モフモフしたいだけなら撫でさせません! え?私に触りたい?!ここここ今回だけ特別に撫でさせてあげなくもないですがー後宮もふもふ事件手帖

高岩唯丑

文字の大きさ
上 下
8 / 90
後宮案内と宦官の思い

03

しおりを挟む
 カイレンのその行動にチュウは疑問を浮かべる。なんなんだろう、本当に。移動している私達についてきている。仕事の為に入った部屋にカイレンも一緒に入ってきた。そこでチュウから指導を受けていると、その間ずっと視線を感じていた。
 私はもしかして、試されているのだろうか。いや試すにしては何もしてこない。見ているだけだ。あと可能性があるとすれば、メイユーの命を狙う刺客ではないか確認しているといったところか。いや、それなら尻尾を出す様にバレないよう監視した方が良いだろう。そんな事さえ分からないカイレンではないと思うが。
「あの、チュウさん」
 たまらなくなってチュウに小さく声をかける。
「……もしかして、カイレン様の事ですか?」
 同じ様に小声で返してくるチュウ。やはり、気になっていたのだろう。
「はい……もしかして新入りにはあの様に張り付くのが常なのでしょうか?」
 そう問いかけておいて、違うだろうなと考えてしまう。張り付くのが通常の事ならチュウのこの反応はおかしい。こんな風に気にしないはずだ。
「あんなの初めてですよ」
 やっぱり、これは特殊な状態らしい。チュウが少し考える様子を見せた後、言葉を続ける。
「……もしかして、何かやらかしましたか?」
「まだ来たばかりですよ、何も思い当たりません」
 ここに来て、ヨウズデンから一歩も出ていない。それどころかあまり部屋から出ていない。やらかしようがない。
 少しだけカイレンの方に視線を送る。気のせいかもしれないと考えたが、そんなことは無かった。確実に私を見ている。しかも、私の視線に気付くと、眉を少し動かしてからゆっくりと顔を背けた。
「どちらかというと」
 今の反応を見ていたチュウが、顔を近づけて来て言葉を続ける。
「シャオグーを気にしているという感じでしょうか」
 そんな事を言いながら、少し安心したように小さくため息をつく。安心できる要素が何もなかった気がするが。もしかして自分には被害が無い、と安心したという事か。裏切者め。
「あぁ……あれだ」
 突然声がして、顔を向ける。カイレンは先ほどと変わらず顔を背けたまま声をあげていた。今の密談を咎められるのだろうか。一応、体をそちらに向けて、視線を下げる。チュウも少し遅れて動いた音が聞こえた。恐らく同じ様にしたのだろう。
「いや、違うのだ、その様な態度は必要ない」
 私達の姿を見ての事だろう。少し慌てた様子でカイレンが言った。咎められるわけではなかった。とりあえず姿勢を元に戻す。
「では、どのような」
 さすがにチュウも、困惑しているらしい声だ。その態度から見るに、カイレンがこれまでこんな態度を取った事がないのは明白だった。何かあったのだろうか。言い難い何かが。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界で王城生活~陛下の隣で~

恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。  グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます! ※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。 ※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。

かりそめ家族の妖精婚 〜 寂しがり姫を偽母として甘やかしていたらカタブツ学者に愛されました

山田あとり
恋愛
私に祖父がいる? しかも侯国の領主? 祖父である侯爵が治めるその国は――なんと、妖精たちの暮らす土地! 小さな町で時計職人の父と二人暮らしのマルーシャ。 工房を訪ねてきたのは、幼女ミュシカとその伯父で生真面目な学者のダニール。 祖父侯爵の命を受け、マルーシャを探しに来たのだそう。 実はマルーシャには妖精の血が流れているのだ。 〈春〉に愛されたマルーシャが受け継ぐ役割と、 妖精の〈おまじない〉。そして無邪気なミュシカに秘められた力。 亡き母のふるさとへ旅立つマルーシャを待つものは――。

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

メリザンドの幸福

下菊みこと
恋愛
ドアマット系ヒロインが避難先で甘やかされるだけ。 メリザンドはとある公爵家に嫁入りする。そのメリザンドのあまりの様子に、悪女だとの噂を聞いて警戒していた使用人たちは大慌てでパン粥を作って食べさせる。なんか聞いてたのと違うと思っていたら、当主でありメリザンドの旦那である公爵から事の次第を聞いてちゃんと保護しないとと庇護欲剥き出しになる使用人たち。 メリザンドは公爵家で幸せになれるのか? 小説家になろう様でも投稿しています。 蛇足かもしれませんが追加シナリオ投稿しました。よろしければお付き合いください。

【完結】小公爵様の裏の顔をわたしだけが知っている

おのまとぺ
恋愛
公爵令息ルシアン・ド・ラ・パウルはいつだって王国の令嬢たちの噂の的。見目麗しさもさることながら、その立ち居振る舞いの上品さ、物腰の穏やかさに女たちは熱い眼差しを向ける。 しかし、彼の裏の顔を知る者は居ない。 男爵家の次女マリベルを除いて。 ◇素直になれない男女のすったもんだ ◇腐った令嬢が登場したりします ◇50話完結予定 2025.2.14 タイトルを変更しました。(完結済みなのにすみません、ずっとモヤモヤしていたので……!)

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

【完結】夫は私に精霊の泉に身を投げろと言った

冬馬亮
恋愛
クロイセフ王国の王ジョーセフは、妻である正妃アリアドネに「精霊の泉に身を投げろ」と言った。 「そこまで頑なに無実を主張するのなら、精霊王の裁きに身を委ね、己の無実を証明してみせよ」と。 ※精霊の泉での罪の判定方法は、魔女狩りで行われていた水審『水に沈めて生きていたら魔女として処刑、死んだら普通の人間とみなす』という逸話をモチーフにしています。

忘れられた幼な妻は泣くことを止めました

帆々
恋愛
アリスは十五歳。王国で高家と呼ばれるう高貴な家の姫だった。しかし、家は貧しく日々の暮らしにも困窮していた。 そんな時、アリスの父に非常に有利な融資をする人物が現れた。その代理人のフーは巧みに父を騙して、莫大な借金を負わせてしまう。 もちろん返済する目処もない。 「アリス姫と我が主人との婚姻で借財を帳消しにしましょう」 フーの言葉に父は頷いた。アリスもそれを責められなかった。家を守るのは父の責務だと信じたから。 嫁いだドリトルン家は悪徳金貸しとして有名で、アリスは邸の厳しいルールに従うことになる。フーは彼女を監視し自由を許さない。そんな中、夫の愛人が邸に迎え入れることを知る。彼女は庭の隅の離れ住まいを強いられているのに。アリスは嘆き悲しむが、フーに強く諌められてうなだれて受け入れた。 「ご実家への援助はご心配なく。ここでの悪くないお暮らしも保証しましょう」 そういう経緯を仲良しのはとこに打ち明けた。晩餐に招かれ、久しぶりに心の落ち着く時間を過ごした。その席にははとこ夫妻の友人のロエルもいて、彼女に彼の掘った珍しい鉱石を見せてくれた。しかし迎えに現れたフーが、和やかな夜をぶち壊してしまう。彼女を庇うはとこを咎め、フーの無礼を責めたロエルにまで痛烈な侮蔑を吐き捨てた。 厳しい婚家のルールに縛られ、アリスは外出もままならない。 それから五年の月日が流れ、ひょんなことからロエルに再会することになった。金髪の端正な紳士の彼は、彼女に問いかけた。 「お幸せですか?」 アリスはそれに答えられずにそのまま別れた。しかし、その言葉が彼の優しかった印象と共に尾を引いて、彼女の中に残っていく_______。 世間知らずの高貴な姫とやや強引な公爵家の子息のじれじれなラブストーリーです。 古風な恋愛物語をお好きな方にお読みいただけますと幸いです。 ハッピーエンドを心がけております。読後感のいい物語を努めます。 ※小説家になろう様にも投稿させていただいております。

処理中です...