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愛があれば

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「人手不足ね」
 朝の部屋の掃除をしている最中だった。チュウが突然、ため息まじりでそんな事を言ったのだ。本当に何気なく言ったという感じだ。
 侍女は私とユンが全くの戦力外の為、実質チュウの他三人の侍女で回している事になる。仕事自体は優秀な人材が揃っている為、問題なく回っているが負担は計り切れない。殆ど朝から晩まで働き詰めで、休日もない。侍女はそういう物だと言ってしまえばそれまでだが、メイユーはそれを許していないし、チュウもそれに同意している。
 チュウの性格は分かってきた。たまに怖いが基本的にお人好しだ。だからこそ、嫌味という事は無いと思うが。
「申し訳ありません、お力になれず」
 ハッとした表情を浮かべるチュウ。それからすぐに顔を横に振った。
「違うの! シャオグーを責めてる訳じゃあ」
「はい、それは理解しています」
 理解はしている。ただやっぱり良くしてもらっているし、メイユーの力にもなりたい。だからこそと、言葉を続ける。
「……本当に戦力になれていないのが申し訳なくて」
「そう思ってくれるだけでも」
 チュウが呟くと、ユンに視線を送る。当の本人はその視線に気づいてニカッと笑い「なんだ?」と問いかけてきた。こうはなりたくない。たぶん悪気は本当に無い。
 一瞬だけ固まった後、目を泳がせてからチュウが口を開く。
「いえ、ユンの良い所は他の部分で」
 言い聞かせている様な言い方である。何だか居た堪れなくなってしまう。人を増やせない事情があるのか、そんな問いが出かかって寸前で止めた。
 聞くまでもなく、容易に返ってくる言葉が予想できる。獣憑きに対して、酷い態度を取る人物を入れる訳にいかない。態度を取らなくても、心のどこかで獣憑きへの嫌悪感がある人でさえ、入れない様に気を付けているのだろう。
 全ては私達を中心に考えてくれている。そのせいで人手不足だ。私達が頑張るのが筋という物だ。とりあえずユンのお腹をつねる。引き締まったお腹で掴めるお肉がない。何とか皮を摘まむ。
「な、なんだよ」
「そうすべきと思ったので」
「意味が分からんぞ」
 それがいけないんだ。さっきの話から察してほしい物だ。まぁそれができていたら、こんな事になっていないが。
 もうつねるのをやめてるのに、やいのやいのと文句を言い始めるユンを無視して、仕事を再開しようとする。だがそんな時、遠くの方で足音が聞こえた。カイレンが訪ねてきたらしい。人手不足の話をしている時に、性懲りもなく私の尻尾を撫でるためにやって来たのか。
「カイレン様が訪ねてこられたようです」
 声に若干の呆れが含まれてしまった。
「……ありがとうございます」
 謎の間を開けた後、チュウが返事をして出迎えるために部屋を出た。
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