも手に入れたい、とはセブリアンは思っていない。実力で見返して、王座を得ようとしていた。その為に長生きしてもらいたかった、と思っているかもしれない。それに王様の死で涙を流していた。私には見えない様にしていたけど、あれはきっと泣いていたと思う。珍しく隙を見せてしまうぐらいに、ショックだったと言える。
「……騎士団と魔法師団は何かわかったかな」
 いや、セブリアンが言うには形だけの調査らしいから、何も分かっていないかもしれない。そもそも呼び出されて話を聞かれたりしてないのが、その証拠かな。私がこれだけ歩き回っていても、咎められていないし。私はため息をついてしまう。
「アリーンは形だけじゃなくて、ちゃんとやってるかな」
 私がアリーンの名前を出した途端に、前からアリーンが駆けてくるのが見える。もしかして私がアリーンの名前を出したのが聞こえて、嬉しくなって疾走してきたのだろうか。なかなかキモイぞ。
「ベル!」
 逃げようか迷っているうちに、アリーンが目の前まで迫って叫ぶようにそう言った。なんか様子がおかしい様な。そう思っているうちに、アリーンがスピードを緩めずに、私を抱きしめてきた。
「にゃっ……何するんだよ、バカ! 痛いわ!」
 私はアリーンの頭をはたく。それでもお構い無しに、アリーンは私を抱きしめ続けた。
「よかった……無事で」
「はっ?! ちょっ、なんなの?!」
 意味がわからない。私が逃れようともがいていると、満足したのかアリーンが離れて私の顔を見た。深刻な表情。嫌な予感がするほどに。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

愛のゆくえ【完結】

春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした ですが、告白した私にあなたは言いました 「妹にしか思えない」 私は幼馴染みと婚約しました それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか? ☆12時30分より1時間更新 (6月1日0時30分 完結) こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね? ……違う? とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。 他社でも公開

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

美人の偽聖女に真実の愛を見た王太子は、超デブス聖女と婚約破棄、今さら戻ってこいと言えずに国は滅ぶ

青の雀
恋愛
メープル国には二人の聖女候補がいるが、一人は超デブスな醜女、もう一人は見た目だけの超絶美人 世界旅行を続けていく中で、痩せて見違えるほどの美女に変身します。 デブスは本当の聖女で、美人は偽聖女 小国は栄え、大国は滅びる。

あなたへの恋心を消し去りました

恋愛
 私には両親に決められた素敵な婚約者がいる。  私は彼のことが大好き。少し顔を見るだけで幸せな気持ちになる。  だけど、彼には私の気持ちが重いみたい。  今、彼には憧れの人がいる。その人は大人びた雰囲気をもつ二つ上の先輩。  彼は心は自由でいたい言っていた。  その女性と話す時、私には見せない楽しそうな笑顔を向ける貴方を見て、胸が張り裂けそうになる。  友人たちは言う。お互いに干渉しない割り切った夫婦のほうが気が楽だって……。  だから私は彼が自由になれるように、魔女にこの激しい気持ちを封印してもらったの。 ※このお話はハッピーエンドではありません。 ※短いお話でサクサクと進めたいと思います。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

婚約破棄で命拾いした令嬢のお話 ~本当に助かりましたわ~

華音 楓
恋愛
シャルロット・フォン・ヴァーチュレストは婚約披露宴当日、謂れのない咎により結婚破棄を通達された。 突如襲い来る隣国からの8万の侵略軍。 襲撃を受ける元婚約者の領地。 ヴァーチュレスト家もまた存亡の危機に!! そんな数奇な運命をたどる女性の物語。 いざ開幕!!

処理中です...