63 / 90
ユンの希望
07
しおりを挟む
カイレンが黙ってしまったのを見て、待っている間の話題のつもりなのかメイユーがユンに問いかける。
「というか、剣舞なんてできるの? 初耳だわ」
ただのケンカが強い人というイメージしか、ユンには抱いていなかった。剣舞についてよくわからないが、技術がいる事ができるのは少し驚きだ。
「まぁ、そこまでできるか分からないんだけどな、この機会に挑戦が、してみたい、んです」
ユンが真剣なまなざしをメイユーに向ける。今まで見た事がない表情だった。それを受けてメイユーは少し目を見開いた後、チュウの方に顔を向ける。
「チュウさん? 一人侍女が抜けるのは問題ないかしら?」
「え? えぇ大丈夫ですが」
ユンが抜けるなど、何の問題もない。基本的に仕事を増やしているのだから、むしろ居ない方が良いとまで言える。真面目に働いているユンに、それを言うのはさすがに可哀相だが、今回は口実がある。お人好しのチュウは、それを喜ぶような人間じゃないから微妙な表情を浮かべていた。
チュウの言葉を聞いて、メイユーがユンに方に視線を戻した。その顔には笑みが浮かべられている。嬉しそうな笑みだ。
「いいわ、挑戦してみなさいな」
「本当か! あっ、本当ですか……ありがとう、ございます」
嬉しそうに声をあげるユン。敬語を織り交ぜているのと喜びで、なんか変な感じの言葉使いになっている。
「いや、待ってくれ」
話が進んでしまいそうになったところを、カイレンが待ったをかけた。
「勝手に話を進められては困る」
「なに? ダメなのかしら?」
不満そうな表情で、メイユーが文句を言った。剣舞という舞の性質に気付いていない様だ。カイレンはそれに気付いている様だった。
「ダメという訳では」
カイレンは少し歯切れの悪い返事をする。まだ考えがまとまっていないのか、結論が出せていないのか、どちらかだろう。助け舟を出すわけではないが、カイレンが引っかかっている事を代わりに口にする。
「剣舞となると、危険があるかもしれないという事です、襲撃をする可能性があるとか、剣が危ないとか」
「?! 襲撃なんて」
ユンの言葉を、すかさずカイレンが遮った。
「それは、分かっている」
それを聞いてユンは黙り込んだ。さすがにカイレンがユンを疑っているという事ではない。ただ剣を使う以上、危険を考えなければいけないし、銃撃の可能性をどうしても疑ってしまう。客観的に考えて、という事だ。
その場に沈黙が流れた。こればかりはどうしようもない気がする。
「……いえ、大丈夫、私がどうにかするわ」
メイユーが笑顔でそう声をあげた。何か考えがあるという顔だ。
「……本当か?」
「えぇ、大丈夫、私に任せて、ユンは準備を始めなさい」
今にも飛び上がりそうにするのをこらえる様に、ユンが両手の拳を握り締める。
メイユーがどうにかすると言った以上、カイレンはもう何も言わなかった。ヨウズデンはユンが剣舞を踊る事に決定したという事だ。
「というか、剣舞なんてできるの? 初耳だわ」
ただのケンカが強い人というイメージしか、ユンには抱いていなかった。剣舞についてよくわからないが、技術がいる事ができるのは少し驚きだ。
「まぁ、そこまでできるか分からないんだけどな、この機会に挑戦が、してみたい、んです」
ユンが真剣なまなざしをメイユーに向ける。今まで見た事がない表情だった。それを受けてメイユーは少し目を見開いた後、チュウの方に顔を向ける。
「チュウさん? 一人侍女が抜けるのは問題ないかしら?」
「え? えぇ大丈夫ですが」
ユンが抜けるなど、何の問題もない。基本的に仕事を増やしているのだから、むしろ居ない方が良いとまで言える。真面目に働いているユンに、それを言うのはさすがに可哀相だが、今回は口実がある。お人好しのチュウは、それを喜ぶような人間じゃないから微妙な表情を浮かべていた。
チュウの言葉を聞いて、メイユーがユンに方に視線を戻した。その顔には笑みが浮かべられている。嬉しそうな笑みだ。
「いいわ、挑戦してみなさいな」
「本当か! あっ、本当ですか……ありがとう、ございます」
嬉しそうに声をあげるユン。敬語を織り交ぜているのと喜びで、なんか変な感じの言葉使いになっている。
「いや、待ってくれ」
話が進んでしまいそうになったところを、カイレンが待ったをかけた。
「勝手に話を進められては困る」
「なに? ダメなのかしら?」
不満そうな表情で、メイユーが文句を言った。剣舞という舞の性質に気付いていない様だ。カイレンはそれに気付いている様だった。
「ダメという訳では」
カイレンは少し歯切れの悪い返事をする。まだ考えがまとまっていないのか、結論が出せていないのか、どちらかだろう。助け舟を出すわけではないが、カイレンが引っかかっている事を代わりに口にする。
「剣舞となると、危険があるかもしれないという事です、襲撃をする可能性があるとか、剣が危ないとか」
「?! 襲撃なんて」
ユンの言葉を、すかさずカイレンが遮った。
「それは、分かっている」
それを聞いてユンは黙り込んだ。さすがにカイレンがユンを疑っているという事ではない。ただ剣を使う以上、危険を考えなければいけないし、銃撃の可能性をどうしても疑ってしまう。客観的に考えて、という事だ。
その場に沈黙が流れた。こればかりはどうしようもない気がする。
「……いえ、大丈夫、私がどうにかするわ」
メイユーが笑顔でそう声をあげた。何か考えがあるという顔だ。
「……本当か?」
「えぇ、大丈夫、私に任せて、ユンは準備を始めなさい」
今にも飛び上がりそうにするのをこらえる様に、ユンが両手の拳を握り締める。
メイユーがどうにかすると言った以上、カイレンはもう何も言わなかった。ヨウズデンはユンが剣舞を踊る事に決定したという事だ。
0
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説
溺愛の始まりは魔眼でした。騎士団事務員の貧乏令嬢、片想いの騎士団長と婚約?!
参
恋愛
男爵令嬢ミナは実家が貧乏で騎士団の事務員と騎士団寮の炊事洗濯を掛け持ちして働いていた。ミナは騎士団長オレンに片想いしている。バレないようにしつつ長年真面目に働きオレンの信頼も得、休憩のお茶まで一緒にするようになった。
ある日、謎の香料を口にしてミナは魔法が宿る眼、魔眼に目覚める。魔眼のスキルは、筋肉のステータスが見え、良い筋肉が目の前にあると相手の服が破けてしまうものだった。ミナは無類の筋肉好きで、筋肉が近くで見られる騎士団は彼女にとっては天職だ。魔眼のせいでクビにされるわけにはいかない。なのにオレンの服をびりびりに破いてしまい魔眼のスキルを話さなければいけない状況になった。
全てを話すと、オレンはミナと協力して魔眼を治そうと提案する。対処法で筋肉を見たり触ったりすることから始まった。ミナが長い間封印していた絵描きの趣味も魔眼対策で復活し、よりオレンとの時間が増えていく。片想いがバレないようにするも何故か魔眼がバレてからオレンが好意的で距離も近くなり甘やかされてばかりでミナは戸惑う。別の日には我慢しすぎて自分の服を魔眼で破り真っ裸になった所をオレンに見られ彼は責任を取るとまで言いだして?!
※結構ふざけたラブコメです。
恋愛が苦手な女性シリーズ、前作と同じ世界線で描かれた2作品目です(続きものではなく単品で読めます)。今回は無自覚系恋愛苦手女性。
ヒロインによる一人称視点。全56話、一話あたり概ね1000~2000字程度で公開。
前々作「訳あり女装夫は契約結婚した副業男装妻の推し」前作「身体強化魔法で拳交える外交令嬢の拗らせ恋愛~隣国の悪役令嬢を妻にと連れてきた王子に本来の婚約者がいないとでも?~」と同じ時代・世界です。
※小説家になろう、ノベルアップ+にも投稿しています。※R15は保険です。
不憫な侯爵令嬢は、王子様に溺愛される。
猫宮乾
恋愛
再婚した父の元、継母に幽閉じみた生活を強いられていたマリーローズ(私)は、父が没した事を契機に、結婚して出ていくように迫られる。皆よりも遅く夜会デビューし、結婚相手を探していると、第一王子のフェンネル殿下が政略結婚の話を持ちかけてくる。他に行く場所もない上、自分の未来を切り開くべく、同意したマリーローズは、その後後宮入りし、正妃になるまでは婚約者として過ごす事に。その内に、フェンネルの優しさに触れ、溺愛され、幸せを見つけていく。※pixivにも掲載しております(あちらで完結済み)。
行き遅れにされた女騎士団長はやんごとなきお方に愛される
めもぐあい
恋愛
「ババアは、早く辞めたらいいのにな。辞めれる要素がないから無理か? ギャハハ」
ーーおーい。しっかり本人に聞こえてますからねー。今度の遠征の時、覚えてろよ!!
テレーズ・リヴィエ、31歳。騎士団の第4師団長で、テイム担当の魔物の騎士。
『テレーズを陰日向になって守る会』なる組織を、他の師団長達が作っていたらしく、お陰で恋愛経験0。
新人訓練に潜入していた、王弟のマクシムに外堀を埋められ、いつの間にか女性騎士団の団長に祭り上げられ、マクシムとは公認の仲に。
アラサー女騎士が、いつの間にかやんごとなきお方に愛されている話。
聖獣の卵を保護するため、騎士団長と契約結婚いたします。仮の妻なのに、なぜか大切にされすぎていて、溺愛されていると勘違いしてしまいそうです
石河 翠
恋愛
騎士団の食堂で働くエリカは、自宅の庭で聖獣の卵を発見する。
聖獣が大好きなエリカは保護を希望するが、領主に卵を預けるようにと言われてしまった。卵の保護主は、魔力や財力、社会的な地位が重要視されるというのだ。
やけになったエリカは場末の酒場で酔っ払ったあげく、通りすがりの騎士団長に契約結婚してほしいと唐突に泣きつく。すると意外にもその場で承諾されてしまった。
女っ気のない堅物な騎士団長だったはずが、妻となったエリカへの態度は甘く優しいもので、彼女は思わずときめいてしまい……。
素直でまっすぐ一生懸命なヒロインと、実はヒロインにずっと片思いしていた真面目な騎士団長の恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID749781)をお借りしております。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
逃げるための後宮行きでしたが、なぜか奴が皇帝になっていました
吉高 花
恋愛
◆転生&ループの中華風ファンタジー◆
第15回恋愛小説大賞「中華・後宮ラブ賞」受賞しました!ありがとうございます!
かつて散々腐れ縁だったあいつが「俺たち、もし三十になってもお互いに独身だったら、結婚するか」
なんてことを言ったから、私は密かに三十になるのを待っていた。でもそんな私たちは、仲良く一緒にトラックに轢かれてしまった。
そして転生しても奴を忘れられなかった私は、ある日奴が綺麗なお嫁さんと仲良く微笑み合っている場面を見てしまう。
なにあれ! 許せん! 私も別の男と幸せになってやる!
しかしそんな決意もむなしく私はまた、今度は馬車に轢かれて逝ってしまう。
そして二度目。なんと今度は最後の人生をループした。ならば今度は前の記憶をフルに使って今度こそ幸せになってやる!
しかし私は気づいてしまった。このままでは、また奴の幸せな姿を見ることになるのでは?
それは嫌だ絶対に嫌だ。そうだ! 後宮に行ってしまえば、奴とは会わずにすむじゃない!
そうして私は意気揚々と、女官として後宮に潜り込んだのだった。
奴が、今世では皇帝になっているとも知らずに。
※タイトル試行錯誤中なのでたまに変わります。最初のタイトルは「ループの二度目は後宮で ~逃げるための後宮でしたが、なぜか奴が皇帝になっていました~」
※設定は架空なので史実には基づいて「おりません」
異世界で狼に捕まりました。〜シングルマザーになったけど、子供たちが可愛いので幸せです〜
雪成
恋愛
そういえば、昔から男運が悪かった。
モラハラ彼氏から精神的に痛めつけられて、ちょっとだけ現実逃避したかっただけなんだ。現実逃避……のはずなのに、気付けばそこは獣人ありのファンタジーな異世界。
よくわからないけどモラハラ男からの解放万歳!むしろ戻るもんかと新たな世界で生き直すことを決めた私は、美形の狼獣人と恋に落ちた。
ーーなのに、信じていた相手の男が消えた‼︎ 身元も仕事も全部嘘⁉︎ しかもちょっと待って、私、彼の子を妊娠したかもしれない……。
まさか異世界転移した先で、また男で痛い目を見るとは思わなかった。
※不快に思う描写があるかもしれませんので、閲覧は自己責任でお願いします。
※『小説家になろう』にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる