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後宮案内と宦官の思い
08
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「……何をブツブツ言っている」
いきなりカイレンのそんな声が聞こえて、少し驚いてしまう。聞いた事をしっかり頭に刻み込もうとしていたせいで、かなり集中してしまっていた様だ。
「あっ、いえ、先ほど教えていただいた事を復習しておりました」
いきなりすべて覚える必要は無いのかもしれない。それでも出来たら何度も誰かの手を煩わせるのは避けたい。
「そうか」
そう言って止めた足を再開させながら、カイレンが声をあげる。
「それでは成果を問おうか」
「成果……はい」
先ほど聞かされた、後宮に関する内容を問うという事だろう。そのままカイレンは、こちらを見る事もせずに歩きながら問いかけてきた。
「では……後宮には入口はいくつある?」
「一つです」
その一つの入り口からバイタオデンまで、大きな道が一本通っている。その道の左右にそれぞれの上級側妃と下級側妃の居所があるのだ。
「下働きの者たちの寝所兼仕事場はどこだ?」
「入口の辺りです」
ある意味一番泥臭い場所だ。高貴な方の住まう場所から一番遠い場所にある。バイタオデンと仕事場の往復は大変だろうな。
「儀式や式典はどこで催される?」
「えぇっと」
どこだったか。聞いたはずなのに記憶にない。そんな風に言葉に詰まると、すぐさまカイレンが口を開く。
「我々は広場と呼んでいるが、中央に通っている道だ」
「……ありがとうございます」
カイレンの背中に軽く頭を下げて、礼を口にする。見られていなくても、下の者の務めだ。
それにしても意地の悪い問い方だ。私が口にしていた上級側妃の居所については問わず、別の部分を問うてきた。まぁ、復習していた部分はもう必要ないと考えたなら、確かにその通りなのだが。
憎々しく背中を見つめていると、カイレンは立ち止まりこちらに顔を向けた。私は急いで小さく頭を下げる。睨んでいたのがバレていなければいいが。
「まぁいいだろう……やはり賢いな」
「いえ、その様な事は」
賢いという言葉はなんだかむず痒くなる。今まで褒められたことなど一度もない。むしろ逆に生意気だと不評を買っていた。適度にバカな所を演じていたのに。
「どうした?」
「いえ」
さすがここまで昇ってきているだけあって、カイレンは鋭い。私が少しむず痒そうにしただけで、気付いたらしい。
「まぁいい……よくやったな、褒美に撫でてやろう、尻尾を」
おや。私はそう思い顔をあげると、手を伸ばしかけているカイレンと目が合う。褒美になっておりませんが。それに先ほど撫でられたいと思わないと申し上げましたが。
さすがに許可を得ずに、いきなり撫でたりしない様だ。カイレンは返事を待っている。
いきなりカイレンのそんな声が聞こえて、少し驚いてしまう。聞いた事をしっかり頭に刻み込もうとしていたせいで、かなり集中してしまっていた様だ。
「あっ、いえ、先ほど教えていただいた事を復習しておりました」
いきなりすべて覚える必要は無いのかもしれない。それでも出来たら何度も誰かの手を煩わせるのは避けたい。
「そうか」
そう言って止めた足を再開させながら、カイレンが声をあげる。
「それでは成果を問おうか」
「成果……はい」
先ほど聞かされた、後宮に関する内容を問うという事だろう。そのままカイレンは、こちらを見る事もせずに歩きながら問いかけてきた。
「では……後宮には入口はいくつある?」
「一つです」
その一つの入り口からバイタオデンまで、大きな道が一本通っている。その道の左右にそれぞれの上級側妃と下級側妃の居所があるのだ。
「下働きの者たちの寝所兼仕事場はどこだ?」
「入口の辺りです」
ある意味一番泥臭い場所だ。高貴な方の住まう場所から一番遠い場所にある。バイタオデンと仕事場の往復は大変だろうな。
「儀式や式典はどこで催される?」
「えぇっと」
どこだったか。聞いたはずなのに記憶にない。そんな風に言葉に詰まると、すぐさまカイレンが口を開く。
「我々は広場と呼んでいるが、中央に通っている道だ」
「……ありがとうございます」
カイレンの背中に軽く頭を下げて、礼を口にする。見られていなくても、下の者の務めだ。
それにしても意地の悪い問い方だ。私が口にしていた上級側妃の居所については問わず、別の部分を問うてきた。まぁ、復習していた部分はもう必要ないと考えたなら、確かにその通りなのだが。
憎々しく背中を見つめていると、カイレンは立ち止まりこちらに顔を向けた。私は急いで小さく頭を下げる。睨んでいたのがバレていなければいいが。
「まぁいいだろう……やはり賢いな」
「いえ、その様な事は」
賢いという言葉はなんだかむず痒くなる。今まで褒められたことなど一度もない。むしろ逆に生意気だと不評を買っていた。適度にバカな所を演じていたのに。
「どうした?」
「いえ」
さすがここまで昇ってきているだけあって、カイレンは鋭い。私が少しむず痒そうにしただけで、気付いたらしい。
「まぁいい……よくやったな、褒美に撫でてやろう、尻尾を」
おや。私はそう思い顔をあげると、手を伸ばしかけているカイレンと目が合う。褒美になっておりませんが。それに先ほど撫でられたいと思わないと申し上げましたが。
さすがに許可を得ずに、いきなり撫でたりしない様だ。カイレンは返事を待っている。
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