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お菓子横領事件

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 どうしてお菓子なんて言い方をしたんだろう。探し物を見つける問いかけなら、月餅が無くなっていた、という方が自然ではないだろうか。
 いやだが、もしかしたらただの言葉の選び方を少し間違えただけかもしれない。証拠は全くない。ただの憶測、いや突拍子もない想像かもしれない。でもカイレンに問えばそれもはっきりする。ただの想像か、否か。
「カイレン様、確認したい事があります」
「ぴっ」
「? 次はなんだ」
 カイレンが呆れた声を出す。意味が分からない事ばかりが起こっている訳だからしょうがないが。
「シャオグー!」
 カイレンへの問いかけをしようとした所で、ミンズーにそう声をかけられて遮られる。邪魔をする気なのか。
「私の仲間になれ、そうすればアレの半分をお前にやろう」
 意味が分からないが、これは殆ど自白の様な物だった。認めたと言っていい。というか皆で食べた方が良いに決まっている。そんな事もわからないのか。呆れた物だ。うん。ミンナデタベル、タノシイ。
「カイレン様、ミンズーにお菓子をあげたのは、これが初めてではないですよね? これまでにも何度かあったのでは?」
「? あぁそうだが? 断っているのに……赤妃(チーヒ)からいろいろ頂くのだ、数も多くてそんなにいらないのでな、ヨウズデンの者たちに……メイユー様に差し上げようと」
 カイレンがミンズーに渡していたのは、どうせ毒見役を通さなければいけないから、手間を省くために直接渡していたのだろう。
 これではっきりした。ミンズーはこれまでに月餅以外の物ももらっていた。その意識があったから、カイレンから貰った物はお菓子とまとめて言っていたのだ。皆で食べろよ、と言われて貰ったお菓子を、今まで独り占めしていたという事だ。
「ミ、ン、ズゥ~? 私今までそういうお菓子食べたことないわぁ?」
 メイユーの声が響く。そしてガタガタと震えていたミンズーの両肩をしっかり掴む。とっても笑顔だった。
「ひゃいっ、どどどどどういうこと、でしょうねぇ」
「そうねぇ、どこいっちゃったのかしらぁ? ちょっとあっちの部屋でぇ、思い出せるように二人でお話ししましょうかぁ、フフフ」
「ひっ、ひゃぁ、ごめんなさい、ごめんなさい!」
 抵抗する暇もなく、ミンズーの姿が見えなくなってしまった。
 よし、これでつまみ食いの件はうやむやになった。
「ふむ、これから菓子を持ってくる際は、メイユー様に直接渡そう」
 カイレンが私の隣に並びながらそう口にする。
「……まぁそうですね」
 さすがにもうミンズーは、同じ事をしないと思うが。
「お前が、この横領事件を明らかにしたのか?」
「……複雑に絡み合った難しい事件でした」
 間違いではない。
「よくやったな、褒美に撫でてやろう」
 カイレンは表情を変えずに、手を伸ばしかけている。いつも待機が早い。
「褒美になっていないので、結構です」
 私はカイレンから数歩離れると、振り返って少し微笑んで見せる。撫でさせてあげない。カイレンは残念そうに手を下した。この姿もなかなか可愛らしいかもしれない。そんな事を思ってしまい、少し顔が熱くなってしまった。
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