20 / 90
お菓子横領事件
03
しおりを挟む
まぁそんな事は些細な問題である。それよりも重要な事があった。私が食べた時は月餅は一個しかなかった。だが、ミンズーの言葉から月餅は複数あった事がわかる。つまり私が食べる前に、食べた人間がいるという事だ。誠に遺憾である。
しかし、一番最初に犯人を見つける事ができれば、その人に罪を擦り付ける事が可能だ。私に犯人として名指しされた人のいう事を、みんなが聞くはずはない。ここに初めて来た時にガツンとやっているから、私の推理にはおそらくそれなりの説得力があるはずだ。勝った。
「……シャオグー、何かないの?」
ミンズーが絞り出す様に問いかけてくる。苦渋の決断という感じの表情。私も容疑者だが、それを差し引いても頼ってしまう物があるという事。予想は当たっていたらしい。
「……シャオグーも容疑者なら」
口を開こうとしたした所で、メイユーがそんな風に遮った。それからこちらを見て少し微笑んだ後、言葉を続ける。
「その言葉は信用できないんじゃないかしら?」
もちろんその話は出てきて当たり前だった。そして、予想通りメイユーの口から聞く事になった。おそらく一番の障害はこの人だ。
メイユーの諭すような声に、ミンズーは小さく唸る。これでは主導権を握られてしまう。すぐさま反論しなければ。
「メイユー様の言う通りですが、このまま無言でいる訳にいかないのも事実です」
「……そうね」
なぜだかメイユーは、そんな風に言って余裕そうに微笑む。
「こんな事やめましょう、ね? ミンズー」
そんな事を口にすると、メイユーはミンズーの肩に触れる。心が揺れている様に「むぅ」と唸るミンズー。誰かに罪を擦り付けるのは良くない事かもしれない。このままメイユーが説得を成功させれば、この事自体うやむやにできるかもしれない。ならば邪魔せず任せるべきだろうか。私はメイユーの顔に目を向ける。
「なっ」
なんという事だろうか。メイユーがニヤリと笑っているのが見える。やっぱり予想通りそういう事なんだろうか。この甘い匂いのお香を焚いたのは、今日はそういう気分だったとか、そういう事ではない。この人がもう一人の犯人で、月餅の匂いを消すためにお香を焚いたのだ。数あるお香の中から、甘い匂いの物を選んだのもそのためだろう。
メイユーが共犯ならば、このまま任せてしまった方が良い。うやむやにして終わりにしてもらおう。
「ッ!」
メイユーはミンズーの横に並ぶと、勝ち誇ったような表情を浮かべた。もしかして、うやむやにする気なんてなく、私に罪を擦り付けて終わりにする気か。
しかし、一番最初に犯人を見つける事ができれば、その人に罪を擦り付ける事が可能だ。私に犯人として名指しされた人のいう事を、みんなが聞くはずはない。ここに初めて来た時にガツンとやっているから、私の推理にはおそらくそれなりの説得力があるはずだ。勝った。
「……シャオグー、何かないの?」
ミンズーが絞り出す様に問いかけてくる。苦渋の決断という感じの表情。私も容疑者だが、それを差し引いても頼ってしまう物があるという事。予想は当たっていたらしい。
「……シャオグーも容疑者なら」
口を開こうとしたした所で、メイユーがそんな風に遮った。それからこちらを見て少し微笑んだ後、言葉を続ける。
「その言葉は信用できないんじゃないかしら?」
もちろんその話は出てきて当たり前だった。そして、予想通りメイユーの口から聞く事になった。おそらく一番の障害はこの人だ。
メイユーの諭すような声に、ミンズーは小さく唸る。これでは主導権を握られてしまう。すぐさま反論しなければ。
「メイユー様の言う通りですが、このまま無言でいる訳にいかないのも事実です」
「……そうね」
なぜだかメイユーは、そんな風に言って余裕そうに微笑む。
「こんな事やめましょう、ね? ミンズー」
そんな事を口にすると、メイユーはミンズーの肩に触れる。心が揺れている様に「むぅ」と唸るミンズー。誰かに罪を擦り付けるのは良くない事かもしれない。このままメイユーが説得を成功させれば、この事自体うやむやにできるかもしれない。ならば邪魔せず任せるべきだろうか。私はメイユーの顔に目を向ける。
「なっ」
なんという事だろうか。メイユーがニヤリと笑っているのが見える。やっぱり予想通りそういう事なんだろうか。この甘い匂いのお香を焚いたのは、今日はそういう気分だったとか、そういう事ではない。この人がもう一人の犯人で、月餅の匂いを消すためにお香を焚いたのだ。数あるお香の中から、甘い匂いの物を選んだのもそのためだろう。
メイユーが共犯ならば、このまま任せてしまった方が良い。うやむやにして終わりにしてもらおう。
「ッ!」
メイユーはミンズーの横に並ぶと、勝ち誇ったような表情を浮かべた。もしかして、うやむやにする気なんてなく、私に罪を擦り付けて終わりにする気か。
0
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説
【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!
雨宮羽那
恋愛
いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。
◇◇◇◇
私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。
元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!
気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?
元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!
だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。
◇◇◇◇
※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。
※アルファポリス先行公開。
※表紙はAIにより作成したものです。
呪配
真霜ナオ
ホラー
ある晩。いつものように夕食のデリバリーを利用した比嘉慧斗は、初めての誤配を経験する。
デリバリー専用アプリは、続けてある通知を送り付けてきた。
『比嘉慧斗様、死をお届けに向かっています』
その日から不可解な出来事に見舞われ始める慧斗は、高野來という美しい青年と衝撃的な出会い方をする。
不思議な力を持った來と共に死の呪いを解く方法を探す慧斗だが、周囲では連続怪死事件も起こっていて……?
「第7回ホラー・ミステリー小説大賞」オカルト賞を受賞しました!
大好きだけど、結婚はできません!〜強面彼氏に強引に溺愛されて、困っています〜
楠結衣
恋愛
冷たい川に落ちてしまったリス獣人のミーナは、薄れゆく意識の中、水中を飛ぶような速さで泳いできた一人の青年に助け出される。
ミーナを助けてくれた鍛冶屋のリュークは、鋭く睨むワイルドな人で。思わず身をすくませたけど、見た目と違って優しいリュークに次第に心惹かれていく。
さらに結婚を前提の告白をされてしまうのだけど、リュークの夢は故郷で鍛冶屋をひらくことだと告げられて。
(リュークのことは好きだけど、彼が住むのは北にある氷の国。寒すぎると冬眠してしまう私には無理!)
と断ったのに、なぜか諦めないリュークと期限付きでお試しの恋人に?!
「泊まっていい?」
「今日、泊まってけ」
「俺の故郷で結婚してほしい!」
あまく溺愛してくるリュークに、ミーナの好きの気持ちは加速していく。
やっぱり、氷の国に一緒に行きたい!寒さに慣れると決意したミーナはある行動に出る……。
ミーナの一途な想いの行方は?二人の恋の結末は?!
健気でかわいいリス獣人と、見た目が怖いのに甘々なペンギン獣人の恋物語。
一途で溺愛なハッピーエンドストーリーです。
*小説家になろう様でも掲載しています
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
【第一部完結】保健室におっさんは似合わない!
ウサギテイマーTK
キャラ文芸
加藤誠作は私立男子校の養護教諭である。元々は、某旧帝大の医学部の学生だったが、動物実験に嫌気がさして、医学部から教育学部に転部し、全国でも70人くらいしかいない、男性の養護教諭となった、と本人は言っている。有名な推理小説の探偵役のプロフを、真似ているとしか言えない人物である。とはいえ、公立の教員採用試験では、何度受けても採点すらしてもらえない過去を持ち、勤務態度も決して良いとは言えない。ただ、生徒の心身の問題に直面すると、人が変わったように能力を発揮する。これは加藤と加藤の同僚の白根澤が、学校で起こった事件を解決していく、かもしれない物語である。
第一部完結。
現在エピソード追加中。
紅玉宮妃(予定)の後宮奮闘記~後宮下女ですがわたしの皇子様を皇帝にします~
福留しゅん
恋愛
春華国の後宮は男子禁制だが例外が存在する。その例外である未成年の第五皇子・暁明はお忍びで街を散策していたところ、旅人の雪慧に助けられる。雪慧は後宮の下女となり暁明と交流を深めていくこととなる。やがて親密な関係となった雪慧は暁明の妃となるものの、宮廷内で蠢く陰謀、傾国の美女の到来、そして皇太子と皇帝の相次ぐ死を経て勃発する皇位継承争いに巻き込まれていくこととなる。そして、春華国を代々裏で操ってきた女狐と対峙しーー。
※改訂作業完了。完結済み。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる