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お菓子横領事件
01
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一仕事終えた後の日差しはなんだか気持ちいい。そんな事を思いつつ、メイユーがいる部屋へと私は戻ってきた。部屋の前に立つと中から何やら甘い匂いが漏れだしてきている。お香だろうか。
「失礼します」
部屋の前で声をかけて扉を開くと、中から甘い匂いが流れ出てくる。頭を軽く下げてから部屋に入ると後ろ手に扉を閉めた。
「いい香りでしょ、良い物なのよ、たまにはいいでしょう、フフ」
「はい……いい香りです」
メイユーは上機嫌だ。何かあったのだろうか。メイユーはお香を焚く事はあまりない。こうして焚いているのだから、嫌いという事ではないと思うが。もしかしたら、匂いが強い物を避けているのかもしれない。ミンズーは毒を匂いで嗅ぎ分ける。その能力の邪魔になってしまうから。
それにしても、鼻が良くてもこういう香りが強すぎて辛くなったりしないのは、不思議だ。普通に楽しめる。
「いい匂いだ」
「ユンにそういうのが分かるんですか?」
ガサツなユンに、繊細なお香について理解できると思えなかった。くさいとか言いそうな気がしていた。
「いい匂いかどうかぐらいわかるわ」
心外という感じで、ユンが声をあげる。繊細な事はわからない、という自覚がありそうな言葉だ。そのやり取りにチュウが微笑む。
どうして、チュウがお香を焚かなかったのか。メイユーが自ら焚いているのはどうしてか。ふとそんな事を思いつつ、わざわざ問いただす事でもないと思い直す。
「あれ?」
外から足音が聞こえてきた。何というか慌てているというか、怒っているというか。騒がしい感じの足音だ。重みを感じない足音だから、今ここに居ないミンズーだろうか。
「どうしたのかしら?」
メイユーに問われて、返そうとする。だがそれより早くミンズーが部屋の前に到達した。鼻息が荒い。やはり怒っているだろうか。
「どこを探しても無い!」
声を荒げながら扉を開けたミンズー。一瞬、驚いた様な顔をしてから、おずおずと声をあげる。
「あれ? 誰かいるよね? 音はするけど」
目が見えないミンズーはその場の状況を確認するのに、嗅覚と聴覚を使っている。その嗅覚がこのお香のおかげで上手く機能しなかったのだろう。そのせいで不安になってしまったという感じか。
「フフ、いるわよ」
メイユーのあげた声の感じが少し違う。そう思ってメイユーの顔を見ると、ニヤリと笑っていた気がした。でもすでにいつもの微笑みに戻っている。見間違いだろうか。
「どうしたのかしら? とりあえず中に入って、扉を閉めて」
言われるがままミンズーは中に入ると、扉を閉める。お香の匂いの空白部分がすぐに埋められた。
「大事に取っておいたお菓子がなくなってるの! 誰か勝手に食べたでしょ!」
そして、思い出したようにミンズーが声を荒げた。
「失礼します」
部屋の前で声をかけて扉を開くと、中から甘い匂いが流れ出てくる。頭を軽く下げてから部屋に入ると後ろ手に扉を閉めた。
「いい香りでしょ、良い物なのよ、たまにはいいでしょう、フフ」
「はい……いい香りです」
メイユーは上機嫌だ。何かあったのだろうか。メイユーはお香を焚く事はあまりない。こうして焚いているのだから、嫌いという事ではないと思うが。もしかしたら、匂いが強い物を避けているのかもしれない。ミンズーは毒を匂いで嗅ぎ分ける。その能力の邪魔になってしまうから。
それにしても、鼻が良くてもこういう香りが強すぎて辛くなったりしないのは、不思議だ。普通に楽しめる。
「いい匂いだ」
「ユンにそういうのが分かるんですか?」
ガサツなユンに、繊細なお香について理解できると思えなかった。くさいとか言いそうな気がしていた。
「いい匂いかどうかぐらいわかるわ」
心外という感じで、ユンが声をあげる。繊細な事はわからない、という自覚がありそうな言葉だ。そのやり取りにチュウが微笑む。
どうして、チュウがお香を焚かなかったのか。メイユーが自ら焚いているのはどうしてか。ふとそんな事を思いつつ、わざわざ問いただす事でもないと思い直す。
「あれ?」
外から足音が聞こえてきた。何というか慌てているというか、怒っているというか。騒がしい感じの足音だ。重みを感じない足音だから、今ここに居ないミンズーだろうか。
「どうしたのかしら?」
メイユーに問われて、返そうとする。だがそれより早くミンズーが部屋の前に到達した。鼻息が荒い。やはり怒っているだろうか。
「どこを探しても無い!」
声を荒げながら扉を開けたミンズー。一瞬、驚いた様な顔をしてから、おずおずと声をあげる。
「あれ? 誰かいるよね? 音はするけど」
目が見えないミンズーはその場の状況を確認するのに、嗅覚と聴覚を使っている。その嗅覚がこのお香のおかげで上手く機能しなかったのだろう。そのせいで不安になってしまったという感じか。
「フフ、いるわよ」
メイユーのあげた声の感じが少し違う。そう思ってメイユーの顔を見ると、ニヤリと笑っていた気がした。でもすでにいつもの微笑みに戻っている。見間違いだろうか。
「どうしたのかしら? とりあえず中に入って、扉を閉めて」
言われるがままミンズーは中に入ると、扉を閉める。お香の匂いの空白部分がすぐに埋められた。
「大事に取っておいたお菓子がなくなってるの! 誰か勝手に食べたでしょ!」
そして、思い出したようにミンズーが声を荒げた。
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