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エピローグ

01

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 後宮の書庫。少し薄暗くて、木簡の匂いが充満している。
「いい匂いという訳でもないなぁ」
 読書家はこの匂いで、興奮するのだろうか。というかとりあえずそんな事はどうでもよい。今日ここに来たのは、調べたい事があったからだ。
 私はチュンジャオの件を解決した褒美として、この書庫で調べ物をさせてもらう事にした。カイレンやメイユー他ヨウズデンの皆には内密にだ。
 チーヒにその事を伝えた時の言葉が蘇ってくる。
「内密にか? シャオグー、お主、何を企んでおる?」
 企むという意味では間違っていなかったが、悪い事は企んでなどいなかった。それを説明するのも大変だった。真実を隠しながらだったからだ。だが納得はしていない様子だったが、最後には認めてくれた。
「本当に悪い事をしようとしてる訳ではないんです、ただ……みんなには知られたくなかった、これから調べる事で、態度が変わってしまったらと思うと怖かったのです」
 誰もいない場所に向かって声をあげる。これも言う訳には行かなかったから。意味がないと分かっていても、少しの罪悪感からくる言い訳の言葉だった。

 私は過去の事件が記してある木簡を調べていく。おそらくここの辺りにあるはずだ。そして関連する内容も。
「……あった」
 九尾の狐の事件。九尾の狐が人間に化け、側妃となって帝の寵愛を受けていた。それが露見してしまい、九尾の狐は逃げ出した。そして追われる身となったのだ。
 それ以降、九尾の狐は姿を現していない。妖術だか仙術だがを使えたから人間に化ける事ができたのだ。姿をさらすなんて事は無いだろう。つまりどこかで普通に生きていた事になる。
 ここに来た時、獣憑きになってすぐぐらいの時、夢か記憶の想起か、見た光景があった。女の人が「ごめんね」と悲しそうに言ってくる光景。時間が経つにつれてはっきりとしてきたその光景の女は、銀髪で動物の耳が頭にあり、尻尾が沢山あった。何本あったかは分からないが、おそらく九本なのではないかと思う。
 九尾の狐の特徴が書き残されていないか探す。
「九尾の狐……銀色の髪の美しい女性、容姿端麗で頭が恐ろしく良く、宮廷で誰も知りえないような知識さえ持っていた」
 自分の事を思い出す。容姿端麗は一旦置いておくとして、銀髪で頭が良い。そして。
「……宮廷で誰も知りえないような知識を持っている」
 思い当たる節がある。チンインの思い込み妊娠。あれは商家に集まってくる情報にあったのではない。なぜか知っていたのだ。
 そして、今回のチュンジャオの色覚異常。みんなの前では説明できなかったが、あれは目の病ではない。目と頭の中をつないでいる管に異常が出た病だ。これもなぜか知っていた。
 いずれも商家に集まってくる情報の系統とは違う。
 九尾の狐の特徴。私はそれと一致する特徴を持っている。そして記憶にある銀髪の女。あれは自分の心の写しか、あるいは親か。
「私が九尾の狐……あるいはその娘、かもしれない」
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