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愛があれば
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「……きっと、という事は見た訳ではないんですよね?」
「それは、そうですが」
言葉と共に、グイファの勢いが急に萎んでしまう。やはり何かを目撃した訳ではないらしい。その割に自信がある様だったが。
「どうしてそう考えるのか、その根拠は何ですか?」
少しゆっくりと問いかける。もしかしたら興奮しているのかもしれない。何かを知っていて、チンインの為に早く伝えなければと、気持ちだけが先走っているのかもしれない。
「チンインは」
なぜかグイファが、迷う様に言葉を続ける。何か隠しているような風にも見えるが、今は追及などせずに話を聞いておこう。
「後宮の外に抜け出したりしていません、私達いつも一緒にいたのでわかります……それに」
一度言葉を切る。少し心の臓の脈打ちが早まった。やっぱり何か隠しているのか。
「チンインは男が苦手でした……なので自分から男に身を預ける事はしないはずです」
「それらの理由から、チンインは忍び込んだ男に乱暴された、と」
確かめる様に口を出すと、カイレンがこちらに顔を向ける。とりあえずグイファの言動はそれで説明できるだろう。私はカイレンに頷いて見せた。
だが気になる事はある。グイファは嘘をついた。男が苦手という言葉を出したところで、嘘の匂いがしたのだ。でもいつも一緒にいたというのは、本当の様である。
「……わかりました」
今嘘に関して問い詰めても、上手くいきそうにない。私自身が考えが上手くまとめられていない。一旦、考えを整理しなければ。
「私が殺すのは諦めます、だから男を絶対に捕まえて罰してください!」
男が忍び込んでチンインに乱暴した。それを信じて疑っていない、という言葉の強さだ。それゆえに一部だけの嘘が際立って違和感だった。
「……努力しよう」
無難なカイレンの言葉に、グイファは若干不満そうな表情を浮かべる。それでも納得するしかないというのは分かっているようで、頭を下げた後その場を去っていった。
「どうだ?」
グイファの背中を見送りながら、カイレンが問いかけてくる。
「どちらの者の事ですか?」
「二人ともだ」
まぁそうだろう。チンインと、計らずとも関係が深そうなグイファから話が聞けた。この妊娠騒動の中心はこの二人の様な気がする。男もいるが、そちらを追うより解決に近そうな気がした。ただ、一度に気になる事が出てきたせいで、考えがまとまっていない。
「一度、考えをまとめさせてください」
「わかった」
カイレンがそう口にして、ヨウズデンのある方向に向かって歩き出す。私はその背中について歩き出した。
「それは、そうですが」
言葉と共に、グイファの勢いが急に萎んでしまう。やはり何かを目撃した訳ではないらしい。その割に自信がある様だったが。
「どうしてそう考えるのか、その根拠は何ですか?」
少しゆっくりと問いかける。もしかしたら興奮しているのかもしれない。何かを知っていて、チンインの為に早く伝えなければと、気持ちだけが先走っているのかもしれない。
「チンインは」
なぜかグイファが、迷う様に言葉を続ける。何か隠しているような風にも見えるが、今は追及などせずに話を聞いておこう。
「後宮の外に抜け出したりしていません、私達いつも一緒にいたのでわかります……それに」
一度言葉を切る。少し心の臓の脈打ちが早まった。やっぱり何か隠しているのか。
「チンインは男が苦手でした……なので自分から男に身を預ける事はしないはずです」
「それらの理由から、チンインは忍び込んだ男に乱暴された、と」
確かめる様に口を出すと、カイレンがこちらに顔を向ける。とりあえずグイファの言動はそれで説明できるだろう。私はカイレンに頷いて見せた。
だが気になる事はある。グイファは嘘をついた。男が苦手という言葉を出したところで、嘘の匂いがしたのだ。でもいつも一緒にいたというのは、本当の様である。
「……わかりました」
今嘘に関して問い詰めても、上手くいきそうにない。私自身が考えが上手くまとめられていない。一旦、考えを整理しなければ。
「私が殺すのは諦めます、だから男を絶対に捕まえて罰してください!」
男が忍び込んでチンインに乱暴した。それを信じて疑っていない、という言葉の強さだ。それゆえに一部だけの嘘が際立って違和感だった。
「……努力しよう」
無難なカイレンの言葉に、グイファは若干不満そうな表情を浮かべる。それでも納得するしかないというのは分かっているようで、頭を下げた後その場を去っていった。
「どうだ?」
グイファの背中を見送りながら、カイレンが問いかけてくる。
「どちらの者の事ですか?」
「二人ともだ」
まぁそうだろう。チンインと、計らずとも関係が深そうなグイファから話が聞けた。この妊娠騒動の中心はこの二人の様な気がする。男もいるが、そちらを追うより解決に近そうな気がした。ただ、一度に気になる事が出てきたせいで、考えがまとまっていない。
「一度、考えをまとめさせてください」
「わかった」
カイレンがそう口にして、ヨウズデンのある方向に向かって歩き出す。私はその背中について歩き出した。
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