モフモフしたいだけなら撫でさせません！ え？私に触りたい？！ここここ今回だけ特別に撫でさせてあげなくもないですがー後宮もふもふ事件手帖

ユンの希望

12

「似合ってるわ！」
　メイユーが両手をあげて大げさに声をあげる。それを言われたユンはてへへっと照れた。褒められなれていない反応だ。
「ありがと、それに衣装も用意してもらっちまって」
　両手を軽くあげたユンがクルリと一周する。今はユンが披露する剣舞の為の衣装の試着会をしていた。厳密には昼食が終わった後、サボる口実として私とミンズーで試着会と言い出したのだが。
　メイユーが「いいのよ！」と晴れ着姿の子供を見るような眼で、ユンを見つめる。もしかしたらメイユーからしたら、子供とかと同じ感覚なのかもしれないが。
「私も見てみたかったなぁ」
　羨ましそうにミンズーが声をあげる。繊細な衣装で素晴らしいが、そのせいで言葉ですべてを説明できる気がしない。特徴的な部分をあげるとしたらどこだろう。色は黄色が基調になっている。黄色というか柚子色という話だったか。それからひらひらした布で作り上げられている感じだ。大事な部分だけなぜか見えないが、他は透けて肌が見えている。それにおへそが完全に出ていた。艶やかすぎるのではないだろうか。
　そのあたりの事をミンズーに説明してやると、想像できたのか両手で頬を包むようにして顔を少し赤らめた。
「おへそ！　ちょっと艶やかすぎる！」
　なんとなく同じ反応をしてしまったのが、悔しい。
「へそくらいで何を恥ずかしがってるんだよ」
　言われて初めて恥ずかしくなってきたのか、ユンが自分のおへそを少し擦るしぐさを見せる。強がっているが、気になっていたのかもしれない。
「隠したらもったいないですよ」
　ユンの体はとてもしなやかで引き締まっていて美しい。柔らかそうなメイユーとは、系統の違う美しさだと思う。
「変態か、シャオグー」
　そう言いつつユンは恥ずかしそうに両手でお腹を隠した。さすがにまじまじと見られて恥ずかしくなってきたらしい。ぐへへ。
「ふふっ、男の人とそういう事する時は全裸よ、その程度の事でピーピー言ってられないわよ」
　上級者の言葉。メイユー以外全員が顔を赤らめた。
「それより！」
　耐えられなくなったチュウが、話を変えるために声をあげる。
「……これを」
　チュウの手にはしゃれた感じの頭巾が乗せられていた。頭を隠すための物だ。それを見てチュウの表情が曇る。
「あぁ、そうね……耳を隠さないといけないらしくて、ごめんなさい」
　メイユーは普段から耳や尻尾を隠す必要はないと言っている。それに反してしまうのが、とても嫌なんだろう。そこにチュウが申し訳なさそうに、しゃれた頭巾をユンにかぶせる。