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エキセントリック・メイドドリーム
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「ごちそうさまです」
私の言葉に反応して、トールが微笑んで返してくれる。
「こちらこそだよ、ごちそうさま」
満足してくれたようで、トールの表情には先ほどの様な陰はさしていない。幸せな時間だったからな。私自身も、色々忘れられる時間だった。
「やっぱりベルは料理が上手いね……調理場の料理人に推挙しておこうか」
「やめてくださいよ、私はメイドが良いです」
ちょっとした冗談で、私たちは微笑み合う。幸せな時間だ。
「ベル君と一緒に居ると、いろいろ忘れられるよ」
「あっ」
私はつい声をあげてしまった。トールが不思議そうな表情で、問いかけてくる。
「どうしたんだい?」
「私も同じような事を考えてて、ビックリして」
その言葉にトールは少し目を見開いた後、微笑んだ。
「そうなんだ、こういうのはなんだか嬉しいね」
「……はい」
なんだかくすぐったい様な空気に、幸せを感じる。トールも同じだろうか。私はトールの顔を伺う。同じようにくすぐったそうに微笑んでいた。あぁこんなに穏やかな人間が親を殺すとは思えない。憎しみがあったとしても、それに負けたと思いたくない。
私は幸せな空気に後ろ髪を引かれながら、トールに問いかける。
「疑っているわけではないんですが、でもアリーン様に……関係者に話を聞いてくるように言われて……なので聞いてもいいですか?」
アリーンごめん。また嘘をついた事を心の中で詫びつつ、トールを見つめる。私の言葉で、少し悲しそうな表情を浮かべた。
「そう、なんだね……そうだね、今はそういう状態だった」
緊急事態。それから目をそらし続けていられれば、どれだけ楽だろう。トールは、そんな事を思っているのではないか。でもそうもいかないのだ。
「王様が亡くなったのが、昨日の一の刻から三の刻らしいんですが、何をしていましたか?」
「昨日、その時間……もう寝ていたと思う」
特に淀みなく答えるトール。それに私は「そうですよね」と返した。時間が時間だから、だいたいそうだろう。そして、誰にも証明してもらえない。
「……父上、どうして」
トールが悲しそうに呟いた。また悲しい思いが、沸き上がってきてしまったらしい。アップルパイを食べる前に、話しを済ませてしまった方がよかったかもしれない。失敗した。
「こんな話をすると」
そこまで言ったトールが、私を真剣な表情で見つめて言葉を続ける。
「犯人ではないと必死になって訴えている感じが、逆に怪しく見えるかもしれないけど」
「いえ! そんな事は」
私の言葉に悲しみに溢れた微笑みを浮かべて、トールが言葉を続けた。
私の言葉に反応して、トールが微笑んで返してくれる。
「こちらこそだよ、ごちそうさま」
満足してくれたようで、トールの表情には先ほどの様な陰はさしていない。幸せな時間だったからな。私自身も、色々忘れられる時間だった。
「やっぱりベルは料理が上手いね……調理場の料理人に推挙しておこうか」
「やめてくださいよ、私はメイドが良いです」
ちょっとした冗談で、私たちは微笑み合う。幸せな時間だ。
「ベル君と一緒に居ると、いろいろ忘れられるよ」
「あっ」
私はつい声をあげてしまった。トールが不思議そうな表情で、問いかけてくる。
「どうしたんだい?」
「私も同じような事を考えてて、ビックリして」
その言葉にトールは少し目を見開いた後、微笑んだ。
「そうなんだ、こういうのはなんだか嬉しいね」
「……はい」
なんだかくすぐったい様な空気に、幸せを感じる。トールも同じだろうか。私はトールの顔を伺う。同じようにくすぐったそうに微笑んでいた。あぁこんなに穏やかな人間が親を殺すとは思えない。憎しみがあったとしても、それに負けたと思いたくない。
私は幸せな空気に後ろ髪を引かれながら、トールに問いかける。
「疑っているわけではないんですが、でもアリーン様に……関係者に話を聞いてくるように言われて……なので聞いてもいいですか?」
アリーンごめん。また嘘をついた事を心の中で詫びつつ、トールを見つめる。私の言葉で、少し悲しそうな表情を浮かべた。
「そう、なんだね……そうだね、今はそういう状態だった」
緊急事態。それから目をそらし続けていられれば、どれだけ楽だろう。トールは、そんな事を思っているのではないか。でもそうもいかないのだ。
「王様が亡くなったのが、昨日の一の刻から三の刻らしいんですが、何をしていましたか?」
「昨日、その時間……もう寝ていたと思う」
特に淀みなく答えるトール。それに私は「そうですよね」と返した。時間が時間だから、だいたいそうだろう。そして、誰にも証明してもらえない。
「……父上、どうして」
トールが悲しそうに呟いた。また悲しい思いが、沸き上がってきてしまったらしい。アップルパイを食べる前に、話しを済ませてしまった方がよかったかもしれない。失敗した。
「こんな話をすると」
そこまで言ったトールが、私を真剣な表情で見つめて言葉を続ける。
「犯人ではないと必死になって訴えている感じが、逆に怪しく見えるかもしれないけど」
「いえ! そんな事は」
私の言葉に悲しみに溢れた微笑みを浮かべて、トールが言葉を続けた。
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