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メイユーとチュウ

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「それに元々は下級側妃だったのよ、私」
「メイユー様が?!」
「そんなに驚く事かしら?」
 メイユーが人差し指を口の前に立てる。チュウが寝ているのだった。もう意味がないのに一応口を両手で押さえる。
 帝に気に入られて上級側妃になったという口だったらしい。お菓子横領事件の事を思い出す。この人は腹黒い。それが数多の下級側妃たちを出し抜いて、帝に気に入られた手腕の産物なのかもしれない。
「……帝のちょっとした弱みを握って、今の地位を手に入れたのよ」
 気に入られたわけではなかった。腹黒さの使いどころはそっちだったか。
「好き勝手やってる割に、お咎めがないのはそういう理由でしたか」
「ふふっ、でも帝に全く気に入られてないという事じゃないわよ」
 弱みを見せたという事は、そういう事なのだろう。それに帝と夜を共にしている。嫌悪されていたら、そういう事にはならない。帝は女の尻に敷かれたい男なんだろうか。
「……そうまでして獣憑きを助けたかったのですか?」
 下級の貴族では、多くの獣憑きを助けるのは難しいかもしれない。だからこそ帝の上級側妃になったという事だろうか。いろいろな意見を身分の力でねじ伏せられるし、お金も下級貴族よりは使える金額は大きいだろう。
 その辺は理解できるが、こんな面倒な事をしている理由がよくわからなかった。獣憑きの力を利用したいという感じでもない。結果的にミンズーの獣憑きの力を活用しているが、最初からそれが目的で助けたという事でもなかった。そのあたりは話を聞いた時に、嘘の匂いがしていないから確かだ。
「昔ね……子供の頃」
 メイユーが悲しみに満ちた表情を浮かべて、言葉を続ける。
「家で獣憑きが奴隷として働いていたのよ、それでその獣憑きの人と仲良くしていたのよ」
 罪を犯した者を刑罰として奴隷にしたり、戦争捕虜を奴隷にしたりそういう事はあるが、奴隷は原則禁止されている。そういった人間以外は奴隷にしてはいけないのだ。つまり獣憑きは人間ではない。だからその原則禁止に含まれていない。家畜なのだ。悲しい事に。
 気が重たくなる。私も捕まっていたら、そういう扱いにされていたのかもしれない。
「気持ちのいい話ではないのだけど」
 ため息をついたメイユーが、そう前置きして言葉を続ける。
「その人……重労働のせいで亡くなってしまって」
「重労働、ですか」
 下級の貴族だったからこそ、沢山の奴隷を所有する事ができず、その人一人にしわ寄せがいってしまったのだろう。
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