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エキセントリック・メイドドリーム
プロローグ02
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「あぁ、アンデスト様の身支度をお手伝いしないと」
アンデストの神々しい裸体を、合法的に眺められる当番だ。私は溢れ出るよだれを抑えながら、アンデストの自室へと向かう。アンデストは専属メイドをつけていないおかげで、定期的にこうやって楽しい時間を過ごせる。着替えを手伝うのだから、上手くいけばそういう事になる可能性もある。ぐへへ。そういう事が起きれば、アンデストの専属メイドまっしぐらである。私は自然と鼻歌とスキップが出てしまう。
ちなみに私は、誰かの専属メイドになれていない。なので日ごとに、色々な仕事をローテーションしている。ある意味これは、王子たち全員と親密になれるチャンス、そう捉えている。じっくり全員を攻略して、どの王子を落とすか決めた後、専属メイドを奪い取るのだ。まぁ現時点で、一番のお気に入り王子はアンデストだけど。
そんな風にアンデストの自室に向かっていると、前から歩いてくる人物を見つけて、私は少し身構えた。アリーン・ソーランだ。
「やぁ、愛しのベルよ、会えてうれしいよ、奇跡に感謝なのだよ」
アリーンが恭しく頭を下げてそう言った。何が奇跡だ。ほぼ毎日こうして出くわすという事は、どうやってか私のローテーションを把握しているという事。変質者、犯罪者だ。
「おはようございます、魔法師団長様」
私はきっちりとした姿勢と、きっちりとしたお辞儀でアリーンに挨拶した。アリーンは私と同じ平民だった。その上幼馴染である。まぁまぁイケメンなのは認めるけど、身分は低い。こいつを選んでも玉の輿は出来ないのだ。だから基本的にこういう態度である。
「つれないなぁ、ベル、僕はこんなにも君への愛を証明しているのだよ?」
私との距離を少し縮めて片膝をついたアリーンが、手に赤いバラを出現させて渡してきた。私はそれを無視して、歩き始める。後ろからアリーンがついてくる足音がした。
アリーンには子供の頃に自分の夢を話していた。いつかメイドとして貴族の屋敷に勤め、貴族を落として玉の輿に乗るんだと。それを聞いたからなのか、アリーンは魔法師団長にまで出世した。それからまだ平民だけど、私の玉の輿候補相手になれると思ったのか、私に求愛を始めたのだ。
「高めの給金をもらっているだけの平民に興味ない、領地持ちでも、有り余る財産もないでしょう……まぁ、魔法師団長まで上り詰めたのは、すごいけど」
私の言葉は最後の方だけ、小さくなってしまう。自分のためにここまでしてくれるのは嬉しいけど、素直に認められないのだ。アリーンは少し芝居かかった動きと口調をしながら、私の前に躍り出る。
アンデストの神々しい裸体を、合法的に眺められる当番だ。私は溢れ出るよだれを抑えながら、アンデストの自室へと向かう。アンデストは専属メイドをつけていないおかげで、定期的にこうやって楽しい時間を過ごせる。着替えを手伝うのだから、上手くいけばそういう事になる可能性もある。ぐへへ。そういう事が起きれば、アンデストの専属メイドまっしぐらである。私は自然と鼻歌とスキップが出てしまう。
ちなみに私は、誰かの専属メイドになれていない。なので日ごとに、色々な仕事をローテーションしている。ある意味これは、王子たち全員と親密になれるチャンス、そう捉えている。じっくり全員を攻略して、どの王子を落とすか決めた後、専属メイドを奪い取るのだ。まぁ現時点で、一番のお気に入り王子はアンデストだけど。
そんな風にアンデストの自室に向かっていると、前から歩いてくる人物を見つけて、私は少し身構えた。アリーン・ソーランだ。
「やぁ、愛しのベルよ、会えてうれしいよ、奇跡に感謝なのだよ」
アリーンが恭しく頭を下げてそう言った。何が奇跡だ。ほぼ毎日こうして出くわすという事は、どうやってか私のローテーションを把握しているという事。変質者、犯罪者だ。
「おはようございます、魔法師団長様」
私はきっちりとした姿勢と、きっちりとしたお辞儀でアリーンに挨拶した。アリーンは私と同じ平民だった。その上幼馴染である。まぁまぁイケメンなのは認めるけど、身分は低い。こいつを選んでも玉の輿は出来ないのだ。だから基本的にこういう態度である。
「つれないなぁ、ベル、僕はこんなにも君への愛を証明しているのだよ?」
私との距離を少し縮めて片膝をついたアリーンが、手に赤いバラを出現させて渡してきた。私はそれを無視して、歩き始める。後ろからアリーンがついてくる足音がした。
アリーンには子供の頃に自分の夢を話していた。いつかメイドとして貴族の屋敷に勤め、貴族を落として玉の輿に乗るんだと。それを聞いたからなのか、アリーンは魔法師団長にまで出世した。それからまだ平民だけど、私の玉の輿候補相手になれると思ったのか、私に求愛を始めたのだ。
「高めの給金をもらっているだけの平民に興味ない、領地持ちでも、有り余る財産もないでしょう……まぁ、魔法師団長まで上り詰めたのは、すごいけど」
私の言葉は最後の方だけ、小さくなってしまう。自分のためにここまでしてくれるのは嬉しいけど、素直に認められないのだ。アリーンは少し芝居かかった動きと口調をしながら、私の前に躍り出る。
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