6 / 12
06
しおりを挟む
張り紙があった次の日の放課後。夜慧と佳乃は生徒会室にいた。葉山愛とここで、待ち合わせしているのだ。
「ちゃんと来てくれるよね」
佳乃はなんとなく不安になる。忙しいらしく、今日もその合間をぬって、来てくれるそうだ。
「来なかったら、佳乃が責任取るのよ」
「え?!」
「当り前よ、約束取り付けたの、佳乃でしょ」
そんな話聞いてない。そんな事なら、もし来れれば、来てほしいなんて、あいまいに言わず、来てほしいと言うんだった。佳乃はそんな事を思いながら、生徒会室のドアを見つめる。すると、ドアをノックする音がする。
「はい、どうぞ」
夜慧の声が響いて、ドアが開く音が続く。
「どうも、ここが生徒会だよね」
そこにいたのは、葉山愛だった。佳乃が中に入るように促す。
「ちょっと遅くなっちゃったかな」
「いえ、大丈夫ですよ、こちらこそ、いきなりすみません」
軽く謝罪しながら、佳乃が中まで入ってきた愛に、椅子をすすめる。愛が立った席の対面に、夜慧と佳乃は並んで立ち、自己紹介をした。
「月華院夜慧です、今日はありがとうございます」
「柳佳乃です」
自己紹介を終えると、三人は席に座る。
「さて、来夏の事だよね」
「えぇ、来夏さんの事を聞きたくて」
「うん……」
愛の表情が少し暗くなる。かなり親しかったと、佳乃は聞いている。
「辛い事を思い出させて、すみません」
佳乃は、申し訳なくなって、そう謝った。
「いいよいいよ……来夏はね、頭よくて、美人で、運動が全然ダメで、天然ボケだったね」
「天然?」
少し、驚いた様子で、夜慧が聞き返す。
「そうだよー、いつも授業中に、窓の外見てたり、なぜかシャーペンを、ずぅっと、いじってたり、落ち着きがなかったかな」
なんだか意外だな、と佳乃は思う。勝手なイメージだけど、いつも落ち着いて、大人っぽい感じだと思ってた。
「それから、ネガティブだったかな、いつも自分はダメな人間だって、何やっても、どうせ、うまくいかない、みたいなね」
驚きの事実に、夜慧と佳乃は、顔を見合わせる。
「友達もいなかったしね、私だけだったと思う、まぁ、これは、来夏が高嶺の花とか、近づきにくいとか言って、みんな近づいて来なかったからだけど」
「愛さんはどうして友達に?」
「私は幼馴染だから……白雪姫の友達は大変だよ、天然だから、お世話してあげる形に、いつもなっちゃってたからね、それこそ……」
愛は自嘲気味に言葉を続ける。
「世話を焼く小人だよ、お供の小人、あるいは使用人、高貴な白雪姫のとなりにいるには、そういうのを覚悟しないと、いけないんだよ」
「ちゃんと来てくれるよね」
佳乃はなんとなく不安になる。忙しいらしく、今日もその合間をぬって、来てくれるそうだ。
「来なかったら、佳乃が責任取るのよ」
「え?!」
「当り前よ、約束取り付けたの、佳乃でしょ」
そんな話聞いてない。そんな事なら、もし来れれば、来てほしいなんて、あいまいに言わず、来てほしいと言うんだった。佳乃はそんな事を思いながら、生徒会室のドアを見つめる。すると、ドアをノックする音がする。
「はい、どうぞ」
夜慧の声が響いて、ドアが開く音が続く。
「どうも、ここが生徒会だよね」
そこにいたのは、葉山愛だった。佳乃が中に入るように促す。
「ちょっと遅くなっちゃったかな」
「いえ、大丈夫ですよ、こちらこそ、いきなりすみません」
軽く謝罪しながら、佳乃が中まで入ってきた愛に、椅子をすすめる。愛が立った席の対面に、夜慧と佳乃は並んで立ち、自己紹介をした。
「月華院夜慧です、今日はありがとうございます」
「柳佳乃です」
自己紹介を終えると、三人は席に座る。
「さて、来夏の事だよね」
「えぇ、来夏さんの事を聞きたくて」
「うん……」
愛の表情が少し暗くなる。かなり親しかったと、佳乃は聞いている。
「辛い事を思い出させて、すみません」
佳乃は、申し訳なくなって、そう謝った。
「いいよいいよ……来夏はね、頭よくて、美人で、運動が全然ダメで、天然ボケだったね」
「天然?」
少し、驚いた様子で、夜慧が聞き返す。
「そうだよー、いつも授業中に、窓の外見てたり、なぜかシャーペンを、ずぅっと、いじってたり、落ち着きがなかったかな」
なんだか意外だな、と佳乃は思う。勝手なイメージだけど、いつも落ち着いて、大人っぽい感じだと思ってた。
「それから、ネガティブだったかな、いつも自分はダメな人間だって、何やっても、どうせ、うまくいかない、みたいなね」
驚きの事実に、夜慧と佳乃は、顔を見合わせる。
「友達もいなかったしね、私だけだったと思う、まぁ、これは、来夏が高嶺の花とか、近づきにくいとか言って、みんな近づいて来なかったからだけど」
「愛さんはどうして友達に?」
「私は幼馴染だから……白雪姫の友達は大変だよ、天然だから、お世話してあげる形に、いつもなっちゃってたからね、それこそ……」
愛は自嘲気味に言葉を続ける。
「世話を焼く小人だよ、お供の小人、あるいは使用人、高貴な白雪姫のとなりにいるには、そういうのを覚悟しないと、いけないんだよ」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
パンドラベッド
今野綾
ライト文芸
「始まったものは終わるのよ」呪縛のようについてまわる、母の言葉。盲目的に母の言葉を信じ生きてきたヒメノ。そんな母の元から離れ大学に行くようになる。そこでリクに出会い……
憧れのファッションデザイナーの弟子になろうとしたら、女装させられて女子高に通うことになりました。
水無土豆
ライト文芸
今をときめくデザイナー、ミヤビ・ウエダの服を見て衝撃を受けた主人公・羅漢前剛夫(らかんまえたけお)は、弟子になりたいとミヤビに懇願するが、相手にされなかった。
それでも何度も何度も頼み続ける羅漢前に、ミヤビはとんでもない条件を突きつける。
「もしあたしの指定した学校に入学して、そこのデザイナー科を卒業したら弟子にしてあげる」
羅漢前はこれを快諾するが、その学校は女子高だった。
道化師より
黒蝶
ライト文芸
カメラマンの中島結は、とあるビルの屋上で学生の高倉蓮と出会う。
蓮の儚さに惹かれた結は写真を撮らせてほしいと頼み、撮影の練習につきあってもらうことに。
これから先もふたりの幸せが続いていく……はずだった。
これは、ふたりぼっちの30日の記録。
※人によっては不快に感じる表現が入ります。
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
不死身の遺言書
未旅kay
ライト文芸
死ねない男━━照望は、元廃ビルに数個の仕事を生業に暮らす。昔の知り合いの親戚である日和を彼女の両親の死をキッカケに引き取り、己よりも大切にしていた。
何故、照望が不死身になったのか。
照望の何百年もの孤独と過去から紐解かれる物語。
警視庁からの監視者、人間を模した天才少女、全知全能少年、殺し屋、魔女。多くの個性豊かな登場人物たちから織り綴られる。
ご気軽に読んで下さったら幸いです。感想やお気に入りなどで応援してくださったら嬉しいです。
現在4章まで進行中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる