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エキセントリック・メイドドリーム
プロローグ06
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私は現場の見分が終わったアリーンの後ろについて、廊下を歩いていた。色々わかった情報を頭の中で整理する。
王様が亡くなったのは昨夜。就寝のために寝室に入って少ししたくらいで、おそらく一の刻から三の刻のどこかみたいだ。少なくとも朝方ではないから、その刻限に絞っても問題ないらしい。
凶器は片刃の短剣。それほど大きい物ではなく、服に忍ばせられる程度のサイズ。
キズは背中にあった。背中と首の中間あたりで、右肩寄りの場所。刃が右肩の方を向いていたらしい。それに加えてベッドのシーツの右側面に、引っ張られたられた様なシワが深めに刻まれていた。座った程度でできるシワには見えなかったらしいから、おそらく犯人がそこに膝をついて、俯けで眠っていた王様に短剣を振り下ろして殺害し、発覚を遅らせるためなのか仰向けにして去っていった。それがアリーンの見解らしい。
「あっ」
突然何かにぶつかってしまって、私は声をあげた。見てみるとぶつかったのはアリーンの背中だ。
「ごめん! 考え事をしてて」
振り向いたアリーンが、面白そうにしながら口を開く。
「いいさ、ぶつかったくらい、それにちょっとベルに触れられたわけだから、嬉しいくらいなのだよ」
背中にぶつかった事が触れられたという発想になるのは、なかなかにキモイぞ。私は少しアリーンに呆れた視線を送る。アリーンはその視線を物ともしない表情で言葉を続ける。
「ははっ、真に受けないでくれたまえ、冗談なのだよ」
嘘つけ。絶対そう言う発想をしていた気がする。私は呆れた視線から疑いの視線に切り替えてアリーンを見つめ続ける。
「そんなに熱い視線を送らないでくれたまえ、照れてしまうよ」
もう意味がわからない。私が視線を外してため息をつくと、アリーンが小さく笑った。
「ところで、ベルの玉の輿計画はこれで瓦解してしまったね」
「は? なんで?」
心底嬉しそうな笑顔を浮かべたアリーン。ちょっと腹が立つのだけど。
「考えてもみたまえよ、王が殺されたんだよ」
「? それが? あの人関係ないし」
「さすがにメイドとして、その態度はどうなんだね、直属の主ではないにせよ、仕えているのに」
苦笑しながらアリーンがそう言った。あんなおいぼれ爺さんに興味はないし、仕えているつもりもない。私は王子たちに身も心も捧げているのだ。
「まぁ、それはいいとして」
苦笑から、勝ち誇ったような笑顔に変わったアリーンが口を開く。
「殺されたのだ……そして、王が居なくなる事で得をする人間がいる」
たぶん誰もが、王様が死んだ際に思い至った事だろう。私は考えない様にしていたけど、アリーンはそれを指摘するつもりらしい。憎らしく思いながら、私はアリーンを正面から見据える。
王様が亡くなったのは昨夜。就寝のために寝室に入って少ししたくらいで、おそらく一の刻から三の刻のどこかみたいだ。少なくとも朝方ではないから、その刻限に絞っても問題ないらしい。
凶器は片刃の短剣。それほど大きい物ではなく、服に忍ばせられる程度のサイズ。
キズは背中にあった。背中と首の中間あたりで、右肩寄りの場所。刃が右肩の方を向いていたらしい。それに加えてベッドのシーツの右側面に、引っ張られたられた様なシワが深めに刻まれていた。座った程度でできるシワには見えなかったらしいから、おそらく犯人がそこに膝をついて、俯けで眠っていた王様に短剣を振り下ろして殺害し、発覚を遅らせるためなのか仰向けにして去っていった。それがアリーンの見解らしい。
「あっ」
突然何かにぶつかってしまって、私は声をあげた。見てみるとぶつかったのはアリーンの背中だ。
「ごめん! 考え事をしてて」
振り向いたアリーンが、面白そうにしながら口を開く。
「いいさ、ぶつかったくらい、それにちょっとベルに触れられたわけだから、嬉しいくらいなのだよ」
背中にぶつかった事が触れられたという発想になるのは、なかなかにキモイぞ。私は少しアリーンに呆れた視線を送る。アリーンはその視線を物ともしない表情で言葉を続ける。
「ははっ、真に受けないでくれたまえ、冗談なのだよ」
嘘つけ。絶対そう言う発想をしていた気がする。私は呆れた視線から疑いの視線に切り替えてアリーンを見つめ続ける。
「そんなに熱い視線を送らないでくれたまえ、照れてしまうよ」
もう意味がわからない。私が視線を外してため息をつくと、アリーンが小さく笑った。
「ところで、ベルの玉の輿計画はこれで瓦解してしまったね」
「は? なんで?」
心底嬉しそうな笑顔を浮かべたアリーン。ちょっと腹が立つのだけど。
「考えてもみたまえよ、王が殺されたんだよ」
「? それが? あの人関係ないし」
「さすがにメイドとして、その態度はどうなんだね、直属の主ではないにせよ、仕えているのに」
苦笑しながらアリーンがそう言った。あんなおいぼれ爺さんに興味はないし、仕えているつもりもない。私は王子たちに身も心も捧げているのだ。
「まぁ、それはいいとして」
苦笑から、勝ち誇ったような笑顔に変わったアリーンが口を開く。
「殺されたのだ……そして、王が居なくなる事で得をする人間がいる」
たぶん誰もが、王様が死んだ際に思い至った事だろう。私は考えない様にしていたけど、アリーンはそれを指摘するつもりらしい。憎らしく思いながら、私はアリーンを正面から見据える。
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