玉の輿がしたいだけなのに!~毎度事件が起こる上に、興味のない平民魔法師団長から溺愛されるメイドの事件手帳~

高岩唯丑

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エキセントリック・メイドドリーム

プロローグ05

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 嫌な想像ではあったけど、やっぱりみんな同じ事を考えていたらしく、私達は王様の寝室へと直行していた。ここの辺りはアンデストと王様の部屋しかない。王様の安否を確認すべきだし、行動としては間違っていないと思う。
「あれは」
 アンデストが声をあげた。王様の寝室の前に、へたり込んでいるメイドが一人いる。アリアンだ。どうすればいいかわからない、という感じだ。
「アンデスト様……」
 へたり込んでいたアリアンが、一瞬だけ助かったという顔をした後、申し訳なさそうな表情に変わり私とアリーンを見る。その視線の意味が分からなかったけど、開きっぱなしの王様の寝室に目をやるとその理由がわかった。
 王様がベッドに仰向けに横たわっている。この言い方で正しいのかわからないけど、ベッドで寝る時の正しい位置。ベッドのシーツは赤く染まっていた。ベッドの側面に垂れているシーツまで血が達しているという事は、相当の出血だろう。顔は驚愕の表情で固まり青白い。直感で、もうダメだと分かってしまうほどに。
「父上?」
 アンデストも見てしまったのだろう。そう呟いて、ゆっくりと王様のそばに向かって踏み出す。それから数歩進んで王様に駆け寄ろうとしたところで、アンデストはアリーンに羽交い絞めにされ止められた。
「アリーン! 離してくれ! 父上が!」
「アンデスト様! もう王は」
「まだ! まだわからない! アリーン! 頼む! 治癒魔法をっ」
 取り乱すアンデストはしばらく暴れた後、ゆっくりとその場にへたり込んだ。アリーンが膝をついてアンデストに視線を合わせる。
「申し訳ありません、見た所自然死ではありません、証拠を消してしまわない様にしなければ」
 かけられた言葉が届いていないのか、アンデストは俯いて何も反応しなくなってしまった。しょうがない事だと思う。こんな場面を見てしまったら。
「君! 誰か人を呼んできてくれたまえ! 騎士が居れば騎士を頼む!」
 アリーンがドアの方を振り向いて、アリアンに指示を飛ばす。アリアンは恐々としつつも頷いて、よろよろと立ち上がると歩き始めた。
「さて、僕は遺体から可能な限り情報を読み取る」
 そう言いながらアリーンは私をみて、言葉を続ける。
「ベル、君はアンデスト様を見ていてくれ」
 見ていてくれというのはきっと、現場を荒らさない様にそこに押し留めておいてくれという意味が含まれているのだろう。私は頷いて返した。
 とんでもない事になってしまった。王の殺害なんて大事件だ。私はアンデストに歩み寄りその両肩をできるだけ優しく抱き寄せた。
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