殺されそうになって逃げ出したら、美し過ぎるショタくんと出会いました。これから逃避行しながら溺愛したいと思います。

高岩唯丑

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「実を言うと、一人が心細くて……利用するような事してすみません」
「そう、ですか……正直な人ですね」
 呆れた様な声に、私はアルネの顔を見る。アルネも私の顔に視線を向けていた。逡巡したであろう表情を見せてからアルネは口を開く。
「実は僕も同じです、巻き込む訳にいかないのに、一人はやはり」
 自分でも、よくわからない気持ちなんだろう。傷だらけの体から想像するに、きっと誰かに襲撃されたのだろうと思う。よく見ると、剣で斬られた傷の様な気がする。そんな状態で人間を信用できないのに、心細いから人に頼りたい。私にもよくわかる。
「もしかして、誰かに殺されそうになって逃げてるの?」
 思い切って聞いてみると、アルネは少し笑って返してくる。
「はい、そうです、奇遇ですね」
 奇遇。私の状況も察したのだろうか。私は傷が消えてしまっているから、追い詰められている様には見えないはずなのに。
「奇遇という言葉でいいのかわかりませんが」
「私の状況がなんでわかったの?」
 私の問いかけに、アルネは「簡単な推理です」と微笑んで言葉を続ける。
「あなたを一目見てわかりました、あなたはアンデッドですよね……それがバレて逃げてきた……そんな所ではないですか?」
「アンデッド?」
 アンデッド。蘇った死者。モンスターのはず。私がそんな物のわけ。でも思い当たる部分はある。確かに剣で刺されたのに、傷は消えてピンピンしている。
「もしかして、自覚が無いのですか?」
 驚いた表情を浮かべてアルネがそう口にした後、考える様に顎に手を当てて「いやでもそうか、これだけの状態なら」と呟いた。自己完結しないでほしい。私はたまらなくなって口を開いた。
「知ってる事を教えてください……私は刺されたはずなのに傷が治って、何ともないんです」
「あなたからは、アンデッドの物と同じ力を感じます、おそらくあなたは死んで、アンデッドになった、ここまではそれなりにある事です」
 私は自分の知識を振り絞って、反論の余地を探す。アンデッドは自然発生する物と人間が死んで変化する物がある。どっちにしてもそれらしい姿のはずで、私とは違う。そこまで考えて口を開こうとすると、言葉を続けたアルネの声に遮られる。
「でも、あなたは正気を失っていない、生気もしっかり残っていて人間としての温もりまである、上位のアンデッドでさえ、正気を保っている場合はあるけど、生気つまり人間らしさは無くなってしまう」
「じゃあ、私は人間なんじゃ」
「いえ、それはありません」
 アルネははっきり否定した後、言葉を続ける。
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