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エキセントリック・メイドドリーム
プロローグ04
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その人物は、この国の王位継承権第一位の王子アンデストだった。
「アンデスト様……申し訳ありません」
「いや、大丈夫……それより今、誰かこの廊下を絶叫しながら走っていなかったかな?」
アンデストがキョロキョロと廊下を見渡す。
「いえ? いませんでしたよ?」
本当に分からなかった。そんなはしたない人が、この優雅な王城に本当にいるんだろうか。私は首を傾げる。そうしていると遅れてアリーンが追い付いてきた。
「あぁ、アンデスト様……ご無事で」
「アリーン……絶叫と悲鳴が聞こえたがアレは何だろう」
アンデストの問いかけに、アリーンが一瞬私に視線を送る。私はそれに殺意に近い物を込めた視線を返した。察してくれたようで、ため息をついたアリーンが口を開く。
「絶叫? はて、何のことですかね……悲鳴は確かに聞こえましたな、僕はアンデスト様の身が心配でベルと走ってきたのですよ」
「……そうか、私も悲鳴が聞こえて、確認のために飛び出してきた」
アンデストの格好を見ると、すでに着替えていた。急いで着替えたためか少し乱れている。この人はいつも隙を見て、一人で着替えてしまうのだ。今も途中まで着替えていて、悲鳴がしたから、そこから急いで着たのだろう。
「申し訳ありません、お着替えの手伝いに遅れてしまって、着替えてしまったのですね」
「いや、いいんだ……着替えの時に肌を、その……まじまじと見られるのが、なかなか慣れなくてね、鼻息もちょっと怖いし」
アンデストが、私から少し目をそらしながらそう言った。最後の方が小声でよく聞こえなかったけど、照れているらしい。この恥ずかしがり屋さんめ。
「いや、こんな所で立ち話をしている場合じゃない」
ハッとした表情になってそう口にしたアンデスト。その様子を見て私も悲鳴の件を思い出す。
「僕が様子を見てきます、ベル、アンデスト様を頼めるかね?」
「もちろんです!」
王城に勤める使用人は護身術程度に魔法が使える。危険が迫った時、使用人の方が兵士よりも近くにいるため、兵士が駆けつけるまで仕える主人を守るためだ。私も例に寄らず護身術程度に魔法は使える。
「いや、私も行こう……アリーンは戦闘はどちらかというと後衛やサポートだろう、危険人物がいた場合、逆に人質に取られそうだ」
少し笑いながらアンデストが言った。その辺はよくわからないけど、アリーンが申し訳なさそうな表情をしている所を見ると、その通りらしい。
これ以上の問答は受け付けないといった感じで、アンデストが走り出す。私とアリーンがその後ろをついていった。
「アンデスト様……申し訳ありません」
「いや、大丈夫……それより今、誰かこの廊下を絶叫しながら走っていなかったかな?」
アンデストがキョロキョロと廊下を見渡す。
「いえ? いませんでしたよ?」
本当に分からなかった。そんなはしたない人が、この優雅な王城に本当にいるんだろうか。私は首を傾げる。そうしていると遅れてアリーンが追い付いてきた。
「あぁ、アンデスト様……ご無事で」
「アリーン……絶叫と悲鳴が聞こえたがアレは何だろう」
アンデストの問いかけに、アリーンが一瞬私に視線を送る。私はそれに殺意に近い物を込めた視線を返した。察してくれたようで、ため息をついたアリーンが口を開く。
「絶叫? はて、何のことですかね……悲鳴は確かに聞こえましたな、僕はアンデスト様の身が心配でベルと走ってきたのですよ」
「……そうか、私も悲鳴が聞こえて、確認のために飛び出してきた」
アンデストの格好を見ると、すでに着替えていた。急いで着替えたためか少し乱れている。この人はいつも隙を見て、一人で着替えてしまうのだ。今も途中まで着替えていて、悲鳴がしたから、そこから急いで着たのだろう。
「申し訳ありません、お着替えの手伝いに遅れてしまって、着替えてしまったのですね」
「いや、いいんだ……着替えの時に肌を、その……まじまじと見られるのが、なかなか慣れなくてね、鼻息もちょっと怖いし」
アンデストが、私から少し目をそらしながらそう言った。最後の方が小声でよく聞こえなかったけど、照れているらしい。この恥ずかしがり屋さんめ。
「いや、こんな所で立ち話をしている場合じゃない」
ハッとした表情になってそう口にしたアンデスト。その様子を見て私も悲鳴の件を思い出す。
「僕が様子を見てきます、ベル、アンデスト様を頼めるかね?」
「もちろんです!」
王城に勤める使用人は護身術程度に魔法が使える。危険が迫った時、使用人の方が兵士よりも近くにいるため、兵士が駆けつけるまで仕える主人を守るためだ。私も例に寄らず護身術程度に魔法は使える。
「いや、私も行こう……アリーンは戦闘はどちらかというと後衛やサポートだろう、危険人物がいた場合、逆に人質に取られそうだ」
少し笑いながらアンデストが言った。その辺はよくわからないけど、アリーンが申し訳なさそうな表情をしている所を見ると、その通りらしい。
これ以上の問答は受け付けないといった感じで、アンデストが走り出す。私とアリーンがその後ろをついていった。
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