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愛があれば

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 客室にカイレンを通すと、チュウがお茶の準備のために部屋を出て行く。ユンはメイユーを呼びに行っていた。私だけやる事を見つけられず、部屋に取り残される。とりあえず壁際に立ち、空気になろうとしていた。もちろんそんな事で存在が消せる訳もなく、カイレンがこちらを気にする様に顔を向ける。何も用事は無いけど、忙しいふりをして部屋を出ようかと思った矢先、カイレンが口を開く。
「……く」
「結構です」
「まだ何も言っていないぞ」
 懐に手を入れている時点で察しが付く。
「聞かなくてもわかります……私を撫でるために来られたのですか?」
「違う」
 即答だった。しかも嘘の匂いはしない。本当の事の様だ。何か別の用事で訪ねてきたらしい。私が目に入ったから、懐に忍ばせていた物を使おうと思い立ったという所だろう。
「そうですか……私は、ついでですか」
 つい口に出してしまった。いや、そんな事は露ほど思っていなかった。はずなのに、なんでそんな事を口にしてしまったのか。途中で気づいて声を小さくする。幸いカレンの耳にはすべての言葉は届かなかったらしく「聞こえないぞ」と少し眉をひそめるばかりだった。
 今は顔を見られたくなかった。足音が聞こえてきていたため、扉の方に体を向ける。それから小さく頭を下げて、メイユーを出迎えた。
「待たせたわね」
 ユンとミンズーを引き連れて部屋に入ってきたメイユー。それからカイレンと机を挟んで対面の席につく。
「何か用かしら? いつもの様子見?」
 カイレンは普段から警備の責任者として、後宮の各所を回って様子を見ている。それはそこの人間が気付かなくても、カイレン自身が普段から見ていれば異変に気付ける。そんな理由からだ。そういう事をしているから、自然と困りごとや頼まれごとを任される事が多いらしい。
「いえ、今日はお願いがあり、訪問させていただきました」
 そこまで言って、カイレンがこちらに視線を送ってくる。なんで私を見るのか。そう思っていると、すぐにメイユーに視線を戻して言葉を続けた。
「シャオグーに知恵を借りたいのです」
 突然の申し出に少したじろぐ。知恵を借りたいって。尻尾を借りたい、の間違いではないのか。いや、それも困るが。
「そんな事なら私に断りを入れなくても、シャオグーに直接聞けばいいのに」
 少し呆れた様子でメイユーが少し笑う。それに対して、カイレンは真面目な表情を崩さず返した。
「いえ、シャオグーの主人はメイユー様、その様な勝手はできません」
 勝手に撫でようとしてきたが。カイレンの基準はどうなっているのだ。
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