玉の輿がしたいだけなのに!~毎度事件が起こる上に、興味のない平民魔法師団長から溺愛されるメイドの事件手帳~

高岩唯丑

文字の大きさ
上 下
2 / 40
エキセントリック・メイドドリーム

プロローグ02

しおりを挟む
「あぁ、アンデスト様の身支度をお手伝いしないと」
 アンデストの神々しい裸体を、合法的に眺められる当番だ。私は溢れ出るよだれを抑えながら、アンデストの自室へと向かう。アンデストは専属メイドをつけていないおかげで、定期的にこうやって楽しい時間を過ごせる。着替えを手伝うのだから、上手くいけばそういう事になる可能性もある。ぐへへ。そういう事が起きれば、アンデストの専属メイドまっしぐらである。私は自然と鼻歌とスキップが出てしまう。
 ちなみに私は、誰かの専属メイドになれていない。なので日ごとに、色々な仕事をローテーションしている。ある意味これは、王子たち全員と親密になれるチャンス、そう捉えている。じっくり全員を攻略して、どの王子を落とすか決めた後、専属メイドを奪い取るのだ。まぁ現時点で、一番のお気に入り王子はアンデストだけど。
 そんな風にアンデストの自室に向かっていると、前から歩いてくる人物を見つけて、私は少し身構えた。アリーン・ソーランだ。
「やぁ、愛しのベルよ、会えてうれしいよ、奇跡に感謝なのだよ」
 アリーンが恭しく頭を下げてそう言った。何が奇跡だ。ほぼ毎日こうして出くわすという事は、どうやってか私のローテーションを把握しているという事。変質者、犯罪者だ。
「おはようございます、魔法師団長様」
 私はきっちりとした姿勢と、きっちりとしたお辞儀でアリーンに挨拶した。アリーンは私と同じ平民だった。その上幼馴染である。まぁまぁイケメンなのは認めるけど、身分は低い。こいつを選んでも玉の輿は出来ないのだ。だから基本的にこういう態度である。
「つれないなぁ、ベル、僕はこんなにも君への愛を証明しているのだよ?」
 私との距離を少し縮めて片膝をついたアリーンが、手に赤いバラを出現させて渡してきた。私はそれを無視して、歩き始める。後ろからアリーンがついてくる足音がした。
 アリーンには子供の頃に自分の夢を話していた。いつかメイドとして貴族の屋敷に勤め、貴族を落として玉の輿に乗るんだと。それを聞いたからなのか、アリーンは魔法師団長にまで出世した。それからまだ平民だけど、私の玉の輿候補相手になれると思ったのか、私に求愛を始めたのだ。
「高めの給金をもらっているだけの平民に興味ない、領地持ちでも、有り余る財産もないでしょう……まぁ、魔法師団長まで上り詰めたのは、すごいけど」
 私の言葉は最後の方だけ、小さくなってしまう。自分のためにここまでしてくれるのは嬉しいけど、素直に認められないのだ。アリーンは少し芝居かかった動きと口調をしながら、私の前に躍り出る。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

美人の偽聖女に真実の愛を見た王太子は、超デブス聖女と婚約破棄、今さら戻ってこいと言えずに国は滅ぶ

青の雀
恋愛
メープル国には二人の聖女候補がいるが、一人は超デブスな醜女、もう一人は見た目だけの超絶美人 世界旅行を続けていく中で、痩せて見違えるほどの美女に変身します。 デブスは本当の聖女で、美人は偽聖女 小国は栄え、大国は滅びる。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

婚約破棄で命拾いした令嬢のお話 ~本当に助かりましたわ~

華音 楓
恋愛
シャルロット・フォン・ヴァーチュレストは婚約披露宴当日、謂れのない咎により結婚破棄を通達された。 突如襲い来る隣国からの8万の侵略軍。 襲撃を受ける元婚約者の領地。 ヴァーチュレスト家もまた存亡の危機に!! そんな数奇な運命をたどる女性の物語。 いざ開幕!!

私は身を引きます。どうかお幸せに

四季
恋愛
私の婚約者フルベルンには幼馴染みがいて……。

処理中です...