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珊瑚の宝石
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「シャオグー」
外に出るとカイレンが目の前に立っていた。方向的にシーリウデンへと入ろうとしていたのだろう。すぐに脇に逸れて頭を下げる。
「よい、頭を上げてくれ」
そう言われて頭を上げると、カイレンは少し心配そうな表情を浮かべていた。どうしたのだろう。私が不思議がっていると、カイレンが口を開く。
「逃げる様な足取りだったが」
先ほどの姿を見ての事だろう。そんな風に見えていたのか。早く離れなければとは思っていたが。
「調査の過程で、チーヒ様を少し怒らせてしまいました……今はいかない方が良いかと」
ついさっきの出来事だ。感情的なチーヒの事だ、今日はもう怒ってまともに取り合ってもらえないと思う。
「……よい、元々シーリウデンに用があったのではない、シャオグーを追いかけてきたのだ」
私がシーリウデンの者と一緒にいたから、謝蚕祭の手伝い終わりにシーリウデンへ調査へ行くと予想したのだろう。だがなぜ追いかけてくるのか。そんな疑問が過る。そこから、よく考えてみれば簡単だった。カイレンはチュンジャオを心配していた。だから助けようとしている私を、心配したという事だ。もや。
「そんなに心配ですか、チュンジャオ様が」
何を言ってるんだ私は。つい口に出てしまった言葉を引っ込めたくて、両手で口を押さえる。もちろん意味がないのだが。
「怒っているのか?」
「怒っていませんが」
あんな態度で言葉にしてしまったら、もう隠す意味もないので怒った表情を素直に浮かべておく。いや、別に怒っていない。カイレンが他の女を心配していたところで、関係ないのだ。
「……そうか」
そうか、じゃないよ。納得しないでもらいたい。もう。やりどころのない怒りが湧き始めて、思わずカイレンに背中を向けて歩き始める。チュンジャオの牢がある方向だ。少し遅い時間になってしまったが、確認したい事ができた。
「ヨウズデンはそちらではないが」
「もう一度、チュンジャオ様に話を聞く必要が出てきたので」
「ならば私も行こう」
今明らかに声が弾んだ。調査に進展があった事を察したという事だろう。そんなにチュンジャオが心配ですか。あー、そうですか。もや。
置いて行こうと思って、少し早足になっている私の隣に、カイレンが並んで歩き始める。背の高さ的に置いていける訳もないのに、冷静さを欠いてしまっている。一度息を大きく吸って、冷静さを取り戻すと、より一層足を速める。カイレンはなんて事なくついてきた。
「お前が心配なのだ、あまり一人で動くな、ヨウズデンの外はファンヒのかんざしがあっても、絶対に安心できるわけではない」
ふと最近のカイレンの姿を思い出した。いつも視界の端にいたカイレン。謝蚕祭の準備に出てきた時は、毎度必ずカイレンが見える範囲にいた。あれは私を心配して、いつも見守ってくれていたのか。
「そそそそそそうですか、へぇー」
外に出るとカイレンが目の前に立っていた。方向的にシーリウデンへと入ろうとしていたのだろう。すぐに脇に逸れて頭を下げる。
「よい、頭を上げてくれ」
そう言われて頭を上げると、カイレンは少し心配そうな表情を浮かべていた。どうしたのだろう。私が不思議がっていると、カイレンが口を開く。
「逃げる様な足取りだったが」
先ほどの姿を見ての事だろう。そんな風に見えていたのか。早く離れなければとは思っていたが。
「調査の過程で、チーヒ様を少し怒らせてしまいました……今はいかない方が良いかと」
ついさっきの出来事だ。感情的なチーヒの事だ、今日はもう怒ってまともに取り合ってもらえないと思う。
「……よい、元々シーリウデンに用があったのではない、シャオグーを追いかけてきたのだ」
私がシーリウデンの者と一緒にいたから、謝蚕祭の手伝い終わりにシーリウデンへ調査へ行くと予想したのだろう。だがなぜ追いかけてくるのか。そんな疑問が過る。そこから、よく考えてみれば簡単だった。カイレンはチュンジャオを心配していた。だから助けようとしている私を、心配したという事だ。もや。
「そんなに心配ですか、チュンジャオ様が」
何を言ってるんだ私は。つい口に出てしまった言葉を引っ込めたくて、両手で口を押さえる。もちろん意味がないのだが。
「怒っているのか?」
「怒っていませんが」
あんな態度で言葉にしてしまったら、もう隠す意味もないので怒った表情を素直に浮かべておく。いや、別に怒っていない。カイレンが他の女を心配していたところで、関係ないのだ。
「……そうか」
そうか、じゃないよ。納得しないでもらいたい。もう。やりどころのない怒りが湧き始めて、思わずカイレンに背中を向けて歩き始める。チュンジャオの牢がある方向だ。少し遅い時間になってしまったが、確認したい事ができた。
「ヨウズデンはそちらではないが」
「もう一度、チュンジャオ様に話を聞く必要が出てきたので」
「ならば私も行こう」
今明らかに声が弾んだ。調査に進展があった事を察したという事だろう。そんなにチュンジャオが心配ですか。あー、そうですか。もや。
置いて行こうと思って、少し早足になっている私の隣に、カイレンが並んで歩き始める。背の高さ的に置いていける訳もないのに、冷静さを欠いてしまっている。一度息を大きく吸って、冷静さを取り戻すと、より一層足を速める。カイレンはなんて事なくついてきた。
「お前が心配なのだ、あまり一人で動くな、ヨウズデンの外はファンヒのかんざしがあっても、絶対に安心できるわけではない」
ふと最近のカイレンの姿を思い出した。いつも視界の端にいたカイレン。謝蚕祭の準備に出てきた時は、毎度必ずカイレンが見える範囲にいた。あれは私を心配して、いつも見守ってくれていたのか。
「そそそそそそうですか、へぇー」
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